第856回 トビ(6回目)と鳶職
①http://bn.shinko-web.jp/recall/000689.htmlより引用の鳶職のイラスト
野鳥のトビといえば、猛禽類としては一番身近な存在です。私の住む街ではちょこちょこ、山沿いで、皆さんもご存知のように、天気の良い日には「鳶がくるりと輪を描いた」とほとんど羽ばたかずに尾羽で巧みに舵をとり、上昇気流に乗って輪を描きながら上空へ舞い上がる様や、「ピーヒョロロ」という鳴き声はよく知られています。遠くからでもその姿を伺えるので、はっきりと見えなくても、その行動からトビだとわかるはずです。これほど有名かつ身近な野鳥もいません。
②トビのつがい(左側がオス体長約59㌢、右側がメス体長約69㌢)
トビは親しみを感じる呼び方に『トンビ』という俗称があります。漢字表記は「鳶」が一般的で「鵄」という漢字もあります。トビの名前の由来は「能(よ)く空高く飛べばなとなす」という意味の「とおくひいる」が略され転化し「飛び」となったといいます。奈良時代からトビと呼ばれています。トビは猛禽類なのに他の鷹類に比べ、残飯や死骸をあさるなど狩猟に頼らない面があり、それが原因となって、河川沿いや、カラスのいるところでは、同じ食性でぶつかり合います。
③https://kotobank.jp/word/座る-544228
そんな庶民生活に接してきた野鳥のトビだからこそ、色んなトビと名のつく単語があります。そのひとつが③の写真のイラストの座り方での『鳶足』です。正座の形から折った両足を開いてその間に尻を落とすすわり方で、女性が正座から脚を崩すしての座りかたです。ちょうど座った姿を上から見ましたら、脚がアルファベットのM字型になる脚の折り方です。それが丁度④の写真で、トビが翼を半開きにして飛行している姿とだぶって見えるので、この座り方を鳶足といいます。
④半開きの翼飛行のトビ
トビと鳶職の関連はなにかというと、例えば、鶴の英名が"クレーン"でありますが、建設機械である起重機は「巨大なものや重いものを吊り上げて運ぶ機械」の意味があり、クレーンが鶴の頭と首に形が似ているがゆえに名付けられました。それと同じように、鳶職の呼称は、鳥のトビが優雅に飛ぶように動き回るところからではありません。鳶職の人たちの仕事は今なら背の高いビルの建設現場で、普通の人が目もくらむような高さにおいて、難なく立ち回り仕事をする人の事です。
⑤-1.http://chainsawhonpo.blog.fc2.com/blog-entry-1002.htmlより引用の鳶職の道具の片手トビ
⑤-2.https://www.amazon.co.jp/株-コジマ-材木-鳶-36mm-樫柄付-1350mm-鳶口/dp/B073GQGV5Kより引用の鳶職の道具の鳶口
昔からの鳶職は、彼らが持っている「鳶口」という道具の名前に由来します。 鳶口とは、トビのクチバシに似た鉄製の鋭い鉤を先端に付けた柄や長い棒状の柄で、⑤-1.の写真の道具のように木を引き寄せたり、また⑤-2.の写真の道具は消火作業に用いる道具です。また鳶職の仕事だけでなく、街の氷屋さんの氷柱を運ぶための鳶口であったり、いろんな職場で使われています。トビの姿や動作は色んな人が見ることができたからです。