第1983回 鳴けない鳥
①https://www.ac-illust.com/main/search_result.php?word=%E9%9B%89%E3%82%82%E9%B3%B4%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%B0%E6%92%83%E3%81%9F%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%84&utm_source=tagより引用の「キジも鳴かずんば撃たれまいに」のイラスト
「鳴かない鳥」とは正反対に①のタイトルイラストのように「キジも鳴かずんば撃たれまい」ということわざは『キジは鳴くことがなかったら猟師に気づかれて撃たれることもないだろうに』という意味の表現で、転じて、無用なことを言わなければよいのに、無用なことを言ったばかりに災難を被っている、といった意味合いで用いられる言い回しです。実際には営巣でつがいのメスが抱卵中であるとか、郁雛中であったりする時に、猟師が現れたら、オスキジは勇敢にも身を挺して、つがいのメスや我が子を守る為に、敢えて自ら鳴き声を発して猟師の眼を自分に向かせて、犠牲になり、家族を逃して、守り抜いたと思いたいです。
②https://www.pinterest.jp/pin/213076626106009366/より引用のハシビロコウ(体長約120㌢)
「鳴かない鳥」は「動かない鳥」に準ずる事になるようです。外国の野鳥ですが、②の写真のハシビロコウは、よくテレビなどのメディアでお眼にかかります。ハシビロコウの漢字表記は「嘴広鸛」で、クチバシの広いコウノトリということになります。中央アフリカ熱帯部にある淡水の沼に生息し、水辺で水面を凝視し、何時間も写真のように立ち尽くし、獲物のハイギョが現れますと、すごい勢いで、クチバシを広げて、捕食丸飲みします。そんなハシビロコウは鳴けません。「鳴かない」ではなく「鳴けない」のです。鳥類以外の脊椎動物は発声に声帯を用いますが、鳥類は気管の分岐点にある鳴管を用います。鳥類は鳴管による発振音を気管末端の鼓室で共鳴させて発声します。鳥類の発声は「さえずり」と「地鳴き」に分けられます。ハシビロコウは鳴管が退化しており鳴くことは少ないが、クチバシを打ち鳴らしたり(クラッタリング)、飛翔中に鳴いたりすることもあります。クラッタリングはクチバシを叩き合わせるように激しく開閉して音を出す行動で、求愛行動やディスプレイや仲間との合図に用いられる。
③-1.http://stork26kumihama.seesaa.net/article/479162832.htmlよりクラッタリングするコウノトリ(体長約112㌢)
③-2.http://www.biopark.co.jp/animals/birds/whitestork.htmlより引用のシュバシコウ(体長約100〜110㌢)
ここでいいます「鳴けない」とは、上手にさえずれない、綺麗に鳴くことが出来ないの意味です。自然界で「鳴けない」鳥は日本にもいます。日本では前項のハシビロコウの仲間の③-1.の写真のコウノトリがいます。この鳥が赤ちゃんを運んでくると小さい頃に親から聞かされました。実はこの話しはドイツからの伝承で、北ヨーロッパの「これらから生まれる赤子の霊魂を運んでくる」という信仰にあるそうです。またヨーロッパにはコウノトリは生息せずに、③-2.の写真のシュバシコウがヨーロッパのコウノトリです。また明治時代以前は樹上にとまったり営巣したり出来ないタンチョウと混同され、「松上の鶴」など絵画に表され正月の縁起物とされました。この鳥にもにも鳴き声を発する鳴管が無く、クラッタリングします。
④https://nonbiritoritori.jimdofree.com/%E8%AC%8E%E3%81%AE%E9%9F%B3/より引用のアオサギ(体長約93㌢)
ちょっと前項のコウノトリは身近ではないと思いますが、もっと身近にいる「鳴けない」鳥はいます。サギの仲間です。④の写真は特にその中で最大級の大きさを誇るアオサギです。留鳥のサギの仲間で、ダイサギやコサギ、ゴイサギもいますがひときわ目立った存在だと思います。私の住むマンションのすぐ裏には河川があり、夏の時期にその河川に沿って夜間に飛行しています。そして時々「ギャー」と大きく叫び声みたいに鳴き、驚かせられます。そんなアオサギも鳴管を動かす筋肉が発達していないので、鳴き声を出すことができません。それでクラッタリングという、上下のクチバシをカスタネットのように叩き合わせて音を出す方法で、コミュニケーションをとります。
⑤https://www.birdfan.net/2021/06/11/82602/より引用のツグミ(体長約24㌢)
⑤の写真は冬鳥として日本に飛来しますツグミです。同じ仲間のクロツグミは夏鳥ですが、シロハラは冬鳥で、アカハラは漂鳥、トラツグミは留鳥です。色んな分布を持つ仲間同士ですが、このツグミがこの仲間の中では一番身近な存在です。地上採餌が主で人が見ているときは警戒のために立ち止まり、見なくなりますと、動き出す「達磨さんが転んだ」の動きで有名です。そのツグミは和名は冬季に飛来した際に聞こえた鳴き声が夏になると聞こえなくなり、口をつぐんでいると考えられた事に由来するという説があります。これまでの「鳴けない」鳥とは違う「鳴かない」鳥です。