俺が選ばれないのはわかってるけどそれでも君が好き6


「ゆき、」

「なぁに?」

「あと20分で帰るよ」

「もう、そんな時間?」

「まだあと少しの余裕はあるけど、早めに車に乗っておいた方が融通がきくから」

「はぁい」

「結構進んだね」

「うん。面白い、この本」

「そのカバー、見たことないけど新しい本?」

「そう。分厚くて手がちょっと疲れちゃった。目もしぱしぱ」

「ハマると集中するからね、ゆきは」

「ふふ、楽しくて。続きは家で読も」

「今日はこの後多めに予定が入ってるから、家に着くのは夜の9時過ぎになるよ。帰ったらすぐに入浴出来るよう鷺山さんにも伝えてあるから風邪を引かないようにちゃんと入って。その間に明日の会食の出席者をまとめておくからゆきにも一通り目を通してもらって、挨拶の時に交わす話題も教えておくから・・・って、聞いてる?」

「・・・聞いてない」

「聞いてるね」

「聞いてないってば」

「だから本の続きはまた明日に」

「・・・けちー」

「言葉遣い」

「ハゲー」

「はげてません」

「司のけーち。坂上さん(運転手)、もう司置いてっちゃって」

「かしこまりました」

「かしこまるな、お前はうちの運転手だろ」

「坂上さんは私の味方だもんね」

「・・・ゆき、坂上から離れて。お前(坂上)もまんざらでもない顔するな」

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