第1452回 悪役の鳥
①https://tokyo.birdlife.org/archives/world/12008より引用のヒクイドリの顔のアップ
この世の中に、悪役なんて生き物がいるとしたら、それは人間以外には考えられません。毒ガエルのヤドクガエルにしろ、ドクトカゲ、キングコブラ、タランチュラ、スズメバチ、チャドクガ、トラフグ、イモガイ、オニヒトデと毒を持つ生き物はどこにでもいますが、どの種も自己防衛手段として身体に毒を備えているに過ぎないのです。鳥類におきましては、毒もそうですが、人間のような悪役ぶりを思わせる種が沢山いますが、どの鳥も自主防衛手段であり、生き抜く知恵です。
②http://ja.myecom.net/english/blog/2014/096913/より引用の殺人のヒクイドリ(体長約100〜170㌢)
オーストラリアの「殺人鳥」とは、この②の写真のヒクイドリです。この鳥の和名である漢字表記は「火喰鳥」です。まさか本当に火は食べませんが、写真のように、喉の赤い肉垂が火を食べているかのように見えたことから名づけられたとの説が有力です。地球上ではダチョウに次いで、二番目に重い鳥類で、最大体重は85kg、全高190㌢になります。スパイクのような爪を持つヒクイドリの脚で、ひと蹴りされましたら、人間なんかひとたまりもありません。走行も時速約50kmです。
③-1.https://ja.m.wikipedia.org/wiki/トビ類より引用の放火魔フエナキトビ(体長約50㌢)
③-2.https://www.google.co.jp/amp/s/aaknaturewatch.com/blog/birdwaching/brown_falcon/amp/より引用のチャイロハヤブサ(体長約41〜51㌢)
これから紹介する鳥たちも非常に危なく、場合によっては人間の命をおとしめかねない鳥たちです。オーストラリアでは森林火災が多く、その一つの要因として、③-1.のフエナキトビとまた日本にもいるトビ、③-2.のチャイロハヤブサの三種がピックアップされます。動物には本能的に「火を見ると逃げる」習性が備わっていますが、この三種は“意図して放火する”鳥の目撃情報が古来よりあり、山火事で起きた火種を枝などに移し替え獲物のいそうな茂みにつけ、追い出し捕獲します。
④https://amanaimages.com/info/infoRM.aspx?SearchKey=32257000038より引用の吸血鬼ハシボソガラパゴスフィンチ(体長約20㌢)
④の写真はダーウィンの進化論で有名なガラパゴス諸島に生息していますハシボソガラパゴスフィンチと長い名前のそんなに大きくはない野鳥で言うと、シメやウソの仲間です。アカアシカツオドリの背中に飛び乗り、皮が破けるまで突き、血を呑むのが好きなのです。この習性はガラパゴス諸島のダルウィン島とウォルフ島に生息する個体群のみに見られるだけのものです。吸血鳥で、吸血鬼の野鳥版なのです。吸血する動物には中南米のチスイコウモリがいますが、鳥ではこの種だけ。
⑤-1.https://dic.pixiv.net/a/ピトフーイより引用の毒鳥ズグロモリモズ(体長約25㌢)
⑤-2.https://ailovei.com/?p=75514より引用の毒鳥ズアオチメドリ(体長約16.5㌢)
⑤-3.https://ja.m.wikipedia.org/wiki/チャイロモズツグミより引用のチャイロモズツグミ(体長17〜19㌢)
この項に紹介いたします野鳥は毒殺鳥です。種によれば、⑤-1.のズグロモリモズは、ステロイド系アルカロイド(植物塩基)構造を持つホモバトラコトキシンという神経を麻痺させる作用がある毒を持ち、その毒性は青酸カリの約二千倍、数mgでネズミが死ぬ猛毒です。毒を持つようになったのは、外部寄生虫からの防御のためです。カワリモリモズ、サビイロモリモズなど合わせてピトフーイと総称されます。⑤-2.ズアオチメドリ、⑤-3.チャイロモズツグミなど毒性を持った鳥は多いです。
⑥-1.twitterより引用の日本にもいる托卵するカッコウ(体長約35㌢)左がカッコウの幼鳥、右が仮親のアオジ(体長約16㌢)
⑥-2.https://ebird.org/species/grehon2?siteLanguage=jaより引用の小さい頃から殺しのプロ托卵するノドグロミツオシエ(体長約20㌢)
⑥-3.twitterより引用のノドグロミツオシエのヒナ
最後に紹介させて頂くのは、自分で産卵したのに、抱卵や郁雛もせずに、他の鳥(仮親)に育てさせる托卵鳥のことです。この話の中でうっかり忘れがちなのが、日本では⑥-1.のカッコウやホトトギス、ツツドリ、ジュウイチなどのメスがこの例で言うと、アオジの巣に卵を産みつけ、仮宿に還ったヒナがその本当の宿主の卵を落として、自分だけが育ててもらうというもの。日本の托卵鳥よりアフリカの⑥-2.、-3.のノドグロミツオシエはハチクイのヒナをヒナがクチバシで突いて殺します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?