医師の資産形成_入門編

外用薬の役立つ知識集

皮膚科治療の最大の特徴は外用薬です。
軟膏を処方するだけだと思われがちですが、これが意外と難しい。

外用薬を使いこなすためには、教科書には書いていない知識も重要になります。

このnoteでは外用薬についてのブログ記事をまとめました。

これから皮膚科を勉強したい方に読んでいただければと思います。

▼Youtube動画もあります▼


第一章:ステロイド外用薬の強さの順番

ステロイド外用薬は5つのランクに分けられています。
しかし細かい強さの順序については教科書には書いてありません。

そこで文献から外用薬の詳しい順位表を作成して、どれを使えばいいか考えてみました。
(日獨医報38(1) 44-58,1993.)

まず日常診療でよく使うのはベリーストロングクラスです。

ステロイド3

同じクラス内でも最強のトプシムと最弱のパンデルではだいぶ強さが違うでしょう。

真ん中くらいの強さのマイザー、アンテベートあたりを使うのが妥当かと思います。

2つを比べると、アンテベートの方が若干強い分、局所副作用は大きいようです。

ステロイド5

顔に使用するのは主にミディアムクラスになります。

一番弱いのはキンダベート。そのぶん副作用も一番小さいようです。

リドメックスの効果はストロングに近いですが、局所副作用は2番目に小さくかなり優秀。

アルメタ、ロコイドは中途半端な印象です。

▼表の詳細はこちらをご覧ください▼
ステロイド外用薬の詳しいランク一覧表


第二章:保湿剤にはどんな効果があるのか?

皮膚科の治療でとても大事になるのが保湿剤です。
しかし保湿が重要なことは感覚的にはわかりますが、実際にどのような効果があるのかは教科書には書かれていません。

そこでアトピー性皮膚炎の研究をまとめてみました。

まず、単独では炎症症状の改善効果はないとされています。
保湿剤の効果が証明されているのは2点です。

2-1. 皮膚症状の再燃抑制効果

個人的に一番重要だと思うのが再燃抑制効果です。

図1

(日本皮膚科学会雑誌 117(7): 1139, 2007)

皮膚症状が落ち着いてからも予防的に保湿剤を続けた方が、再燃率が低くなるようです。

2-2. ステロイド使用量の減量効果

また保湿剤を併用した方が、ステロイドの使用量が少なくてすむというデータがあります。

保湿剤2

(Dermatology 214(1): 61, 2007)

ステロイド単独でなく、保湿剤も併用した方が副作用を減らすことができるでしょう。


この名脇役である保湿剤をいかに使うかが皮膚科医の力の見せ所だと思います。

▼さらに詳しく知りたい方はこちら▼
保湿剤の有効性とエビデンス


第三章:褥瘡・潰瘍治療薬の使い方

褥瘡、潰瘍治療に用いられる外用薬は、種類が多すぎてわかりにくいと思います。

理解のコツは外用薬を3種類に分けることです。

・水分を増やす(乳剤性基剤)
・水分を減らす(水溶性基剤)
・水分を保つ(油脂性基剤)


このように分類するとだいぶクリアカットになると思います。

じょくそう2

極端な言い方をすると、褥瘡・潰瘍治療では薬効成分はおまけで基剤の方が重要です。

創面の水分量を適正に保つことで、潰瘍の治療を促進することができます。
水分量に応じて基剤を使い分ければ間違いはないでしょう。

▼さらに詳しく知りたい方はこちら▼
褥瘡・潰瘍治療の外用薬の使い方


第四章:外用薬の混合の可否

皮膚科医の85%が軟膏を混合して処方しているといいます。

外用薬を混合することは外用アドヒアランスを上げる方法の一つです。

しかし混合にはいくつかの注意点があるので、それらを知っておく必要があります。

4-1. 外用薬を希釈しても副作用は減らない

「副作用がないように薄めたステロイド」という言葉を聞いたことがありますが、これは間違いです。
軟膏の中の薬効成分は飽和状態なので、希釈しても濃度は変わりません。
ワセリンで希釈しても副作用は減らないため注意が必要です。

4-2. クリームは混合しないほうがよい

クリームの混合時には、乳化破壊による効果減弱や空気の混入、水の分離による細菌汚染などの問題が出てくると言われています。
そのためクリームは混合しないほうがよくて、基本的に混合は「軟膏×軟膏」に限られます。

クリーム2

しかしクリームのなかには、一部W/O型という軟膏に近い性質をもつものがあり、そちらであれば混合が可能です。

クリーム3

▼さらに詳しく知りたい方はこちら▼
「外用薬混合の可否」を皮膚科医が解説する


第五章:ジェネリック外用薬の注意点

医療費抑制のため、厚労省は後発医薬品の使用を促進しています。
外用薬もその対象です。

しかしジェネリックの外用薬にはいくつかの問題点があることも指摘されています。

外用薬は主剤、基剤、添加物の3つからで成り立っています。

外用薬=主剤+基剤+添加物

ジェネリックも主剤は一緒ですが、基剤や添加物は異なっていてもよいようです。
その違いが問題になるかもしれません。

5-1. 効果が低いかもしれない

ステロイド外用薬のジェネリックも主剤の含有量は同じですが、主剤の溶解している濃度が低いという報告があります。

図3

(日本皮膚科学会雑誌 121(11) : 2257, 2011)

この差はジェネリックの基剤が先発品と微妙に異なっているからだそうです。
そのため皮膚透過性が低く、効果が低い可能性があります。

5-2. かぶれるかもしれない

ジェネリック外用薬の中には添加物が先発品と異なっているものがあります。
特に先発品には含有されていないクロタミトンが添加されているものに注意が必要です。

クロタミトンが含まれたジェネリック外用薬
・マイアロン(デルモベート)
・アンフラベート(アンテベート)
・シマロン(トプシム)
・キンダロン(キンダベート)

クロタミトンは接触皮膚炎を起こす可能性があることが知られています。

▼さらに詳しく知りたい方はこちら▼
ジェネリック外用薬の3つの注意点


第六章:まとめ

これらは一般の教科書には書かれていませんが、現場では重要になる知識です。

ブログではもう少し詳しく解説していますので、興味のある方はご覧ください。

▼ブログ記事はこちら▼
皮膚科医が教える外用療法のコツと落とし穴

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