
第2280回 神の鳥
①https://www.asahi.com/sp/culture/hinotori/より引用の小説「火の鳥」のイラスト
①のタイトルイラストの「神の鳥」とはまた大層なことを題材にしたものだと思われる方も多いと思いますが、私にとって、手塚治虫の漫画「火の鳥」がその火付けとなりました。古代からはるか未来まで、地球や宇宙を舞台に、生命の本質や人間の業(ごう)が、手塚治虫自身の独特な思想を根底に壮大なスケールで描かれていましす。この物語の題材に色んな世界の伝説的な「神の鳥」が関わっていると思います。西洋のフェニックスや中国の鳳凰など世界各地に神格化された鳥はいます。
②https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/1437より引用の神格化された一例のフクロウ

神話時代の鳥の位置づけは、人間と自然との距離が今よりもずっと近かった古代。人々は、地震や津波、雷、大風などの自然現象にも、太陽や月などの天体の内にも、神や神に類する霊的な存在をはっきりと感じ、その現象や運行に「神の意思」を見ていました。そんな各地の神話には、さまざまなかたちで鳥が登場します。ふだんは②のイラストのように人間の姿をとって暮らす神々の変化した姿としての鳥がいます。助言者、協力者、高位の神から地上に生きる神や人間を導くように命じられた存在としての鳥。怪物としての鳥。多彩な姿が、そこには見えます。常に特定の神の側にいる鳥、また、その神の象徴とされた鳥は、聖なる鳥「聖鳥」と呼ばれました。そうした鳥は、日常の中にいる「あたりまえの存在」であると同時に、その神と強く結びついた「特別な存在」でもあり、帯びた神性から一部は崇拝の対象にもなりました。ローマ神話の女神ジュノーの聖鳥はガンで、ギリシア神話の主神ゼウスの聖鳥は主にイヌワシで、女神アテナの聖鳥は知恵の象徴とされたコキンメフクロウと各地の馴染みの鳥がいます。
③https://jp.123rf.com/より引用のエジプト神トート

③のイラストはエジプト神のトートです。トートは、古代エジプトの知恵を司る神です。信仰の中心地はエジプトの街ヘルモポリスで、神のシンボルはトキ、ヒヒ、パピルス、月の円盤などで、配偶神はセシャトまたはマアトといいます。兄弟は
セシャトです。多くの信仰を集め、長い間、様々な広い地域で信仰されたため、知恵の神、書記の守護者、時の管理人、楽器の開発者、創造神などとされ、王族、民間人問わず信仰されました。そのためある程度の規模を持つ神殿には、トートのための神殿が一緒に作られています。またエジプトの外でも信仰を受け、新バビロニアや古代ローマ帝国でも信仰されました。当時のピラミッドやスフィンクスと言う巨大建造物の設計基礎です。
④https://ameblo.jp/yaoyorozu-ukiyoe/entry-12648236140.htmlより引用の名称は鳥取神の他に、鳥耳神、鳥甘神

④のイラストは『古事記』にのみ登場する国津神(くにつかみ)で、八島牟遅能神(やしまむぢのかみ)の娘であり、大国主神の六番目の妻。名称は鳥取神(ととりのかみ)の他に、鳥耳神(とりみみのかみ)、鳥甘神(とりかいのかみ)などとも表記されます。私が子供の頃にその当時には街中にはいなかった身体の色が真っ黒くて不気味な鳥のカラスが鳴きますと、人が亡くなった知らせだと教わりましたが、それは古代日本において鳥が人間の霊魂を運ぶと考えられ、その鳥を捕まえることは神事であり、名義は「鳥を捕まえること」と考えられたことからきているのだと思います。古代日本において鳥は現世と霊界を繋ぐ役割があるともいわれ、死んだ人間の霊魂を霊界まで案内するという信仰もあり、『古事記』で葬式を描写する際も何種類かの鳥が出てきます。そんな髪も必要です。
⑤https://times.abema.tv/articles/-/8650320より引用の神の鳥である山岳信仰のライチョウ(体長約37㌢)

日本には本州中部地方の高山帯の頸城山塊(火打山・焼山)や飛騨山脈(北アルプス)、御嶽山、乗鞍岳、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)のみに生息いたしますライチョウ。蛙に似た鳴き声を発します。日本の生息地が、ライチョウの南限です。日本国内の、現在の分布北限は新潟県頸城山塊の火打山と焼山、分布南限は南アルプスの赤石山脈のイザルガ岳日本には隔離分布しています。ライチョウの日本での生息数は信州大学の推定によると、1980年代の約3000羽から2000年代には2000羽弱へと減少しているようです。日本のライチョウは江戸時代までは信仰の対象として保護されていましたが、明治時代に一時乱獲されました。ライチョウは人をあまり恐れず、乱獲の時期があり、絶滅の危機もありました。その理由の一つに挙げられるのが、日本人とライチョウの長い付き合いです。長い関わりの中で「人は自分たちを襲わない」と刷り込まれたようです。日本では古くから山岳信仰が盛んで、古代山岳信仰とし、江戸時代よりずっと以前から山岳信仰登拝者に知られ、神秘性を帯びた「神の使者」の鳥とされていました。ライチョウを保護されています。