第1201回 (続)枕草子の中の野鳥
①https://jp.123rf.com/photo_42508648_空を飛んでいるカラス.htmlより引用の枕草子のなかの烏
⑴ 第一段 秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端(は)いと近うなりたるに、烏の、寝所へ行くとて、三つ 四つ二つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとおかし
→秋は、夕暮れ。夕日が赤々と射して、今にも山の稜線に沈もうという頃、カラスがねぐら
へ帰ろうと、三つ四つ二つなど思い思いに急ぐのさえ、しみじみと心にしみる。まして、雁などで、列を連ねて渡っていくのが、遥か遠くに小さく見えるのは、なかなかにおもしろい。 ⑵ 第三段(三月三日) すこし曇りたる夕つ方、夜など、しのびたるほととぎすの遠う、そら耳かとおぼゆるまで たどたどしきを聞きつけたらむ、なに心地かはせむ。
→少し曇っている夕方や夜などに、遠慮するかのように低い、小さな声で鳴いているほととぎすの、ほんとうの声かどうかと疑われるくらい遠くかすかな声を聞きつけたような時は、実に筆舌に尽くし難い気持ちがするものだ。
②https://blog.goo.ne.jp/dontuki23/e/bb8e4566d60976a8e108d53a9eb66299より引用の枕草子のなかの不如帰
⑶ にくきもの からすの集まりて飛び違ひ、さめき鳴きたる。
→カラスが集まって飛び交って、騒がしく鳴いているとき。
⑷ 木の花は 唐土にことことしき名つきたる鳥の、選りてこれにのみ居るらむ、いみじう心異なり
→中国で大げさな名前が付けられた霊鳥(鳳凰)が、選り好みしてこの桐の木だけに止まるというも、とても素晴らしい木のように思える。
⑸ 第四十六段 節は 夕暮れのほどにほととぎすの名のりしたるも、すべてをかしういみじ。
→夕暮れのころにほととぎすが鳴いたのも、すべておもしろくすばらしい。
③http://photozou.jp/photo/show/240261/224482364より引用の枕草子のなかの雀の子
⑹ うつくしきもの うつくしきもの 爪にかきたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る。
→かわいらしいもの。爪に描いた幼い子供の顔。雀の子が、人が鼠の鳴き真似をすると跳ねてやって来ること。 ⑺ 第七十三段 常磐木おほかるところに、烏の寝て、夜中ばかりにいねさわがしく落ちまろび、木づたいて、寝おびれたるかた声に鳴きたるこそ、昼のみめにはたがひてをかしけれ。
→常磐木の多くある所に、烏が寝て、夜中ごろに寝迷ってさわがしく落ちころび、木から木へ伝って、寝とぼけたとんま声で鳴いているのは、昼間見ている烏のありさまとは違って、おもしろいものである。
④https://belcy.jp/56581より引用の枕草子のなかのけたたましく鳴く烏
⑻ 第七十四段 しのびたるところにては、夏こそをかしけれ。いみじう短き夜のいとはかなく明けぬるに、つゆ寝ずなりぬ。やがてよろづみなあけながらなれば、涼しう見わたされたり。いますこしいふべきことのあれば、かたみにいらへどもするほどに、ただゐたる前より、烏の高く鳴きて行くこそいと顕証なるここちしてをかしけれ。
→忍んで逢うときでは、夏がもっともおもしろいものである。非常に短い夜が、まことにあっけなく明けてしまうのでまったく眠らないでしまう。そのままどこもかしこもみな開けっ放しのままなので、涼しげに見わたされる。まだもう少し話したいと思うことがあるので、お互いに答えたりしているうちに、座っているすぐ前を通って、烏が高い声で鳴いて行くのは、すっかり見られた心地がして、おもしろいものである。
⑤https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/gakujin813/entry-12391474876.htmlより引用の枕草子のなかの年老いた鶯の鳴き声
⑼ 見るものは 日は出でわたれど、空はなほうち曇りたるに、いかで聞かむと目をさまし起きゐて待たるるるほととぎすの、あまたさへあるにやと聞ゆるまで鳴きほびかせば、いみじうめでたしと思ふほどに、鶯の老いたる声にて、かれに似せむとおぼしくうちそへたるこそにくけれど、またおかしければ・・・
→太陽は上がったけれど、空はまだ曇っているが、なんとかして聞きたいと目を覚まし起きて座って待たずにいられない(あの貴重な)ほととぎすの(鳴き声が一声でなく)たくさんいるのであろうかと思われるくらいまで、大きな声ではっきり鳴いているので、ほんとうに素晴らしいと思っているときに、(春の鳥である)鶯が年老いた声で、ほととぎすの声に似せようと思っているらしく鳴き添えたときは、にくらしいけれども、またおもしろい・・・
⑥http://blog.livedoor.jp/lionhiking77/archives/35983840.htmlより引用の枕草子のなかの池の鴛鴦
⑽ あさましきもの 人のために恥づかしうあしきことを、つつみもなく言ひゐたる。かならず来なむと思ふ人を、夜一夜起き明し待ちて、暁がたに、いささかうち忘れて寝入りにけるに、烏のいと近く、かかと鳴くに、うち見上げたれば、昼になりにける、いみじうあさまし。
→人が恥ずかしくなるような悪口を、遠慮もせずに言っている時。必ず来るだろうという男を、一晩中、起き明かして待って、明け方になって少し忘れてしまって、寝入ってしまったところ、カラスがとても近くでカーカーと鳴くので、空を見上げたら、もう昼になってしまっている、とても情けない。 (11) さわがしきもの 走り火。板屋の上にてたつる烏、斎の生飯食ふ。
→飛び火。板屋の上で烏が斎の生飯を食べる。
(12) 神は 神は松の尾。つみて池は、鴛鴦など、いとをかし。
→神は 松の尾(神社がすばらしい)
つみて池には、鴛鴦がいることなど、まことにすばらしい。