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第1855回 鴛鴦夫婦のオシドリ
①-1.https://www.birdfan.net/2017/04/07/51648/より引用のつがいのオシドリ(左がメス、右がオス共に体長約45㌢)
題名の通りにオシドリと言えば「鴛鴦夫婦」という代名詞が付いてきます。その名の通り、つがいのオシドリを見れば、いつも寄り添っているのがわかります。それは仲が良いからぴったり寄り添うのではなく、他のオスに横取りされないようにつがい相手から離れず、結果的に寄り添っているようです。メスが猟師に撃たれてもオスが逃げずオスはメスに対して執着心が強いと言えます。
①-2.Twitterより引用のオシドリの換羽
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換羽(エクリプス)が始まり、①-2.の写真のように変身します。抱卵期の初期を終えるとオスは巣を離れます。オスはヒナの世話はしません。その後、オスはオス同士きままに過ごし、元気なオスは、別のメスに求愛することもあります。他の多くの鳥もそうですが、毎年つがい関係は解消されます。雁や白鳥は夫婦で子育てし、一生連れ添います。留鳥性の個体群では雌雄の結びつきは強めです。個体群により巣立ち直前までメスに付き添うものや、育雛に参加するものもいるようです。
②-1.https://blog.goo.ne.jp/siawase12345/e/c21d48c45d9afbdf3c485fdf6eee66f9より引用の枝に止まるオシドリ
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②-2a.http://www3.famille.ne.jp/~ochi/bird/oshidori.htmlより引用のオシドリの趾
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②-2b.https://blog.goo.ne.jp/yonyonsama7/e/e1c86d032524cc8c951671af10897f90より引用の他のカモの趾(蹼足)
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カモの仲間のオシドリのオスは、エジプトのツタンカーメンのような顔の形とまたその容姿の目立つことで、多くの天敵を呼びます。そのせいで、他のカモとは違い、いつも池や湖畔の木が生えた水辺の木の下や木の枝にいることが多いです。決して真ん中辺りで泳いでいることはないです。それは木陰や②-1.の枝に止まって身を潜めているのです。カモは枝に止まれませんが、オシドリの趾は他のカモ類と違い、②-2a.のように爪の湾曲が大きく、後趾が発達しているので樹によく止まれます。②-2b.の様にカモの殆どは全蹼足という爪がまっすぐに伸びていますので、止まれません。
③-1.https://afan.or.jp/survey-research/3099/より引用のオシドリの樹洞の営巣
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よく映像が絡むネットやマスコミなどは、子だくさんの鳥の特集となれば、沢山のヒナを従えて、最初の営巣から新居に引っ越すカルガモ親子を、警察官たちが出動して、交通整理にあたります。しかし、カルガモだけが子だくさんではなく、前回の「国鳥キジ」でのキジも確かに子だくさんです。前述致しましたように、オシドリは余りにも目立ちすぎて、天敵の対象になりがちなので、営巣も他のカモたちの陸上の草地に対して、カルガモは③-1.のような背の高い樹木の樹洞などに営巣します。この営巣はメスの仕事であり、オスはメスの抱卵時のメスへの給餌はしますが、後は巣を離れて、他のオスとのオスだけで集団化します。
③-2a.https://karapaia.com/archives/52157532.htmlより引用のオシドリのヒナの巣立ち
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③-2b.https://karapaia.com/archives/52157532.htmlより引用のオシドリのヒナの飛び降り
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③-2c.https://karapaia.com/archives/52157532.htmlより引用のオシドリのヒナの着地
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巣の選定はメスが行ない、常にオスがついてまわります。産座にはメスの綿羽を敷き産卵、抱卵の準備です。普通10m以上の高さの樹の洞に巣を作るため、③-2a.〜2c.のように、孵化したヒナはそこからダイビングしなければなりません。樹洞は巣の底から入り口の穴まで深いものでは1m以上。
ヒナは爪が発達しているので巣穴まで登れます。この頃から他のカモの趾とは違います。五月上中旬に産卵。抱卵はメスのみ。オスは抱卵期前半まで巣の近くにいて、雌の採餌に付き添います。六月下旬頃まで抱卵期は抱卵期間30日前後です。オスの換羽が始まる六月上旬頃、つがいが解消されます。ヒナは六月中下旬に孵化し、八月、家族群は解消されます。ヒナは三ヶ月程で親と同大になり、生まれつきの性比には偏りはありませんが、メスの死亡率がオスの二倍程なので成鳥はオスが多いという現象です。メスが一妻多夫します。
④https://www.town.hino.tottori.jp/oshidori/より引用のオシドリの飛来
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③の項でいうオシドリは成鳥はオスが多いという現象は④の写真にも表れています。写真は中国地方のあるオシドリの飛来地です。秋から春先にかけてオシドリが飛来。多いときには千羽以上の姿を観察するといいます。日本ではオシドリは留鳥です。しかしオシドリの飛来地は日本の各地にあります。なぜでしょう、それは例年10月頃からシベリアや中国、それに北日本などの漂鳥であるオシドリからやって来たり、渡り鳥のオシドリが越冬のため飛来し、年末から年明けにかけて各地の飛来地に集まります。まだまだ判らない鳥です。
⑤-1.http://oregontori.blogspot.com/2011/02/wood-duck.html?m=1より引用のつがいのアメリカオシ(左がオス、右がメス共に体長約47〜54㌢)
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⑤-2.https://www.naturingnews.jp/?p=4130より引用のつがいのナンキンオシ(左がメス、右がオス共に体長約33㌢)
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オシドリの仲間に⑤-1.の北アメリカに生息するアメリカオシがいます。胸のブドウ色、その端の黒白帯、脇の淡褐色の連斑は共通で、骨格、行動、習性、血清反応、卵白分析から両種は同系です。アメリカオシが先で、アジアに渡って孤立したものがオシドリみたいです。染色体の型はアメリカオシはバリケンの仲間に近く、マガモの仲間などとも共通ですが、オシドリの染色体は特別みたいです、そのため、アメリカオシは他のカモと交雑しますのに、オシドリは決して雑種を作らず、アメリカオシとオシドリも、つがいになっても雑種はできません。アメリカオシは特定のメスと番いを保つが、オシドリはオスが集まって誇示し合い、特定のメスを対象としません。なお⑤-2.のナンキンオシはオシドリの仲間てはないようです。