第714回 小説の中の野鳥 ⑵
①https://ja.m.wikipedia.org/wiki/夏目漱石より引用の夏目漱石
夏目漱石 ⑴草枕 「ほーう、ほけきょうと忘れかけた鶯(ウグイス)が、いつ勢を盛り返してか、時ならぬ高音を不意に張った。」「ほーう、ほけきょーう。ほーー。ほけっーほけっきょうーと、つづけ様に囀づる。」「「あれが本当の歌です」と女が余に教へた。」 ⑵門 「其内薄い霜が降りて、裏の芭蕉を見事に摧いた。朝は崖上の家主の庭の方で、鵯(ヒヨドリ)が鋭い声を立てた」 ⑶夢十夜 「左右は青田である。路は細い。鷺(「サギ」)の影が時々闇に差す」
②https://www.meijigakuin.ac.jp/about/voice/shimazaki/より引用の島崎藤村
島崎藤村 ⑴津軽海峡 「暗碧の色の海、群れて飛ぶ『ごめ』」 ※『ごめ』はカゴメ ⑵夜明け前 「宿場でもここは夜鷹(ヨタカ)が啼く。最早往来の旅人も見えない」「鳥居峠の鶫(ツグミ)名高い。鶫ばかりでなく、裏山には駒鳥(コマドリ)、山郭公(カッコウ)の声が聴かれる。仏法僧(ブッポウソウ)も来て鳴く」「あれは嘉永二年にあたる。山里では小鳥のおびただしく捕れた年で、殊に大平村の方では毎日三千羽づつものアトリが驚くほど鳥網にかかると言はれ」
③https://www.kanazawa-museum.jp/kyoka/kyoka/index.htmlより引用の
泉鏡花 ⑴鷭狩 「分かった!そうか。三晩つづけて、俺が鷭(バン)撃に行って怪我をした夢を見たか」 ⑵眉かくしの霊 「雪の池の爰へ来て幾羽の鷺(「サギ」)の、魚を狩る状を、さながら、炬燵で見るお伽話の絵のやうに思ったのである」「紺の筒袖に、尻からすぽんと巻いた前垂で、雪の凌ぎに鳥打帽を被ったのは、苟(いやしくも)料理番が水中の鯉を覗くとは見えない。大な鷭(バン)が沼の鰌を狙って居る形である」
④https://www.shinchosha.co.jp/sp/writer/619/より引用の芥川龍之介
芥川龍之介 羅生門 「その代り又鴉(「カラス」)が何処からか、たくさん集まって来た。・・・鴉は、勿論、門の上にある死人の肉を、啄みに来たのである。」 尾崎紅葉 三人妻 「山鳥(ヤマドリ)のおろの鏡、のっぺりと生まれたるより当事も無き不了簡を起して、女で食ふ気の男古今其跡を絶たず。」 谷崎潤一郎 春琴抄 主人公「春琴」は薬種商の娘、店の屋号は「鵙屋」。「春琴」の面倒を見たのは「鴫沢てる」「春琴」は鶯(ウグイス)や雲雀(ヒバリ)の声を聴くのが好きで、専属の奉公人がいた。
最後に、雲雀を野に放つと、雲雀は戻って来なかった。
⑤http://www.kumamotokokufu-h.ed.jp/kumamoto/bungaku/tokutomi.htmlより引用の徳富蘆花
徳富蘆花 不如帰 海軍少尉川島武男の出征と、結核に侵された愛妻浪子との悲恋物語。ホトトギスの口内が赤いことから主人公、浪子は「鳴いて血を吐くホトトギス」にたとえられている。 国木田独歩 小春 「純白(まっしろ)の裏羽を日にかがやかし鋭く羽風を切って飛ぶは角鷹(ミサゴ)なり」 志賀直哉 焚火 「先刻から、小鳥島で梟(フクロウ)が鳴いてゐた。『五郎助』と云って、暫く間を惜いて『奉公』と鳴く」 ヘッセ デミアン 鳥は卵の中から抜け出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。ハイタカの頭をした猛鳥が地球から抜け出そうと夢を見る。 梶井基次郎 冬の日 「そして或る日、屏風のやうに立ち並んだ樫の木へ鉛色の椋鳥(ムクドリ)が何百羽と知れず下りた頃から、段々霜は鋭くなって来た」