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全くのイリュージョン温泉、それがつるの湯だった。

もしホームページに、つるの湯、嵐の湯、全て源泉掛け流しです、と表記してあったらどう解釈します?
普通は、普通は、普通は、つるの湯嵐の湯という2つの浴場(もしくは浴槽)があり、そのどちらも源泉掛け流しということだな、フムフムと思うじゃないですかあああああ。
このどう考えても至極まっとうなロジックが、大きく裏切られることになる異次元温泉、それが岡山県赤磐市のツルの湯温泉なのだ。そうなのだ。

初詣を和気神社に参拝し、体も冷えたのでヨシヨシあらかじめ調べていた温泉であったまろうね、と我々素人温泉探泉隊は、神社から30分くらいのところにある温泉施設へと車を走らせた。
到着した施設は、峠の山道にポツンとあった。なんか工事現場にある飯場みたいだなといのが第一印象。

しかし、玄関にはお正月らしく門松などが厳かに飾られており、施設のやる気などを堂々と表現している。

つるの湯 入り口

入るとすぐに券売機がある。
おや?一瞬違和感を覚えたが、さして気にすることなく、大人一人700円のボタンを押す。
「男の人は、手前、女の人は奥ですからねえ」と受付のおばちゃんが案内してくれる。
「はいはい、では40分くらいでねえ」と女性隊員と時間を決めていざ突入。更衣室で用意していると、さっきのおばちゃんが入ってきて、浴室へ通じるドアをガラリとあけ、「湯加減どうですかああ??」と聞いたりしている。
なかなかいいじゃないかあ。先客は「ちょっとぬるいなあ」と答えたりしている。
すぐ私も入って、かけ湯して内湯に入ると確かにちょっとぬるい。40℃くらいかな。温度計らしきものがあったので見に行くと時計だった。しばらく浸かっていたが、一向に温度が上がって来ない。結局最後まで変わらずで、「聞いただけやったんかい!」と関西人らしく突っ込みを入れるが、その時はまだ解らない。

源泉掛け流しの内湯

湯船は4人入ればいっぱいになるくらいの大きさで、ここがつるの湯なのかなあ??ということは、嵐の湯は露天なのだなと、やはり真っ当な理論で考えて、入浴の段取りを進めていく。
私は、露天も好きだがやっぱり温泉は内湯で熱湯という嗜好があって、とくに冬場は内湯で十分あったまってから露天へと向かう正当派である。おそらく皆さんもそうじゃないだろうか。
しばらくして、よし、露天に行ってみよう、きっとそれが嵐の湯なんだろうなあ・・と期待してガラガラと扉をあけてみて驚いた。

内湯の扉をあけた風景

ない。ないのである。ないが無いって、嵐の湯がないのである。ただ、そこには竹塀(プラ)に囲まれた明らかに露天風呂とこじゃれた庭を作ればちょうど良いくらいの堂々としたスペースはあるのだ。濡れ縁があって、スリッパもおいてある。が、お目当の、というか肝心の風呂がないのである。おかしい、全くもっておかしい。私の嵐の湯はどこへ消えた!

ここで閃くのが、兵庫県出石温泉湯元館で体験した不思議なレイアウトである。
湯元館は、内湯と露天が繋がっておらず、脱衣場を経由して行かねばならない。しかも、そのドアが分かりにくく、うかうかしていると、どちらかにしか入らず(入れず)帰ってしまう一見さんも多いのではないかと客のこちらがハラハラしてしまう、ハラハラ型浴場なのである。

ははぁ〜ん、ここも例のハラハラタイプなのだなと、一度脱衣場に出てフリチン(フルチン?)でそこらじゅうをウロウロしてみたりして、かなりのハラハラ体験をしたものの、やはりどこにも無いのである。その無さっぷりは「見事」としか言いようがなく、あっぱれであった。
いや、もちろん露天がない温泉など山ほどある。が、問題はそこではない。絶対あると思い込んでいる、しかも「嵐の湯」という名前まである露天風呂が無いのと、「うちは内湯で勝負してまっせ」という本格的老舗温泉宿とは意味合いが全く違うのである。

後に聞くところによると、女性隊員は、同じようにあるはずの嵐の湯を探して、スリッパを履き、さら地を歩き、奥に見える扉を開けてみたそうだ。「開けたら外だった」と。
女性が素っ裸で外界に通ずるドアを開け放ったのだ。
フリチンで脱衣場をうろうろした私、隊長のハラハラ度など比べ物にならないこれがハラハラMAX浴場なのである。

内湯に戻り、その頃には、独泉であったこともあり、浴室内をいろいろ調べてみる。湯口からかけ流されている湯は決して多くない。

内湯の湯口

シャワーも水圧が低い。カランもなんだかオジンの小便みたいなちょろちょろだ。
ここで、さすが隊長は気がつくのである。

洗い場は3台のみ

嵐の湯は露天ではなく、女風呂である。これはよくある。男湯がせせらぎの湯で、女湯が谷あいの湯、みたいな。
そーなのだ。そして全て掛け流しというのは、湯船もシャワーもカランも全てという意味じゃないかと。
シャワーやカランからのオジンの小便を洗面器に入れて匂ってみたり、飲んでみたりしたけど、分からない。もともと、単純温泉だし、無味無臭、しかも温泉成分はかなり少なめである。(のちに先のおばちゃんに聞くと、やはりオジンの小便は全て温泉の掛け流しということであった。)

そこから、隊長のいつもの妄想が始まる。
おそらく、ここは、当初は意気込んで、露天もある源泉掛け流し温泉を作る予定だった。
おそらく、内湯の溢れたお湯が露天に流れる仕組みを考えていたんじゃないだろうか?
ところが、シャワー、カランにも源泉を回したため、露天に湯を回せなくなったのではないか?
そうでも考えないと、内湯の扉を開けた眼前に広がる景色の説明のつけようがない。

40分より少し前に上がって、連れを待つ間に先ほどのおばちゃんに話を聞くことに。
そうすると、驚くべき事実が発覚。
嵐の湯というのは、女性風呂に隣接する別料金の温泉熱気風呂で、なんでもとっても偉い先生が、秋田川玉川温泉の薬効石と地熱を利用した岩盤浴のすばらしい効果に感銘を受け、ここに世界で唯一の温泉熱気風呂を再現開発したのだと、それを嵐の湯というのだよワトソン君。(もちろんおばちゃんはワトソン君とは言わない)
詳しくは添付の写真を読んでおくれ。

なんだかすごい。
世界初の説明
うんちくがこれ

「見学しますか?」というので、「もちろん!ぜひ」とヨロコビいさんで私にとっては幻の嵐の湯を拝見させていただいた写真がコレだ!

よおく目をこらしてみてほしい、それでも何も見えないと思う。
湯気がすごいのだ。これが嵐の湯なのだ。

ああ、ちょうど今水撒いたばっかりやからねえ。湯気がすごくて・・。
そうなのだ。私が入館当初いただいた違和感。
それがフラッシュバックした。
一般700円、嵐の湯2100円。

人は見たいものを見る傾向がある。見たけど全く見えてなかった嵐の湯
それを勝手に露天風呂、もしくは女湯と思い込でんでしまう。いや、思いこませてしまう。世のイリュージョンマジックはこうやって成立しているのかと、さらなる妄想を広げる岡山県赤磐市のつるの湯初体験、2023年初湯(温泉)であったのだ。次はその嵐の湯(ってもお湯はない。)を体験してみたい。

つるの湯
086-995-0226
この情報は、2023年1月5日時点での情報です。

温泉分析書





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