第1058回 鳥の用語の解説 ⑵
①https://zatsuneta.com/archives/105116.htmlより引用の野鳥の生活形態
前回の第1057回でも冒頭に申し上げましたが、鳥の最大の特徴は「空を飛ぶ」ということです。好きな時に好きなところに飛んでいけます。陸上の動物ではできないほど広い範囲を動き回り、遠い場所へと移動できます。繁殖に適した春夏の地より、越冬する暖かい地に飛んで行ったりと、人間に飛ぶことの期待を預けました。そんな飛ぶことに関する言葉だけでなく、鳥独自の行動を示す言葉もたくさんあります。移動や成長、求愛など、鳥の生態に関する用語を見て行きましょう。
②http://www.birds.dicis.net/learnmoreaboutbirds/informationsaboutecology.htmlより引用の野鳥の渡りのイラスト
⑴留鳥(りゅうちょう)→一年中同じ地域にとどまっているタイプの鳥です。カラスやハト、スズメ、ムクドリなど、一年中いつでも見る鳥が当てはまります。北海道や東北など冬が厳しい場所では、留鳥でも本州南部に移動して冬を過ごすことがあります。⑵渡り(わたり)→鳥が季節に応じて住む場所を変えるために、長い距離を移動する習性です。距離は種類ごとに異なり、同じ国の中で渡る種類、海を越える種類などがいます。ハシボソミズナギドリやキョクアジサシは、北極と南極の間を渡る鳥として知られています。⑶夏鳥(なつどり)→夏の間に日本に渡ってくる鳥です。冬は東南アジアなど温かい地域で過ごし、夏は過ごしやすい日本で繁殖します。ツバメが代表的な夏鳥で、他にはオオルリ、キビタキ、サシバなどが知られています。⑷冬鳥(ふゆどり)→夏はシベリアや中国北東部などの涼しい地域で繁殖し、冬を越すことを越冬といい、越冬するために日本にやってくる鳥です。ハクチョウやオオワシが有名な冬鳥で、身近な鳥にはツグミ、ジョウビタキ、カモの仲間がいます。⑸旅鳥(たびどり)→渡りの最中に日本を通過する鳥です。ロシアや中国北部で夏を過ごし、東南アジアなどで冬を過ごします。日本は渡りの中継・休憩地点で、春と秋に立ち寄ります。
主にシギやチドリなど、干潟に住む鳥では旅鳥が多くいます。⑹漂鳥(ひょうちょう)→渡り鳥ですが、それほど長い距離を移動しない鳥です。同じ国の中で、夏は涼しい高山、冬は暖かい低地で過ごします。同じ種類でも、地域ごとに留鳥であったり漂鳥であったりするので、一概には言えないところがあります。⑺迷鳥(めいちょう)→本来は日本には来ないはずが、間違えて日本にたどり着いてしまった鳥です。群れからはぐれたり、台風で流されてしまったりすることが原因になります。
他の種類の渡り鳥と混じって日本から出て行ったり、一季節を過ごして帰って行ったりします。日本ではめったに見ることが出来ない珍しい鳥が多く、迷鳥が観測された場所には多くのバードウォッチャーが集まります。
③http://www.birds.dicis.net/learnmoreaboutbirds/informationsaboutecology.htmlより引用の鳥の飛行方法
⑻直線飛行(ちょくせんひこう)→飛んでいる間にずっと羽ばたいてまっすぐ飛ぶ飛び方です。ツルやサギのような大型の鳥から、スズメやエナガのような小鳥など、多くの鳥が直線飛行をします。
大きな鳥の場合は、時折翼を動かさずに滑空して羽を休めます。⑼波状飛行(バウンディングフライト)→小型の鳥に多い飛び方で「短く羽ばたいて上昇⇒“翼を畳んで”少し滑空」を繰り返して飛びます。直線飛行に比べるとエネルギー消費が少なく、楽に飛ぶことが出来ます。ヒヨドリやセキレイ、キツツキの仲間が波状飛行をする代表的な鳥です。⑽滑翔(グライディング)→翼を広げ、羽ばたかないまま空気に乗る飛び方です。波状飛行が翼を畳んで滑空するのと異なり、翼は大きく広げて風をつかみます。タカの仲間は羽ばたきでの飛行は数十秒しかできないので、飛ぶときは滑翔を良く利用します。(11)帆翔(ソアリング)→滑翔と同じように翼を動かさず、上昇気流を利用して飛ぶ方法です。エネルギーをほとんど使わないまま、長時間・長距離を飛ぶことが出来ます。トビやアホウドリが良く行う飛び方で、アホウドリはほとんど羽ばたかずに1万5千kmもの距離を移動します。(12)滞空飛行(ホバリング)→移動せずに空中の一点で停止する飛び方です。翼を高速で動かし続けないといけないので、大量のエネルギーを消費します。ハチドリやカワセミ、アナホリフクロウなどの小型の鳥が行います。時には、ミサゴのような大型の鳥が短時間だけすることもあります。
④https://jp.123rf.com/photo_68115806_鳥の生活サイクルのベクトル-イラスト.htmlより引用のイラスト
(13)警戒心(けいかいしん)→バードウォッチングをする上で、鳥の警戒心は重要なものです。シジュウカラは人間はあまり警戒しませんが、タカには大騒ぎして逃げ出します。逆にガンは百m以内に人間が来れば警戒し始め、すぐに逃げ出す準備をします。どんな鳥でも、自分に向かってまっすぐ近づいてくる物を強く警戒します。接近してみたい場合は、大きく回り込むようにして、少しずつ近づきましょう。(14)縄張り(なわばり)→鳥や動物が、餌やパートナーを取る優先権を主張する範囲のことです。さえずりで縄張りのアピールをし、他の鳥が侵入してくると争って追い払います。繁殖期に夫婦で縄張りを作って守ることも多く、季節によって範囲が拡大することもあります。(15)巣立ち(すだち)→ヒナや幼鳥が巣から出ることですが、すぐに親から独立するわけではありません。
ツバメやフクロウは、しばらくは巣に近い場所にとどまって、親からエサをもらいます。カモなどは、歩けるようになるとすぐに巣立って、親と一緒に生活します。(16)求愛給餌(きゅうあいきゅうじ)→オスがメスにエサをプレゼントする求愛の一種です。メスが受け取ってくれるとカップル成立ですが、受け取られずにフラれてしまうこともあります。(17)モビング→大型の敵に対して、同じ種類の鳥が集団で騒いで追い払う行動です。実際に攻撃することはあまりありませんが、攻撃を仕掛けるようなそぶりをしたり、付きまとって嫌がらせをしたりします。カラスやタカの仲間が、モビングを受ける鳥の代表例です。しかし、カラスは小さな野鳥にも仕掛けることが多いです。(18)コロニー→多数の鳥が巣を作って集まる場所のことを指します。サギやカワウ、ユリカモメの仲間がコロニーを作ることが良く知られています。騒音やフンの被害が問題になって、駆除されることもあります。逆に貴重な鳥の場合は、天然記念物として保護されることもあります。(19)フィールドサイン→鳥がそこで生息している証拠となる物を指します。フン、足跡、羽などが代表的なもので、鳥の種類を見分けることも可能です。古巣、ペリット)吐き出された未消化物の塊)などもフィールドサインです。(20)ペリット→鳥が胃で消化できなかったものを、固めて吐き出した塊のことです。骨や毛、羽根、昆虫の殻、植物の種などがペリットに含まれています。フンよりも完全な形で残るので、食べられた物が判別しやすくなっています。(21)食痕(しょくこん)→猛禽類が獲物を襲った現場に残るフィールドサインです。ワシやタカの仲間は鳥を捕まえて殺すと、その場で羽をむしって下処理をします。林や森の地面で、大量の鳥の羽が一か所に散らばっているのは、タカ類が獲物をしとめた証拠です。