第2102回 ヒナは親鳥に似るのか
①https://blog.goo.ne.jp/momo1945/e/77494a342ce779c5d4a51913da59a9bcより引用のホトトギスに托卵されたウグイス
生き物には必ず産み親がいて、子供を産み、次の世代へと引き継がれていくわけです。あそこのお父さんは厳格な方だから、その息子さんもまた真面目な方だとか、あの家の女の人たちはお母さんに似て、お料理上手で、片付け上手だなんていう話は街の至る所でされています。また人間社会では、その正反対のことを言われる親子もいます。あんなに酒ばかり飲んで、仕事もしない親なのに、子供は酒は一切飲まなく、真面目一辺倒だとかこの親にしてこの子とか、そんな場合もある訳です。これは人間には感情表現があるからです。
②https://kotobank.jp/word/%E5%88%B7%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%81%BF-85210より引用の刷り込みの原理のイラスト
②のイラストの「刷り込み」とは、コトバンクによりますと『動物が生まれてから早い時期にみられる学習の一形式をいい、インプリンティング、刻印づけともいう。動物行動学(エソロジー)では、「この学習は急速に形成され、しかもたいへん安定的である。また、強化を必要とせず、種のいろいろな特徴が種のパターンとして認識され、その特徴はのちに解発因(リリーサー)にもなる」と定義している。ガンやカモなど離巣性(早熟性)の鳥類は、孵化した直後に初めて出会った動く物体に追従する。このような現象を「刷り込み」と呼ぶ』その条件と致しましては、孵化後数時間~数日。
自分のそばで動く、自分より大きなもので、視覚と聴覚が重要だとされます。鳥と哺乳類(有蹄類)で確認されていて、鳥では早成性の種で多く知られます。晩成性の鳥では育てられた親に似た繁殖相手を選ぶ傾向があり、人の感情と似ています。
③-1.nakatani.hatenablog.com/entry/2017/09/14/225616より引用のカルガモのヒナの追随反応
③-2.https://tabetainjya.com/archives/zakki/post_3213/より引用の群がるスズメ
ヒナには「追随反応」というのがありまして、親として認識しで追随するものです。これが報酬となる給餌や、羽毛の手入れ、抱かれることの温かさにより、強化されます。孵化後すぐ親子で移動出来るような水鳥のカモ目、シギチ、ツル、クイナの仲間や大コロニーで生活するウミネコ、ペンギンなどに多いです。「性的刷り込み」は成鳥になってからも成立する現象で、個体に刷り込みされるわけではなく、その種に固有の特徴を認識させることです。性的二型が顕著な種では、雌雄いずれかのみの刷り込み対象となることもあります。またカモなど雌だけが子育てする鳥では雌のヒナは影響を受けないといいます。この刷り込みは親を覚えるだけでなく、自分が属する種も覚えます。人が育てると人に求愛します。それは産卵数の少ない種で、ツルなどに多いです。兄弟を見て種を覚えようとします。人に求愛する心配はありません。しかし、オスが一羽だけだと求愛する相手がいませんのでなってしまうようです。それは産卵数の多い種のガンカモ類等が当たります。
④https://www.shigyou.co.jp/p-blog/2015/07/post-100.htmlより引用の低木が好きなヒヨドリの巣
刷り込みで、さえずりは鳴禽類では生後初期の敏感期にさえずりを記憶します。また、飼鳥の止まり木はケージ内で異なる樹種の止まり木で育てますと、広いケージで繁殖しましても、各々が育った止まり木と同じ種類の木の枝で営巣いたします。④の写真はヒヨドリが好む低木での巣ですが巣材にしても、アカマツの巣材の巣で育った個体は、アカマツを好んで巣材とします。なんらかの理由で、親鳥とは違うガンの仲間に育てられたガンのヒナは、同種のヒナが多いと兄弟関係によって、種を正しく認識するようになり、正常に繁殖するようになります。托卵鳥のヒナは、刷り込みによって仮親を認識いたします。違う親なのに、堂々と給餌を要求します。不思議なもので、いったん刷り込まれると、他の刺激は刷り込まれにくくなるということがあり、非可逆性と言います。
⑤https://suzumeshiki.blog.fc2.com/blog-entry-2569.htmlより引用のスズメの親子(右が親鳥、左が幼鳥)
⑤の写真はスズメの親子です。性的刷り込みが完璧ですと、オスは顔見知りのメスとつがいになってしまうようです。オスにとって顔見知りのメスは兄弟か自分の母親ですが、それでは近親婚となってしまいます。近親婚が良くないのは、これまで獲得した劣性遺伝子がジェンダーになって発現し、生存力の低下をもたらす場合が多いからです。実験で、同じグループ内で育った顔なじみのメスと、そうでない見慣れないメスのどちらを選ぶか比べまはさたら、オスは見慣れないメスに近づき交尾したようです。マガモの実験では、ヒナが一羽だけの場合は100%母親の体色をしたメスを選びます。ヒナが二羽以上では兄弟の体色をしたメスを選びます。マガモのメスは、それまで同種のオスを見たことが無くても、正確に野生種のオスとつがいます。観察で刷り込みが成立するのは
カモ類では親鳥の出す音と動く影のようで、ガン類では動く影だけという結果があります。実親に育ててもらわない托卵鳥は、普通の鳥は親と同じ形状をした種が性行動の対象になりますが、托卵性の鳥はこれがなく、ある時期に仮親から実親の托卵鳥に戻るパスワードを持っている様です。刷り込みを調査したオーストリアのコンラート・ローレンツ博士は1973年、ハイイロガンから刷り込みの現象を発見してノーベル賞を受賞しました。
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