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脳内会議は中華料理店にて開催中
夫と二人で散歩していると、古めかしい薬局の看板が目に止まった。具合悪そうなしかめ面の少年の絵が描かれていて、その絵のレトロさが気になったのだ。
「あの看板、見てみて。」
「看板?あぁ、あれね……」
看板を見た夫は、足を止めずスタスタと歩いていく。絵に対する反応もない。
あれ?あんまりピンとこなかったかな?残念。
そう思いつつしばらく歩いていると、夫がおもむろに口を開いた。
「カワツビョウ、ね。」
極めて何気ない感じで、彼がつぶやいた。不自然なくらい、フワっとつぶやいた。なので私は、彼の発言を吟味した上で返答した。
「ヒフビョウ、だよ」
「やっぱり、違ったかー!」
看板には「皮フ病」と書かれていた。彼は漢字とカタカナが入り混じった昔の書き方が読めなかったようだ。
書いてある絵は目に入っていたものの、なんて書いてあるのか分からなくて、正直それどころじゃなかったらしい。
「脳内会議を開いた結果、ここはイチかバチかカワツビョウでいってみよう!って結果になったんだけど、やっぱり駄目だったな」
「脳内会議?」
「そう。脳内に5人位いて、みんなで色々相談して決定するんだよ」
「今回は、どういう会議になったの?」
「満場一致で、カワツビョウ、ってことになった」
「異議が出ないんだ。複数人いる意味、あんまないね」
「みんな、俺だからね。皮はカワって読むしかないだろ、ってことになって全員、異議ナーーーシ!って言っていた」
全員同一人物のそれは、果たして会議と言えるのだろうか?
「円卓を囲んでる感じ?」
「そう。で、グルグル回る部分をみんなでビュンビュン回してる」
「中華料理屋さんのテーブルなんだ」
「かなりのスピードが出てる」
「そんなに回ってたら、料理が乗せられないね」
「店員さんが困ってる」
「店員さんもいるんだ。お客様、餃子が置けません!とかなるね」
「そんなイカれたテーブルに、それでも料理を出そうとするなんて、店員さんの鏡だね」
「でも、中華料理屋さんのテーブルは回らない部分があるから、そこに置けば良いか」
そんな話をしながら、ケラケラ笑って帰宅する。
私達はとても長く一緒にいるけれど、未だにこうしてくだらない話をして笑いながら散歩できている。なので、まだまだ当分は一緒に楽しく生きていけそうだ。