第603回 身体のわりに大きな声でさえずる
①ミソサザイ(体長約10㌢)
ミソサザイといえば、漢字表記で「鷦鷯」と難しい漢字を充てがわれ、日本では留鳥として親しまれています。本州では秋から春先にかけて低山帯や平地に降りて越冬します。僅か体長約10㌢で、よくエナガ(体長約14㌢)、キクイタダキ(体長約10㌢)と比べられて、その比較結果がネットにはいっぱい出回っています。14㌢のエナガは尾羽が約8㌢くらいあるので、実際の身体の大きさはミソサザイやキクイタダキと同じくらいだからです。日本では最小の野鳥ということになります。
②最小を争うキクイタダキ(体長約10㌢)
②はキクイタダキです。ミソサザイと体長が同じ約10㌢とされています。エナガとの三択対決ではキクイタダキが日本最小の野鳥であるとされました。体長も個体によりますが、少しキクイタダキの方が小さく感じます。また体重となれば、ミソサザイが体重約7〜13gに対してキクイタダキは約3〜5gです。こちらは圧倒的にキクイタダキが軽くやはり日本では最小の野鳥となります。この二種は日本だけでなく、遠く離れたヨーロッパでも、野鳥の王様かとも童話にも出てきます。
③ヨーロッパではミソサザイの夫役のコマドリ(体長約14㌢)
身体の小ささを競う話はキクイタダキとですが、この③のコマドリともミソサザイは絡みます。皆さんもご存知のように、コマドリは日本の「三鳴鳥」のひとつで、そのさえずりには定評があり、ウグイス、オオルリとの三種が選ばれました。そのコマドリとミソサザイはさえずりを競い合います。またヨーロッパではミソサザイは、③のコマドリの女房役という役割を担っています。この二種はヨーロッパを始め、世界的に有名でどちらが野鳥の中の王様かも競っているのです。
④https://ganref.jp/m/tooban/portfolios/photo_detail/1394734より引用のミソサザイの巣
ミソサザイの和名のサザイは、古くは「小さい鳥」を指す「さざき」が転じ、また溝(谷側)の些細(ささい)の鳥が訛ってミソサザイと呼ばれるようになったとする説があるそうです。単独か番いで生活し、群れを形成することはないという説もあります。しかし、渓流沿いの岩場に生息しているのは間違いなく、単独かつがいで生活し、群れを形成することはありません。岩の割れ目に住み、コケをくわえて巣作りを行うのはつがいになる前のオスで、必ず二箇所に営巣するのです。
⑤http://birdiephoto.blog.fc2.com/blog-entry-822.html?spより引用の羽を広げたミソサザイ
①の冒頭のタイトルにもあるように、この小さな身体で大きな声でさえずるミソサザイ。縄張り内のふたつの営巣には理由があり、またつがいの相手を飛行しながらさえずり、相手を誘うと言います。そして、もうひとつの巣には別の相手…ミソサザイも多分にもれず「一夫多妻」を取っています。そのため、どんなに遠くにいる相手にも、届けとばかりに、群れないはずです。そういえば、さえずりの帝王ウグイスも「一夫多妻」で、やはり複数に営巣するといいます。やるなあ…