第718回 スズメの社会学(14回目)
①いつも身近にいるスズメ(体長約15㌢)
スズメは私が大阪市内に産まれた頃には、もう既に身近な野鳥として、スズメは生活する場に必ずいました。ハトはキジバトはいなくて、ドバトが駅やお寺で糞を撒き散らし、ハシボソガラスがたまに鳴くと不吉とされ、春先には近くの神社の森からウグイスがさえずり、ツバメが営巣する家は繁盛し、火事にはならない。ヒヨドリもイソヒヨドリ 、ムクドリ、セグロセキレイ、ハクセキレイも街中では見かけないそんな時代から、今も身近にいるスズメはいたのです。
②http://wall.kabegami.com/word/ハタオドリ?page=4より引用のハタオドリ(体長約14㌢)
十年ほど前にNHKの生き物特集の番組で、スズメはハタオドリの仲間ですと解説していましたが、その十数年前にはスズメはキンパラという体長約11㌢の野鳥の仲間とされており、その前はアトリの仲間でした。現在ではスズメとして独立した仲間を形成しています。またスズメの漢字表記は「雀」のひとつしかなく、その昔は尾の長いものを『鳥』、尾の短いものを『隹』と書き分け、
「雀」は小さくて尾が短い鳥とされました。またスズメは日本固種ではなく、外来種でした。
③日本にいるもう一種のスズメのニュウナイスズメ(体長約14㌢)
スズメはどうやらアフリカ大陸から来たようです。農耕器具が輸入されたときに外来種として日本にやってきました。それじゃあその頃の日本にはスズメがいなかったのかということになりますが、スズメの仲間はいました。③の写真のニュウナイスズメがそうです。もしかしたら、あの昔話でお馴染みの「舌切り雀」はこのニュウナイスズメだったのかもしれません。そのニュウナイスズメの縄張りに現在のスズメがやってきて、その縄張りを自分たちのものとして、現在に至ります。
④スズメの近種のカシラダカ(体長約15㌢)
スズメの特徴は人が住まない場所にはいません。人家の密度とスズメの個体数に正の相関があるといわれています。人家が二十軒以上ないと巣を作りません。二十つがい集まらないと繁殖できないからです。沖縄本島から390km離れた大東島に人が住むようになってから、スズメも住み着いたといいます。伊豆諸島の青ヶ島は火山島なのに人もスズメもいます。1,200km離れた小笠原には人はいますが、スズメはいない数少ない場所です。その理由は定かではないようです。
⑤スズメのつがい(左側がオス、右側がメス)
スズメは基本的に留鳥なのですが、成鳥の大部分は留鳥で、小さな群れ、建物などをねぐらとしています。一部の成鳥は一定地域に留まらず、都市部と農村部を、繁殖と越冬のために移動する漂鳥でもあります。また大きな群れ、都市の街路樹などをねぐらにしたりもします。親の縄張を追い出された若鳥は群れで放浪し、その中には出生地から300km以上の移動が確認されています。成鳥にも100km以上移動する個体が知られています。