第2201回 馴染みがあるようでないスズメの仲間
①https://www.birdfan.net/2011/07/08/15376/より引用のつがいのニュウナイスズメ(左がメス、右がオス共に体長約14㌢)
私たちの住む日本には最も身近な鳥として、どなたも物心が付いた時に「チュン、チュン、チュン」と朝から鳴き声が致しますスズメのことをご存知でない方はいらっしゃらないかもしれません。私たちの身近にはこのスズメの他にも、公園や駅のロータリーにほぼ集団でいるドバトや、最近では街中に進出してきたキジバトというのが、私たちにとっての「ハト」で、町内のゴミ回収日に群がってゴミを漁っているのがハシブトガラス、また野山に行った時に畑や田んぼにいるのがハシボソガラスというのが、私たちの「カラス」です。そして一番身近なスズメにも①の写真の見た事がないニュウナイスズメというスズメです。
②-1.http://himajin.moe-nifty.com/blog/2006/03/post_c932.htmlより引用のつがいのスズメ(左がメス、右がオス共に体長約15㌢)
②-2.https://jackviolin1945.blog.fc2.com/blog-entry-1258.html?spより引用のつがいの写真イエスズメ(左がオス、右がメス共に体長約16㌢)
②-1.の写真の日本のスズメといいますか、実はその遠い昔にスズメの祖先はアフリカ大陸から農耕器具の伝達と共にやってきました。全世界に「スズメ」は26種います。その内アフリカ大陸に16種、ヨーロッパに2種、そしてアジア大陸に6種います。また最近ではDNA鑑定が進み、日本のスズメの祖先がアフリカの「スズメ」であることはほぼ間違いないようです。一番全世界で繁殖している「スズメ」はイエスズメです。日本に来る前にいたヨーロッパの地域にイエスズメが進出して、日本に来る途中のスズメをその地から追い出したのです。日本に逃れたスズメは、日本での先住者であるニュウナイスズメを追いやりました。
③https://www.nature-engineer.com/entry/2018/08/14/010903より引用のスズメとニュウナイスズメの違い
とにかく日本には、身近な存在のスズメと、まだみたこともない「スズメ」のニュウナイスズメの二種がいます。いつものスズメは庭先かなんかで、ぴょんぴょん飛び跳ねるホッピングで、私たち人間を見ますと、茂みに隠れんぼします。ではニュウナイスズメとの違いはなんでしょうか。①の写真をご覧頂きますと、ニュウナイスズメの雌雄が写っています。この鳥は一応雌雄同色なのですが、ご覧のようにオスのほうがメスより明るい体色をして、メスは地味な色合いになっています。また、③の写真で、スズメとの違いを比較致しますと、②-2.の写真のようにスズメも雌雄同色なのですが、ニュウナイスズメとは違い、オスはメスより濃い色合いです。両種の決定的な違いはスズメは顔に黒斑というものがあるのに対し、ニュウナイスズメには雌雄共に黒斑はありません。
④https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A5%E5%86%85%E9%9B%80より引用の月岡芳年『新形三十六怪撰』より「藤原実方の執心雀となるの図」
日本の昔からの「スズメ」だと思っていました、今最も身近な鳥のスズメは、実は日本固有の鳥ではありませんでした。長い時間をかけ、アフリカを出て、ヨーロッパからイエスズメに追いやられ、アジアを経由してはるばる日本に辿り着きました。そこには先住者のニュウナイスズメがいました。この鳥は日本には古くから生息していまして、④の日本画は平安時代のもので、その中での「入内雀」は、主人公藤原実方の恨みが、毎朝、京都の内裏の清涼殿へ一羽の雀が入り込み、食事を盛る台盤の飯をついばんであっという間に平らげてしまうといいます。人々はこれを、京に帰りたい一心の実方の怨念が雀と化したか、もしくは実方の霊が雀に憑いたといって、内裏に侵入する雀であることから「入内雀」または「実方雀」と呼びました。またことわざの「勧学院の雀は蒙求を囀る」も、藤原実方が絡む藤原家の大学別曹である勧学院でもこの「入内雀」が絡む出来事とされ、文献の中でもその当時の日本の「スズメ」は今のスズメではなく、ニュウナイスズメでした。
⑤https://yacho-joho.com/niteiru-yacho-chigai-miwakekata/suzume-nyunaisuzume-chigai-miwakekata/より引用のスズメとニュウナイスズメの比較
よく出来たもので「スズメ」の中では一番大きく、生息域も広く、その生息数も多いイエスズメが、その生息域を広げるためにヨーロッパにいた自分より身体小さなスズメを追い出し、そのスズメはアジアを経由して、日本に辿り着き、スズメより身体の小さなニュウナイスズメを追いやりました。もともとスズメの英名は"Eurasian Tree Sparrow“といい、ヨーロッパにいた時はどうやら森林の鳥だったようです。その鳥が日本に辿り着いた時に今のスズメの生息域のように人の住む民家の周りに住むことで、あらゆる天敵から身を守ることを覚え、追い出されたニュウナイスズメは森林へと追いやられ現在に至ります。その環境の変化でも、スズメは地味な色合いで、ニュウナイスズメはスズメより明るい体色となっています。またスズメは稀に国内での渡りをする漂鳥です。