第850回 コマドリの嫁ミソサザイ(2回目)
①https://allabout.co.jp/gm/gc/455255/より引用のイラスト
日本でも、ミソサザイもコマドリもさえずりが非常に上手い野鳥です。コマドリなんかは日本三鳴鳥として、ウグイスやオオルリと肩を並べているくらいですから。それがヨーロッパに行くと、さえずることよりも、どの野鳥がヒーローなのか、はたまた野鳥の中で一番強い王様なのかを比べる方が多いみたいです。コマドリと同じように、ミソサザイも日本では和に徹していて、ミソサザイの漢字表記は「鷦鷯」で、和名のサザイは、古くは「小さい鳥」を指す「さざき」が転じました。
②コマドリのお嫁さんとされたミソサザイ(体長約10㌢)
また溝(谷側)の些細(ささい)の鳥が訛ってミソサザイと呼ばれるようになったとする説があります。これもコマドリと同じ雌雄同色です。普通、山間部の渓流域に生息し、実によくさえずりますがなかなかその姿を探しだせません。こういうところは藪中に潜んでいるウグイスと同じだと思います。さえずりは「チョツィツィツィツィツーペチルルル」など、ヒバリやビンズイに似た早口です。日本で一番小さな野鳥のひとつのミソサザイを、野鳥の王様とする説があります。
③https://heppoko.tuna.be/15362507.htmlより引用の野鳥の王様ミソサザイ
ミソサザイを王様とするのは、いくつもの童話や伝承があります。その代表といえるのがグリム童話「ミソサザイと熊」と思います。熊が森で美しい鳥の声を聞きキツネに「鳥の王様、ミソサザイの声」と教えられるが、その宮殿と子供達のみすぼらしさに罵詈雑言を浴びせたことから、四足動物軍と野鳥連合の戦いになり、総大将ミソサザイが勝つという話しです。またアイヌ神話には暴れん坊の熊と対決して、熊の耳の中に入って、方向感覚を狂わせ、熊を大木にぶつけ勝利しました。
④https://ja.m.wikipedia.org/wiki/G7_(魚雷)より引用のミソサザイという名の魚雷
そのほかにスコットランドの民話では、ワシと闘って勝った話とか、兵庫県の民話では、クマタカと競ってイノシシを退治し王様となったとか、日本といわず、世界的にもミソサザイの同じような話が転がっています。また「野鳥の王様」でもあり、小さくても強いと言うことで、ナチスドイツの秘密兵器の魚雷の『G7esツァーンケーニッヒ』なんて読み方も難しい独語で、直訳すれば「垣根の王」と異名をとるミソサザイのことでした。主にUボートと水上艦艇で使用されました。
⑤https://marinescape.jp/wpb/archives/2366/より引用のミソサザイの子育て
この⑤の写真がミソサザイの子育てしている営巣です。見て驚いたのは民家の天井の梁にツバメのような巣を作っています。ミソサザイのオスは繁殖期にさえずり縄張りを確保するとともに、縄張り内に二つの巣を作ります。なぜ二つの巣なのかと言いますと、王様が故になんと一夫多妻の形式をとります。勿論この写真はヒナに餌を運んでいるのはメスです。あの三鳴鳥のひとつのウグイスが一夫多妻で、いろんなかたちの巣を作ることが知られていますが、ミソサザイもそうします。