第611回 野鳥の縄張り
①https://www.ac-illust.com/main/search_result.php?word=%E7%B8%84%E5%BC%B5%E3%82%8Aより引用の鳥の縄張りのイラスト
野鳥に於ける「縄張り」は、A型:交尾、採食、繁殖のため、全区域が防衛されるもの。B型:食物の大部分は「縄張り」の外でとるもの。C型:求愛、交尾を行い、巣作りをしないもの。D型:巣だけが防衛されるもの。E型:冬の「縄張り」。F型:休息場所のためのなわばり。これだけをみてもピンとこないですが、要するに自然界に生息するどんな野鳥にとっても、食料の確保や、繁殖相手の確保。また繁殖して営巣し、子育て中でメや産まれたヒナを守るに「縄張り」は重要です。
②モズの「高鳴き」による縄張り宣言(一夫一妻)
野鳥の繁殖期による夫婦関係も、野鳥の生息する環境によって様々な形態をとっていますが、その殆どは②のモズやミツユビカモメ、コハクチョウなどの野鳥が「一夫一妻」です。人間社会でも当たり前です。そのほとんどの野鳥がモズのように「一夫一妻」で繁殖期の食料確保をつがいで行い、子供もつがいで守る。またミツユビカモメは営巣場所中心に「縄張り」をはり、コハクチョウはどんな「縄張り」よりも自分が選んだ繁殖相手のメスを固く守るといいます。
③ウグイスの「ホー、ホケキョ、ケキョ、ケキョ」の縄張り宣言
③の写真は日本「三鳴鳥」のひとつである「一夫多妻」のウグイスです。普段は藪中で隠遁生活をして、いざ春雨の繁殖期になると、藪中から飛び出して、複数のメスとつがい関係を持ち、それぞれの営巣も形を変えるというこだわり。食料確保の為に押すが広い多目的縄張りを防衛し、その中で複数メスが排他的な営巣場所を防衛します。この「一夫多妻」の仲間のキジは、同じ縄張り内に複数のつがい相手を持つハーレム状態。子育てはメスの仕事でも、ハーレムはオスが守ります。
④雌雄逆転のタマシギ(左がメス体長約26㌢、右がオス体長約22㌢)
④のタマシギは一妻多夫で有名です。鳥類の中では珍しく、メスのほうの羽色が目立ちます。オスはくすんだ灰緑色に黄褐色のまだら模様がある地味な羽色をしています。これだけならばまだいいのですが、このタマシギは雌雄逆転の野鳥で、メスはただ卵を産むだけで、抱卵するのはオスの仕事。そして産まれたら、育児までして巣立ちするまで面倒をみます。その間、タマシギのメスはというと、ほかのオスとまた繁殖行動。ここでも自ら縄張りを守りつつ、同じことをいたします。
⑤https://www.naturingnews.jp/?p=19524より引用の多夫多妻のイワヒバリ(体長約18㌢)
⑤のイワヒバリって以前にも一度語りましたが、日本では北海道と本州中部以北に亜種イワヒバリが周年留鳥として生息しています。繁殖地では岩場や残雪、草地などを歩き回る。樹木に止まることはあまりないといいます。多夫多妻のイワヒバリは複数オスが一つの縄張りを防衛し、その中に複数のメスがそれぞれ狭い縄張り防衛するか、縄張り全体を共有して共同営巣します。ヒバリという名がつくのに、天高くさえずることもなしの乱婚。でも子育てはつがいで行います。
⑥http://hiratuka.sblo.jp/s/article/115379621.htmlより引用のオスもメスも乱婚なオジロトウネンのつがい
⑥はオジロトウネンというシギチの仲間です。難しい生態で「順次的一夫多妻かつ順次的一妻多夫」というややこしさです。メスはオスの縄張りで一腹分産卵するとその場所を去り、別のオスとの間で産卵、オスが二羽目のメスを得、そのオスが最初のメスの卵を抱卵している場合には二羽目のメスが抱卵するという複雑さ。また「順次的一夫多妻」や「順次的一妻多夫」「同時的一夫多妻かつ順次的一妻多夫」と野鳥の世界もなんでもありかと思うほど生態は人間以上かもしれません。