「彼女の影」（短編スリラー小説）

著作：あすか響

雨の降る夜、静まり返った都会のビル群の隙間に、一つの小さなアパートがあった。

その最上階に住むフリーランスの映像クリエイター、夏川響子は、自らの手で編集していた一本の映像に目を奪われていた。

映像の依頼主は「青木」という名前の男で、

彼はある廃墟で撮影された素材を響子に渡し、

特定の箇所を何度も繰り返し再生し、編集するよう頼んできた。響子はこれが何のプロジェクトなのか気にもしなかった。

ただ、素材に残された奇妙な影が気になっていた。

それはただの撮影ミスか、光の加減によるものだろうと思っていたが、　　　その影はどこか不自然で、
生きているかのように映像の中を動き回っていた。