第2097回 汚染の中の鳥達
①https://gooddo.jp/magazine/oceans/marine_pollution/より引用の世界的規模の海洋汚染
この問題は、何も鳥達に限ったことではなく、魚介類やウミガメ、オットセイやトドなどの海獣やイルカやシャチ、クジラやラッコやビーバーに至るまで、海洋や湖畔だけでなく、この地球上の生き物の身体が汚染されているのです。その大半が海洋ごみによる汚染です。海洋ごみは年々増え続けており、このまま何の対策も行わなければ2050年には海洋に住む魚などの生物よりもごみの方が多くなると言われています。海洋ごみの中でも特に深刻なのは海洋プラスチックごみですが、生物や環境に多大な影響を与えるものもあり、そのほとんどは、人の日常の暮らしから発生したものばかりです。何年か前に世界トップクラスのガソリン供給会社のCMに、浦島太郎がまた竜宮城に招かれ、行った先はプラごみばかりの『ぷら島太郎』というパロディはもはやブラックパロディです。
②https://mobile.wbsj.org/activity/spread-and-education/toriino/toriino-kyozon/toriino-report51/より引用の死んだ原型を留めずコアホウドリのヒナ
②の写真は実際にコアホウドリの親鳥が誤って、ひな鳥にプラごみを与え続けて、ヒナが死んでしまい、風化された死骸の証拠映像です。レジ袋やフラスプーン、プラ容器なんかも垣間見ることが出来ます。私たちの暮らしのなかで、レジ袋やペットボトル、そして、加工された数々のプラスチック製品が大量に消費されています。これらのプラスチックのうち、ゴミとして廃棄されたものが河川などから海に入り、海鳥やウミガメ、クジラなど多くの海洋生物に影響を与えています。石油を原料として作られるプラスチックの生産量は、1950年代以降全世界で増え続け、2015年には4億tを超えています。海に流入したプラスチックの量は累積で1億5千万tにもなり、今も年間に800万tが流入し続けており、2050年には海洋中のプラスチック重量が魚の全重量を上回るという予測です。
③https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/090400246/?SS=imgview_smart&FD=-787263934より引用のプラごみを咥えたセグロカモメの幼鳥
海には大量のプラスチックごみが流出しています。海鳥の中には、これを誤って飲み込んでしまうものもいますが、その数は全体の90%、2050年までには100%に達する見込みである事が、最新の研究で明らかになりました。最近の調査では、体内からプラスチックが見つかる種の数も、その個体数も、毎年数%ずつ急速に増加しています。胃の中からプラスチックが見つかった海鳥は、1960年には5%にも満たなかったものが、1980年までには一気に80%へと跳ね上がったといいます。
④-1.https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65500?page=4より引用の海洋で採餌するアホウドリ
④-2.https://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/?tag=%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AA%E3%82%A6%E3%83%A0より引用の海中で採餌するウミオウム
海鳥は全世界で約350種いますが、このうち海面で採餌したり、消化を促進するために小石など固いものを飲み込んだりする種ではプラスチックの誤飲や誤食があり、これまでに少なくとも97種の体内からプラスチックが見つかっています。大きい種だから誤飲が多いとか、小さな種だからとかは関係ありません。④-1.の写真のアホウドリなどの大型の海鳥は、誤飲するプラスチックの量も多いです。また体の大きさに比例して誤飲傾向が高くなるわけではありません。例えば、米国アラスカ州付近の北太平洋に生息する④-2.の写真のウミオウムは小型ですが、海に潜って餌を捕るため、ほかの種より誤飲しやすい傾向があります。アホウドリの場合は、クチバシで海面をさらって魚を捕るので、浮いているプラスチックをうっかり飲み込んでしまう事がよくあります。また、ウミツバメやミズナギドリは、沖合の島に生息して広い海域を餌場とするため、胃に大量のプラスチックをため込んでいるというような状況があります。
⑤-1.https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2020/44897より引用の海流に乗って漂流するマイクロプラスチック
⑤-2.http://hasetora.co.jp/より引用のアジの身体に蓄積していたマイクロプラスチック
プラスチックゴミによる海洋汚染はとても深刻で、えさと間違えて食べることなどにより、誤飲食した魚介類などの海洋生物が死に至るだけでなく、プラスチックに含まれる難燃剤、劣化防止剤などの化学物質や、波や太陽光により砕けて小さくなったマイクロプラスチックの表面に吸着したPCBなどの有害化学物質が、海中のプランクトンや魚介類に蓄積し、食物連鎖を通じて人間の体内にも入り、私たちの食の安全と健康を脅かしています。それを防ぐためには、人的活動により生じる自然への影響を減らし、海鳥を守るために、各人がふだんの暮らしの中で、ペットボトルなどの使い捨てプラスチックの使用量を減らすことや、自然界にプラスチックを流出させないことがまず必要です。また、より効率的なリサイクルに回すことなど、社会から石油由来のプラスチックを減らすためには、政府や産業界に働きかけて、社会システム自体を変えていく必要があります。当会は今後、この海洋プラスチック問題に積極的に関わっていきます。飲食店からのプラスチック製のストローが全廃することも活動のひとつです。