俺が選ばれないのはわかってるけどそれでも君が好き22
「ね、司、こっちきて」
「どうしたの?」
「あそこ、ツバメが来てるの、もう。もう少し先だと思ってたけど・・・今年は早いね」
「本当だ。器用に巣のリメイクまでしてる。
・・・ゆきは、その本の続き、読んでたんだ?」
「うん、おもしろくて。お華の時間までまだ時間あるし」
「コーヒー、飲む?持ってこようか?」
「うん。カヌレも」
「カヌレ・・・食べるの?」
「食べるよ」
「俺が持ってきたガトーショコラは食べないのに」
「だってあれ好きじゃないんだもん。スカスカしてて嫌」
「一応、人気のトコのなんだけど・・・」
「嫌ー」
「・・・カヌレって、一昨日、お華の先生の息子さんから贈られたやつだよね」
「うん、そう。おいしいの」
「その息子さんが、なんでゆきのカヌレ好きを知ってるの?」
「前にね、会ってお話した時に、カヌレのお話もしたの。そうしたら、僕も好きですって言ってたから」
「好きって、カヌレを?」
「そうでしょ?」
「カヌレと、ゆきを?」
「私は関係ないでしょ」
「この店のカヌレ、最近話題になってて、予約3か月待ちの状態なんだけど」
「・・・?」
「そんな入手困難なカヌレを、わざわざゆきに渡しにくる理由ってなんだと思う?しかも直接、手渡しで」
「・・・?」
「今日、この後の生花の時間は、俺も同席するから」
「え、なんで?」
「害虫駆除」
「・・・?」