silence. #7
吐息のような唄声ー。
決して大きな声ではない。柔らかく夜を包むように、ひとつひとつ、音の粒が芯に響いてくる。
(子守唄だ。)
ヒグチは手を止め、いつの間にか聞き惚れていた。
真向かいにいたフクロウは徐々に減速していき、草むらへ降り立つとそのまま眠ってしまった。
それを見届け、アピスは歌うのをやめた。
「やべぇ....予想以上、、とんでもねぇで、姫様。。!」
ヒグチは興奮気味でアピスを見上げると、少し、寂しい顔をしていた。
「...。無闇に傷つけあうのが嫌いなんだ。
そのフクロウはおそらくほとんど視力がなくって...そのためのゴーグルだろうよ。
君の太鼓で聴力を失ったら...。世界を知る術を無くしてしまう...。」
ヒグチは言葉を失い、見つめた。
今際まで向けられていた強大な敵意に対し、相手を想い"攻撃以外"の御し方で制すなど、ヒグチは考えたことすらなかった。
「...アリガトウゴザイマシタ」
ミズキがペコッと礼をし、アピスに対して誠意を尽くした。
ミズキの礼を受け、ヒグチは片膝をつき一礼をした。それが精一杯にして最大の敬意だった。
結果として、"誰1人傷つくことなく"戦いの幕を閉じたのは、アピスの唄だった。
ループスが近くのうろへフクロウをそっと運び、アピスと立ち去ろうとすると
「私めらも、連れて行ってはくださらないか。」
ヒグチは呼びかけた。
その声には返事をせず、アピスらは月に向かって歩き出した。
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ヒグチヨハクです。小説「planktos」連載中。よろしくおねがいします。