俺が選ばれないのはわかってるけどそれでも君が好き16


「話しかけないでほしい」

そう言えばいいんだろう。

そう言えば、聡い彼女なら、きっとうまく距離をとってくれる。

とってくれると同時に、俺の情けなさに辟易するかもしれないけれど。

それで平穏な毎日が手に入るのなら、ほどほどの対価のような気もする。

言えばいいんだ。

「話しかけないでほしい」

「俺に関わらないでほしい」

「無視してほしい」

「その目で、その声で、俺の名前を呼ばないでほしい」

お前とか、おい、とか、ねぇとか、ちょっと、とか。

そんなふうにしか呼ばれない俺を、当たり前のように、日常の距離感で、司くん、なんて、平気で呼んでくれるのは君だけなのに。

それすらも手放そうとしてる俺を情けなく思って、見放してほしいなんて、俺は大馬鹿すぎて恥ずかしくてまた泣きたくなる。

関わってほしくない。

そんなわけ、ない。

だけど、ほかにどうすればいいのかもわからないから、焦って君から逃げたくなってしまう。

「・・・あのさ、挨拶とか、しなくていいから」

必死に絞り出した言葉。



「・・・はぁ!?キモっ」

あの時、かな子に、ゴミのような目で見られて、正直、不思議とスッキリもした。

あぁ、ほんとに俺ってクズみたいな人間だなって思ったんだと思う。


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