第1866回 カワセミとその仲間
①http://yasou.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-2a7e.htmlより引用の求愛給餌する雌雄のカワセミ(左がメス、右がオス共に成長体長約17㌢)
いつでも①の写真のカワセミを見ましたら、不思議なくらい惹かれるものがあります。カワセミは清流の宝石といわれ、漢字表記は「翡翠」が一般的に有名であてがわれます。他には「川蝉」「魚狗」「水狗」「魚虎」「魚師」などが挙げられます。しかしこの代表的な「翡翠」は①の写真のようにつがいを表す名前でもあるのです。『翡』はオスのカワセミを表し『翠』はメスを表します。また雌雄同色であるのにも関わらず、オスのクチバシは上下が黒いのに対して、メスのクチバシの下の部分は口紅を塗ったように紅い色をしています。また雌雄同色の鳥は一般的に地味な色をしているといわれますが、カワセミを見る限りではそれは当てはまらないことがわかります。雌雄共に神秘的な碧い構造色に身を包んでいるからです。
②http://natureland-nose.com/bird/news_bird/3360/より引用のカワセミ
カワセミの雌雄の違いはクチバシだけではありません。セッカのオスが繁殖期に口の中が真っ黒になるように、カワセミのオスは繁殖期にクチバシの内側が赤くなります。また首の回転角度はフクロウと同じく320度回るようです。脚は短く、趾(あしゆび)の基部が癒合しています。巣穴を掘るときに趾が離れると掘りにくいが、癒合していれば掘りやすいからです。巣穴が大きすぎると天敵に襲われやすくなりますが、短い脚なら体とほぼ同じ大きさの穴を掘れるようです。穴掘りのモグラも全ての指が癒合しています。前述のように趾は三本で、その内の二本が癒着し、全体として二本しか機能していません。カワセミならではです。
③http://blog.livedoor.jp/aoirotoridori/archives/51225980.htmlより引用のオスのカワセミ同士の喧嘩
カワセミの非繁殖期は雌雄バラバラに縄張りをもち、その時期に縄張りに侵入するものは、以前のつがい相手であろうが、親子関係であろうとも容赦なしです。縄張り内の餌のためとはいえ、相手を死に至らせることさえあるといいます。それほど縄張りが大事なのが、いざ繁殖期になりますとオスはメスの縄張りに侵入し、意中のメスに求愛給餌を繰り返し、相手が受け入れましたらつがいの成立です。早速巣作りへと移行していきます。(①のタイトル写真が求愛給餌を受け入れた瞬間)
④-1.http://kawasemi.main.jp/kamisibai/p10.htmlより引用のカワセミの営巣
巣作りは④-1.のような川辺に有る赤土の露出した所をオスが探して、メスが気にいればその場所に決め、雌雄揃って作ります。垂直またはオーバーハングで、入り口の直径は約6~9㌢、奥行き0.5~1㍍。奥に行くほど登り勾配を作ります。その角度傾斜は10~20度。それは産室内に糞が流れ込むのを防ぐためです。産室は一番奥で、 産室が完成するまでは尻から出てきますが、産室が完成すると方向転換ができるので、頭から出てくるようになります。材料はペリットを吐き出し、産座にします。抱卵中やヒナが小さい内は、産室で向きを変えます。④-2.のようにヒナが大きくなるとバックして出て来ます。巣穴は、毎年同じくらいの高さに作られます。これは一番上の表土は固いですが、その下は軟らかく、さらに下には粘土があり、理由は
❶ 土が軟らかく、巣穴を掘る労力と時間が節約できる。
❷ 上に締まった土があるため、雨水がしみこみにくい。
❸ 毛細管引力が弱いので、地下水が上昇しない。
❹ 多孔質なので、温度変化が少なく、卵や雛を保護する。
❺ ヒナが出す液状の糞が吸収されやすい。
④-2.https://f.hatena.ne.jp/banbiyan/20090730053251より引用のカワセミのヒナ
抱卵は約18日。雌雄で暖めますが、昼はオスが長く、夜はメスだけがします。朝5時と夕方6時の交代は正確です。一日6回交代。孵化直後のヒナには8㍉位の小魚を与えます。硬くて消化の悪いザリガニを与えることはないので、繁殖には小魚が不可欠です。餌をもらったヒナは尻を巣の入り口に向けて水様性の糞をします。その後、産室内を反時計回りに移動し、他のヒナの後ろに移動するので全員がほぼ均等に餌をもらえる効率の良さです。
④-3.http://wakakusa3.sakura.ne.jp/HP8209.htmより引用のカワセミの幼鳥への給餌
ヒナは孵化後、23日で巣立ちます。地上に巣を作るヒバリは天敵が多いので、10日で巣立ちします。それに対して、巣穴は安全性が高いので、充分成長してから巣立つことができます。孵化直後3gほどの軽さだったヒナは一時47gにもなり、親34gよりも大きく育ちます。親鳥は一羽平均227匹の魚介類の餌を運びます。またスズメのように、条件が良ければ年二回繁殖いたします。同一巣穴を再利用する場合と、一回目の育雛中に新しい巣穴を掘り始める場合がある様です。二回繁殖した場合、一回目に生まれたヒナがムクドリもそうですが、ヘルパーとなり、餌を運ぶ例があります。
⑤-1.https://www.google.co.jp/amp/s/101sunny-side-up.blog.ss-blog.jp/2016-05-09%3famp=1より引用のカワセミの飛び込みダイブ
⑤-2.https://www.google.co.jp/amp/s/101sunny-side-up.blog.ss-blog.jp/2016-05-09%3famp=1より引用のカワセミの飛び上がりダイブ
⑤-3.http://taka0524.blog111.fc2.com/blog-entry-701.htmlより引用のもといた枝に戻り採餌するカワセミ
わずか体長約17㌢のカワセミですが、正真正銘の小魚をはじめとする魚介類を捕食する肉食です。猛禽類のように鉤状のクチバシがなく、捕らえた獲物は丸呑みにします。消化出来ない骨などは2×1㌢くらいのペリットとして、吐き出します。写真の⑤-1.と-2.はカワセミのダイブシーンをご覧頂いています。-3.はカワセミはとまっていた枝から水中の獲物目掛けてダイブし、飛び上がり写真のようにもといた枝に戻り、獲物を捕食するのです。
⑥-1.https://www.google.co.jp/amp/s/tsuchiya32.exblog.jp/amp/23983816/より引用のカワセミとヤマセミ(体長約38㌢)の写った比較合成写真
⑥-2.http://www.birdfan.net/2007/08/10/1379/より引用のアカショウビン(体長約28㌢)
⑥-3.http://www.birdfan.net/2019/07/19/72268/より引用のブッポウソウ(体長約29㌢)
日本に生息していますカワセミの仲間は、⑥-1.の写真の日本では一番大きなヤマセミと、⑥-2.のアカショウビンの三種です。またカワセミは⑥-3.の「森の宝石」のブッポウソウ目の仲間ということになっています。大きなヤマセミの体重は約280g、骨の重さ40g、羽の重さ 22.5gと、体重の8%を占めます。それに対してカワセミは体重約31gとヤマセミの9分の1もありません。狩りの成功率は、枝からだと74%、ホバリングからだと37%です。また巣の入り口の大きさは縦11~18㌢、横12~22㌢です。ヤマセミの巣作りはやはりカワセミと似ていて、早朝と夕方が多く、約10日間で完成します。始めはオスが中心、産座はメス中心。
抱卵はオスが七割、メス三割、シ夜もオスが主とここは反対です。給餌は始めはオスが主に与え、終盤はメス中心。親鳥は、ヒナが大きくなると、小さな獲物は自分で食べ、大物が獲れると巣に戻り、ヒナに与えます。アカショウビンだけはホバリングはしません。瞼には白い羽毛が生えています。ブッポウソウは趾(あしゆび)が癒合しているので、地上を歩いたり、枝伝いに歩く事はできません。翼は長くオオミズナギドリの様に空中生活に適しています。曲芸的な飛行も可能といいます。
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