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第1340回 ハチクマって
①https://ikimono-matome.com/hachikuma/より引用の蜂が主食のハチクマ(体長約57〜61㌢)
この世の中には色んな生活を送っている鳥がいます。一番身近だと言われるスズメは人間の住んでいる生活圏にしか生息しません。また春になると生まれ故郷の日本に帰ってくる夏鳥のツバメは人の住む民家にしか営巣しません。遠い昔に飼鳥だったその名前をカワラバトと言い、その後に放たれた現在のドバトは、自分から採餌出来ないで、未だ人の集まる駅のロータリーや公園で人の恵みを受けています。昔には街中にいなかったハシブトガラスは人の出すゴミを漁る生活様式です。
②飛行するハチクマ(体長約57〜61㌢)
こんな身近にいる野鳥の生活様式を見ても、もっと自然界の中にいる野鳥にすれば、自分たちとはまた違う仲間だと思っていることだと思います。野鳥の殆どが雑食です。例えばスズメは春夏には虫を食べ、秋冬には種子などを食します。稀にアオバトは果実食で、ミネラルや塩分を補うために夏には磯辺に集団で出かけ、海水を摂取します。狩をする肉食の猛禽類でも、トビは殆ど狩をせずにカラスと同じ食性。ミサゴは魚を主食にします。また①,②の写真のハチクマは蜂を主食です。
③ハチクマによく似たクマタカ(体長約72〜80㌢)
ハチクマと言う昆虫の『蜂』と哺乳類の『熊』を合わせたその名前の由来は、ハチクマの漢字表記も「蜂熊」もしくは「蜂鷹」。蜂を食べる野鳥で、またクマタカ(熊鷹)に似た野鳥と言うことになります。名前がその姿と食性を表しています。もちろん蜂ばかりを食べるのではなく、蜂類の少なくなる秋から冬にかけては昆虫類や小鳥、カエル、ヘビ等の動物も捕食します。猛禽類では例外的に、集団で捕食行動をとることがあり、また餌を巡り争うことが殆どない、珍しい習慣です。
④-1.夏の猛禽類のサシバ(体長約47〜51㌢)
④-2.ハトより小さな猛禽類のツミ(体長約27〜30㌢)
④-3.冬の渡鳥チュウヒ(体長約48〜58㌢)
④-4.こんな大きなオオワシ(体長約89〜102㌢)も冬鳥
ハチクマなどの猛禽類にはトビやノスリ、ミサゴ、クマタカ、ハヤブサ、カンムリワシ、イヌワシなどは留鳥ですが、④-1.サシバ、④-2.ツミ、ハイタカ、オオタカ(一部には留鳥)などが夏の渡鳥です。対して④-3.チュウヒ、④-4.オオワシ、オジロワシ、チョウゲンボウなどは冬の渡鳥です。ハチクマは主食とする蜂がいる季節でないと生息することができないので、日本には春から秋にかけて生まれ故郷に帰ってくる夏鳥と言うことになります。サシバと並ぶ秋の渡りの季節の風物詩です。
⑤Twitterより引用の蜂の巣ごと食べるハチクマ
その夏鳥であるハチクマは秋にはサシバと揃って東南アジアに越冬しますが、向かう先は同じでも航路は違うようです。蜂を主食といってもその種類はスズメバチ類やアシナガバチ類といった社会性の狩り蜂の巣に詰まった幼虫や蛹を主な獲物とし、育雛に際しても⑤の写真のようにばらばらの巣盤を巣に運んで雛に与えます。樹上の巣ばかりでなく、クロスズメバチやオオスズメバチなどの地中に営巣するハチであっても、巣の真上から足で掘り起こし捕食できるのは蜂の動きからです。