第730回 野鳥の古名
①https://www.istockphoto.com/jp/ベクター/松の木の枝に-2-羽の鳥伝統的な東洋のインク絵画スミ-eu-罪行く華象形文字-禅自由自然幸福-gm1025526380-275094642より引用の絵画
昔のいろんな文献に野鳥の古名が載っています。その名前の中には、この古名の野鳥はどんな鳥なのかすらわからないものもあります。 ⑴かほどり(貌鳥、容鳥、可保等利)→『春鳴く鳥。野でも山でも水辺でも鳴く。繰り返し鳴く。「かほ」と鳴く鳥(カッコウ、カラス、アオバト、フクロウ)または姿の美しい鳥(オシドリ、カワセミ、キジのオス。カッコウ説、カワセミ説、キジのオス説、フクロウ説、オシドリ説、ミミズク説、ヨタカ説、カラス説、ヒバリ説。春の季語として、かほ鳥の間無くしば鳴く春の野の草根の繁き恋もするかも(万葉集) ⑵しながどり(志長鳥、四長鳥、水長鳥)→息の長い鳥(『し』は息の古語)またはカイツブリかケリ ⑶すがとり(菅鳥)→ハト、ヨシキリ、オシドリ、ツツドリ、ハシビロガモ、キセキレイなどの説
アカショウビン説。清鳥すなわち美しい鳥の意でオシドリ、または管鳥でツツドリ
⑷まとり(真鳥)→ワシ、ウ、キジ、ニワトリ、カモ、フクロウ、ミミズクツル
②マガモのつがい(体長約59㌢、手前側がオス、奥側がメス)
1.あをくび(青頸、緑頭)→マガモ。万葉集では鴨は全て『かも』室町時代に『あおくび』と、他の鴨と区別するようになり、江戸時代に『まかも』
2.あぢ(味)→トモエガモ。奈良時代は『あぢ』で、その群れは『あぢむら』江戸時代はあぢがも、ともえがも。大正時代はトモエガモ、コアジサシ
『・ ・ ・辺に漕ぎ見れば 渚には あぢ群れ騒ぎ・ ・ ・』『あぢ』の歌は九首ありますが、『あぢ群れ』と群の付いているのが七首あり、何時も群れで生活する鳥。辺つちにはと詠まれているのが三首、他に入り江が二首で渚を生活場所とする鳥であるとされています。 3.あとあし→カンムリカイツブリ 4.あめ→アマツバメ 奈良時代はあめ、平安時代からあまつばめ。 5.いかるが(斑鳩)→イカル 奈良時代から。 6.いもせどり(妹背鳥)→ホトトギス 妹背とは相思相愛の男女のこと。時鳥(ホトトギス)が相手を恋慕って鳴くとされていたことからの異名。 7.いろどり(色鳥)→ジョウビタキ、「レンジャク」アトリ、マヒワ、ベニヒワ、ツグミのことで、色々の鳥や色美しい鳥。特に秋に渡ってくる小鳥
③ホトトギス(体長約28㌢)
8.うきねどり(浮寝鳥)→水に浮かんで寝る水鳥=カモの部類。古歌では『浮寝』に『憂き寝』をかけ、涙に濡れて寝る身のたとえに使われることもあります。冬の季語
9.うづら(鶉)→ウズラ 語源は『う(草叢)、つら(連)』で、草むらの中に連なっている鳥。
10.うなゐこどり(童子鳥)→ホトトギス 夏の季語 11.犬鶯(イヌウソ)→オオヨシキリ 12. おずめどり(護田鳥)→ミゾゴイ おずめ(勝気な女) 水辺にいて、人を見ても去らないので勝気な鳥。田を護る鳥となりました。 13.バン→常に澤にすみ人を見るとすなはち鳴く
14.おほとり→コウノトリ「ツル」「ハクチョウ」ペリカン「ウ」
15.かしどり(樫鳥)→カケス 樫の実を好む
16.かまめ(加万目)→カモメ 17.唐鳥(からとり)→日本へ輸入された鳥
18.かやぐき(茅潜)→カヤクグリ 平安時代=かやぐき 室町時代=かやくぐり 江戸時代=おほさざい
19.かり(雁)→ガン カリカリと鳴く。カリは貴族が使用し、ガンは一般人が使用。
20.きぎし(雉)→キジ 奈良時代から「きぎし」「きぎす」平安時代以降「きぎし」が多く用いられ、
鳴き声「きぎ」+鳥を示す接尾語「し」「す」
④https://www.city.shunan.lg.jp/site/zoo/21159.htmlより引用のウズラ(体長約20㌢)
21.くぐい(鵠)→「ハクチョウ」鳴き声から
22.くろとり(牛留鳥)→海浜に住む黒色の水鳥(クロガモ) 、アマサギ、牛の背に止まる鳥、オシドリ、イソヒヨドリ、バン
23.くたかけ=くだかけ(鶏)→「ニワトリ」
24.こばなどり(小花鳥)→ウズラ=秋の季語
25.しじゅうからめ(四十雀)→シジュウカラ 平安時代には「しじゅうからめ」、室町時代から「しじうから」
26.しとと(鵐)→ホオジロ類 古くは主にホオジロ、後にアオジ。巫女が鳥の動きから占ったので『鵐』。奈良時代=しとと 平安時代=みことり 室町時代=あおじとと→アオジ、ほほじろ→ホオジロ
江戸時代=あおじとと→アオジ、くろじとと→クロジ
27.しなひ(即)→鳥のこと ツグミ類の異名=室町時代より
28.しまつとり(島つ鳥)→平安時代は『う』江戸時代にウミウは『しまつ』、カワウは『かはつ』大きなものを『しまつどり』小さなものを『ウ』
29.しらとり(白鳥)→「シラサギ」「ハクチョウ」
30.すずとり→水辺に居る鳥 オシドリ、イエバト(ドバト)、ヨシキリ
31.すどり(渚鳥)→浜に居る鳥(はますどり)
32.そにとり(鴗、翠鳥)→カワセミ類、奈良時代 そにとり、そび 鎌倉時代 そび、しょび 室町時代 しょうび 江戸時代 しょうびん、かわせみ(カワセミ) 夏の季語
⑤コルリ(体長約14㌢)
33.たかべ(沈鳧、高部、多加閉)→コガモ コガモの斑が鷹に似ていることからの命名。
34.たづ(田鶴)→「ツル」(含むコウノトリ、「ハクチョウ」) 鶴の歌語=奈良時代から鶴は『つる』、『たづ』万葉集では全て『たづ』と詠まれていた。俳句では全て『つる』。
35.ちはひるり(地這瑠璃)→コルリ オオルリが梢でさえずるのに対して、コルリは地面近くでさえずるから。
36.つき(桃花鳥)→トキ 桃花の色がトキの羽色に似る。
37.つく(木莬)→「ミミズク」 『つく』に特徴的な『耳』が加えられ、『みみずく』となった。
兎のような耳を持つ、木に棲むもの。
38.つちくればと(土塊鳩)→キジバト 室町時代と江戸時代はきじばと
39.つふり(都布利)→チュウヒ
40.てらつつき(寺突き)→「キツツキ」物部守屋の霊が鳥になって四天王寺を襲い、柱などを突いて損壊させた。
41.とどめとり(禁鳥)→ウグイス 鶯宿梅の故事に基づいている。
42.にほ(鳰)→カイツブリ 奈良時代から ニフ(入)鳥、すなわち水に入る鳥。
43.ぬえどり(鵺鳥)→トラツグミ
⑥キクイタダキ(体長約10㌢)
44.はこどり(杲鳥)→かほどり 箱鳥や明けはなれ行く二子山(曾良) 春の季語
45.はなどり(花鳥)→花に来るさまざまな鳥 カワラヒワ、ウソ、ヒバリ、ウグイス、ホオジロ 春の季語
46.ははちょう(叭叭鳥)→ハッカチョウ
47.まつむしり(松毟鳥)→キクイタダキ 平安時代 春の季語(菊戴は晩秋)
48.まとり(真鳥)→鷲などの立派な鳥。
49.みかも(水鴨)→水に居る鴨
50.みづこひどり(水乞鳥、水恋鳥)→アカショウビン 平安時代から 江戸時代には『雨乞鳥(あまごひどり)』とも
51.みとさぎ(青鷺、蒼鷺、美止佐木)→アオサギ 水門のサギ
52.やさかどり→息の長い鳥 カイツブリの別称。
53.やまほととぎす(山時鳥)→ホトトギスは冬の間は山に篭っていると思われていた。
54.よがらす(夜烏)→「カラス」ゴイサギ
55.よしすずめ(葭雀)→オオヨシキリ 室町時代から
江戸時代 よしきり
56.るりてう(瑠璃鳥)→オオルリ 室町時代から 江戸時代からコルリと区別しオオルリ
※1.ほよ(寄生)→ヤドリギ あしひきの 山の木末(こぬれ)の 寄生(ほよ)取りて 挿頭(かざ)しつらくは 千年寿(ちとせほ)くとそ 《万葉集》
永遠の生命の象徴。
※2.ウソ→オス てりうそ メス あまうそ 春の季語