あのとき見た空
何年前のことなのかも考えたくないほど、
高校生だった自分からどんどん離れていく。
今はもう廃校となってしまった女子高で合唱部に入り、ある曲に出会う。
常連とは言えないけれど、何度か全国大会に出場はしていた。練習が厳しいことは、なんとなく想像がつく。案の定合唱漬けの毎日であったが訳もわからず楽しかった。ある曲「夕やけ」は、のちに心の支えとなるくらい考え、歌い、歌い続けた。コンクールの課題曲であったその曲は、出場する全校が歌うこともあり、いかに上手く、表現を豊かにするかがポイントであった。そのため、何度も何度も歌詞を読み、自分たちなりの解釈を施していく。曲中の主人公に、いかに感情移入できるか。どんな曲をやったとしても必ずぶち当たる壁である。それから他の部員と意見が衝突するのは当たり前だったけど、それを乗り越えていくことで団結力が高まるというか。ありきたりだけど、あのときの自分は人生で一番輝いていたと思う。
夕やけ_____________
多分、私が空を見上げることが増えたのは、この時期からだと思う。
夕やけを見れば、何かヒントが出てくるのでは。
でもそう簡単にはヒントは出てくれなかった。ただ、なんとなく心を洗われる感覚があった。
授業が終わり、練習をして、帰り道に空を見る。同じことの繰り返し。刻一刻と迫るコンクールと増す危機感。他の部員はどんどん表現力を高めていく。そして同じように表現できない自分に嫌気がさしていく。ましてや思春期真っ只中なので、とことん他人と自分を比べたくなる。
そんなこんなでコンクール前日。だいぶ端折りましたが、練習はとても辛かったです。それでもまだしっかりと曲を掴めた感覚はなかった。モヤモヤしながらまたいつも通り帰り道に空を見上げたら、桃色の雲が目の前に広がっていた。涙が出ていた。今までに見たこともない綺麗な空が私の目の前に、私のそばに。歌詞に「桃色の雲」とある。まさにそれだった。言葉にはできない何かが私の中に生まれた。
まだ、たった人生15年目の当時の私ですが、この先これ以上に私を癒してくれるものなんて出てこないんじゃないかとまで思った。実際、25歳になった今でもこの気持ちは変わらない。
コンクールは無事関東大会へと進んだが、惜しくも全国大会には届かなかった。全員が全国大会を目指していただけに、とてつもなく悔しかった。帰りのバスの中、全員で悔し泣きをした、来年は全国大会へ進むと誓った。とは言え私個人としては、あの空を思いながら舞台で歌ったこと、結果以上の成果なのだ。
悔しさはその日のうちに脱ぎ捨て、また新たな曲へ。
あの日、あの状況で見た空が私を救ってくれた。忘れない。
これからもどうか私の心の拠り所であってください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?