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初めての大学

19歳の頃、友達がよく話していた。「大学生が一番楽しい」と。

私は高校卒業後、京都の畳屋に修行に行った。友達も知り合いもいない環境で初めは一人ボッチだったけど、夜学(畳の学校)にも通ったことで、同期が出来たし、先輩方とも仲良くなれた。

それからは仕事が終わればパチンコに誘われ、休日の前日には畳職人が一同に集まって大宴会をした。木屋町と祇園の大人の楽園を遊び歩いた。本当に、楽しい日々だった。

とはいえ、地元に帰ると友達は言う。「大学は本当に楽しいよ。お前、もったいないな。」

「いやいや。俺も楽しいよ。」とは言いつつ、皆んな口揃えて大学は楽しい!学生は最高だ!と言うから、大学ってどんな場所なのだろうかと気になった。

私は仲が良かった友達にお願いして、大学の中を案内してもらった。煉瓦調の明治時代的外観に似つかわしくない先進的な学内。バベルの図書館のような場所を通り過ぎ、エレベーターで上がっていく。階に着くと、そこには広場が現れた。長い廊下と閉ざされたいくつもの扉。そのひとつを開けると、私の通っていた都立高校の教室とは比べ物にならないほど広い教室?があり、その隣の部屋には研究室?と見たこともない機械が置かれていた。

大学すげぇ!すげぇな!と興奮している私を見て友達は、「田舎もんみたいだ」と笑っていた。

ただ、大学が楽しい場所なのかは、大学の中に入っただけではわからなかった。綺麗な校舎、広い教室、先進的な研究室。学問を学ぶのに適した環境であることは言うまでもないが、やはり講義を聞かないと何も言えない。校長先生の長話ぐらい退屈だったら最悪だ。

それでも大学内に入れたことは、貴重な体験だったと思っている。「もし修行に行かず、大学に通っていたら」という世界線の物語をほんの少し味わえたのだから。

▼畳職人のブログ:https://phkkoomde.com/

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