生きた 投げた 愛した 江夏豊15000字インタビュー
20世紀最高の投手
記録にも記憶にも残る名選手
206勝193セーブ
シーズン401三振
最優秀防御率1回
最多勝2回
最優秀救援投手5回
セパMVP
江夏豊ーー。後世の人たちはこの大投手の存在を信じられるだろうか。
先発投手として200勝。これだけでも凄まじいのに、もし現在のように7回か8回を抑えたら1ホールド、9回を抑えたら1セーブとカウントしていたら、500ホールドと300セーブまで記録していたのではないか。いったいひとりで何度、名球会に入っていただろう。
本文でも触れているが、「江夏の21球」は「number」の創刊号に掲載されている。江夏豊がいなかったら日本のスポーツ・ジャーナリズムは確立していなかった。
考えれば考えるほど江夏豊という巨大な存在が空恐ろしくなる。本人も自分のことを「マンガ」と呼んでいるが、大谷翔平以前にこんな桁外れの大選手がいたわけだ。
2時間のインタビューで江夏豊に肉薄することなど不可能な話だとわかっている。しかし初対面の僕にも氏は胸襟を開いてくれたと思う。矜持の一端は引き出せたのではないか。記憶力の確かさには舌を巻いた。
この一本のロングインタビューだけで、「江夏豊は世界にたったひとりしかいない」という真実が垣間見えることは保証したい。
長くなりました。お楽しみ下さい。
取材日・2021年4月30日
初出⚫︎「昭和50年男」2021年7月号(雑誌に掲載されたものよりオリジナルに近いです)
――き、緊張しております。お、お忙しい中、貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。きょうは江夏さんの数多い伝説を検証させて頂ければと思います。とは言うものの、昭和46年生まれで今年50歳になる僕でさえ、縦縞のユニフォーム姿の江夏さんをリアルタイムでは知りません。
江夏 昭和46年……。オールスターで9連続三振の年だな。
――と、当時の映像を見ても、「こんな凄い投手が本当に実在したのか?」と信じられない思いがします。
江夏 マンガの世界。
――御自身でもそう思われるんですね。
江夏 そりゃそうだよー。
――8三振まで行ったところでキャッチャーフライがあがったけれど、田淵さんに「捕るな!」と。
江夏 追ってもスタンドに入るファールだから、田淵に「追うな!」って。もうはよ座ってくれ。次投げたら絶対三振取るからと。
――で、本当に三振取っちゃうという。江夏さんがオールスターで9三振。84年に江川卓さんがオールスターで8三振を取られているので、僕なんか単純な頭で、日本プロ野球の歴史でいちばん凄かった投手が江夏さん。2番目は江川卓さんなのか?などと考えてしまうのですがいかがでしょうか。
江夏 ん~やっぱ怪物じゃない?
――おおー、やっぱりそうなんですか。
江夏 怪物ちゅうのは、ケース・バイ・ケース、この場面で真っ直ぐしかないちゅうときに、堂々と真っ直ぐを放ってきて、空振り三振取る。これが怪物や。江川くんはそういう面を持ってた。ただ悲しいかな、投球術というのはなかった。阪神の藤川くんと一緒で、ストライクゾーンの中でしか勝負できない。
――江夏さんのレベルから見ると、藤川球児でさえ投球術がない!?
江夏 まったくない。それはもう長年見さしてもらって、「ああ、この子、もうちょっと投球術があればもっとラクな投球ができるのにな」ってケースが何回もあった。
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