俺が選ばれないのはわかってるけどそれでも君が好き19
ゆきside
夜中に目が覚めた時の、ホットミルクが好き。
司が淹れてくれる、ちょうどよくあたたかくてほんのりと甘いホットミルク。
前のお家では、大きなマグカップにアツアツのホットミルクを作る人がいて、本当は、そんなアツアツのホットミルクも好きなのだけれど。
司には内緒にしてある。
カップに口をつけると、熱さでくちびるがぴりっとして、あつーい、って笑ってた。
「司はまだ寝ないの?」
「あと少し。こっちのリストにも目を通したら寝るよ」
「外務省の特別要人リスト」
「...顔と名前に、目を通しておくだけ。一応。」
「いつものおじさんたちなら私も教えてあげるから、大丈夫だよ」
「...うん。でも、出来ることはやっておきたいから」
甘いホットミルクと、キッチンと、磨かれた銀食器と、乱れのない真っ白なテーブルクロスと、そこにいる司と。
当たり前になっているこんな光景を、不謹慎でも、幸せだと思う。