出石温泉元湯館に日本の温泉未来を見た
兵庫県には城崎温泉や有馬温泉というブランド温泉は存在するが、我々素人探泉隊シニア部を納得させるような源泉掛け流し、低価格、鄙びた味わいという温泉がほとんどない。
いや、あるのか知れないが、我々はまだ発見できていない。
新温泉町の浜坂温泉郷の七釜温泉が良いのは以前書いたが、いかんせん遠い。できれば2時間くらいでお気軽に行けるところにないもんかいな・・・と思っていたら、かなり納得の湯があった。それが、出石湯元館である。
新鼓楼で有名な出石城下から少し離れたところにある湯元館は内湯、露天とも、堂々たる掛け流し、塩素消毒なし、加温はありだと思う、の大満足温泉なのだが、400円と超安い。これでも最近値上げしてすみません、すみません、という低姿勢が、いや、これは、どうもどうも、なんならちょっと色つけてお支払いしましょうか?という気分になるのである。
湯元館より存在感が大きいのは、隣に立つウインブルドンというビジネスホテルだ。湯元館の経営らしい。しかし、ウインブルドンという割には、全く英国風でもなく、バブル期にはやった田舎のペンションのような建物だ。宿泊客がいるのかと心配になるが、それにしては、かなり大規模で何棟もあるのだ。
なんでこんなところにビジネスホテル?しかも名前がウインブルドンと思いきや、道挟んで向こうに、市のスポーツ施設のテニスコートがあった。おそらく、当時は、全て市が運営していたのであろうが、手に負えなくなって手放したのを、ここの館長が引き受けたのであろう。
ここの館長は、北条鉄道に子猿駅長のアイデアを持ち込んで人気を博したアイデアマンで、市としてもお荷物施設をなんとか彼に押し付けて胸をなでおろしたに違いない。いや、これは全部私の想像妄想である。違ってたら御免なさいだ。
これは受付に貼ってあった多くの写真からの私の推測だ。
敷地内に、ウインブルドン、湯元館のほかに、花山寺宿坊と言う名の立派な蕎麦屋がある。湯上りに出石蕎麦と円山川でとれた巨大しじみの味噌汁をいただくが、ともにめちゃ美味い。新そばの時期にまた来たいものだ。
さて、温泉はといえば、11時過ぎに到着して、湯元館に飛び込むとすでに先客がお一人。地元の方っぽい。のんびりと露天に浸かっておられるのみ。お湯は単純温泉のすっきりしたいいお湯が惜しげも無くかけ流されており、ほんのり硫黄臭も漂う。露天は男湯は吉宗の湯、女湯は篤姫の湯らしい。時代がだいぶ違うのにな、と思うけれど、そんなのはどうでも良い。どうせ館長の好みなのだ。
以降約1時間どなたも入ってこられなかった。こんないい湯なのに、もったいないと思う反面、あんまり混まないで欲しい、けど、あんまり赤字で廃業して欲しくないと、複雑きわまりない心持ちなのである。
ここから引湯している乙女の湯はとっくに廃業しているようだ。
最近、いい湯がどんどん廃業に追い込まれている。
また大分県別府などの日本を誇る温泉地の湯量枯渇や成分の変化。我が兵庫県でも先に書いた有馬温泉の共同湯・金泉などは、鉄分含有が10年前と全く変わってきている。当時は一度使った手ぬぐいは使えないくらい赤茶く染まったものだが、昨今は一度洗えば綺麗になる。
日本の温泉地は、資源の枯渇に加えて、運営者の高齢化や施設の老朽化、昨今の物価高騰、とくに原油価格高騰で、運営が非常に厳しくなってきているようだ。
廃業に追い込まれる温泉宿も多く残念な限りだ。私たち、素人探泉隊にできることは、できるだけ頻繁に浸かりに行き、しっかりお金を支払い、よき仲間を呼ぶことである。
そうなのである。それしか出来ないのである。いつか日本に温泉ってたくさんあったんだよなんて言われる日が来ないように祈ることも忘れずに。
住所: 兵庫県豊岡市出石町福住1217
電話:0796-52-2871
時間:11:00-22:00(受付21:30まで)
料金:大人(中学生以上)400円、小学生以下 300円
(この情報は、2022.11月現在のものであります)
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