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プロダクトマネージャーにジョブチェンジした時に参考になった書籍15冊の紹介
こんにちは、ひぐです。
去年の9月からデータサイエンティストから、プロダクトマネージャー(以下、PdM)へポジションが変わりました。
そこで、守破離のうち、“守”をきちんと行えるように、業務で役立ちそうな書籍を読みました。書籍に書かれていることは状況によってはそのまま適応出来ないこともありましたが、バッドケースを踏まないという意味でとても役に立ったと感じています。
本ブログでは各書籍で得た学びや考察をざっと書いてみます。PdMの仕事に携わる方や、これからなろうとしている方の参考になれば幸いです。
『仮説行動』
書籍概要
確実な答えが見えてから動くのでは遅く、過去の正解がいきなり不正解になることが往往にしてあるビジネスシーンにおいて、「仮説をベースに思考と行動をしながら検証を繰り返す」プロセスを紹介した書籍です。
具体的には次の3ステップで、学びと業績を最大化する方法論を紹介しています。
1. ビジネス上の仮説を地図として俯瞰し、ざっくり“全体像”を把握する(マップ)
2. 生成した仮説を検証し、学びを得て、仮説を洗練していく(ループ)
3. 得られた学びをもとに行動を変化させる(リープ)
ビジネスとは、構成する複数の仮説を検証しながら洗練する、というプロセスであり、その検証の各ステップにおいて何を意識すべきかが書かれています。
例えば、”良い仮説づくりには良いエビデンス(知識・データ・エピソード)と推論が欠かせない"。"推論にも「エビデンスから仮説を導く前向きの推論」と「仮説を立ててから必要なエビデンスを見いだす後ろ向きの推論」"がある、といった論理の整理とそれの行動指針が示されています。
感想・考察
自分が実践していた思考プロセスが、本書でかなり言語化されていて、「なるほど、あれはこういう部分に当たるのか」という発見がありました。
また、思考だけではなく、行動をして学びを得ていくスタンスも強調され、エフェクチュエーションなどに通じる物があるなと思いました。
『クルーシャル・カンバセーション』
書籍概要
「クルーシャル・カンバセーション」とは、重要な結果・反対意見・強い感情が入り交じる場で行われる話し合いを指します。
たとえば"借金返済の催促"や"上司への直接フィードバック"すること、などが上げられます。
人間は生理的にこのような場面が苦手になりがちで、強い感情が働くと脳がアドレナリンを出し、脳の血液を、肉体に回してしまい“闘争モード”に入り判断力が鈍ってしまいます。
こうした場面でどう振る舞えばいいかを解説しており、ポイントは
自分が話し合いの中で本当に得たい成果は何か?を理解すること
お互いの共通認識の輪を広げること
相手は何におびえていて、正常なコミュニケーションが出来てないかを推察し、対処すること
と紹介されています。
感想・考察
PdMはしばしば相反する意見の間に立つので、まさにこの「クルーシャル・カンバセーション」が起こりやすいと感じます。
たとえば「新機能を実装したい営業サイド」と「技術的な負債を解消したいエンジニアリングサイド」の板挟みになるケース。こういうとき、感情に任せず冷静にコミュニケーションを設計する重要性を再認識しました。
また、相手が皮肉や攻撃的な態度をとってきても、それをそのまま「攻撃されている!」と受け取るのではなく、安全性が損なわれつつあるサインだと理解して対処するなど実践的なアドバイスも多かったです。
気づいたときすぐに対処するというのは難しいが、まずは「これはクルーシャル・カンバセーションだ」と認識するだけでも行動が変わる。「ちょっと考えさせてください」と一呼吸置くなど、落ち着く工夫をしていきたいと思いました。
『ジョブ理論』
書籍概要
「顧客は商品を買うのではなく、“進歩”を得るためにその商品を生活に取り込む」という考え方を提唱した本です。
例えば、車通勤のお父さんにとっての朝のミルクシェイクは「車で移動中に退屈しない・腹持ちする食べ物」というジョブを片づけ、夕方のミルクシェイクは「子供のおねだりを満たす手段」という全然別のジョブを担っています。
同じミルクシェイクを買っていても、そこに至る基準や目的は異なるため、競合となる製品やサービスもまったく違うということがわかります。
感想・考察
「人が物を買う動機」は、ペルソナやスペックだけで決まるものではなく、もっと複雑な要因が絡むことを再認識しました。
結局のところ、いつ・どんな状況でその商品が必要とされるのかというシチュエーションやタイミングでのアプローチが大事で、機能開発する際もペルソナに加えて、プロダクトにアクセスする背景のなども意識したいと思います。
『ラディカル・プロダクト・シンキング』
書籍概要
本書は、イテレーションやアジャイルの考え方は現代のプロダクト開発では常識のように扱われているものの、それらの要素だけでは良いプロダクトの開発には不十分だと指摘しています。具体的には、これらは速度は速めるが、方向性を示さないのです。
プロダクトの方向性を決めて一貫性があるものにして行くには、プロダクトビジョンを作り、それに照らし合わせてイテレーションを回すのが重要だという語っています。
感想・考察
「なぜプロダクトビジョンが必要なのか」が論理的にわかる内容でした。
pmconfの曽根原さんがLinkedInでの実例を紹介しているので、こちらも合わせてみると更に理解が深まるかと思います。
『Zero to One』
書籍概要
PayPal創業者のピーター・ティールが「ほとんどの人が信じていないが、自分だけが知っている真実を探せ」と提唱する書籍です。
「競合に打ち勝つこと」そのものがゴールになると、勝ってもあまり得るものがない。むしろそもそも競合がいない新しい領域を生み出すことにこそ価値がある、と主張がされています。
感想・考察
ピーター・ティールさんの偉業はOff Topicを聞いていると何度も出てくるのですが、改めて彼の壮大な考えの背景が理解できました。
競合に向かいすぎない、視座を高くするためにも定期的に読み返したいと感じました。
『INSPIRED』
書籍概要
「優れたPdMが具体的にどんなフェーズで何をしているか」を紹介しており、PdMにとっての"定番書"となっています。
特にプロダクトに潜むリスクを、「価値」、「ユーザビリティ」、「実現可能性」、「事業実現性」の4つに分けて、その対処法やエビデンスの取り方を解説しています。
多くの企業があらゆるアイデアを「とりあえず開発」してしまい、あとで大失敗する。これを避けるにはこの4つのリスクを評価し、必要なエビデンスを小さく検証していく姿勢が不可欠だと説きます。
感想・考察
PdMになりたての頃、多様な問題が次々と出てきて戸惑ったが、本書を読むとどの順序でどのリスクを潰せばいいのかイメージがつかめました。特に価値のリスクをクリアしなければ、以降のリスクに取り組む意味すら無くなるといった指針は参考になりました。
ただ、内容はけっこう“マッチョ”で、「週60時間以下でこなせるPMはほぼいない」という記述もあり、仕事うまくいかなかったときに読むとMPが削られます。笑
この本を読んで、小城さんの「ロードマップに機能を書くべからず」のnoteにもより納得感を得ることが出来ました。
『プロダクトマネージャーのしごと 第2版 ―1日目から使える実践ガイド』
書籍概要
PdMに必要なソフトスキル面のマインドセットを中心に書かれている本です。
PdMの仕事は不確実で、幅広いステークホルダーを巻き込むため、不安やストレスの多い環境になりやすいです。その時に無意識的に自己防衛的になり、意図せず良くない行動を取ってしまうことがあると言います。
こうした状況に対応できるように、「コミュニケーションの行動指針は“心地よさより明快さ”」「ベストプラクティスが、ベストエクスキューズに勝つことはまれ」など、具体的な事例とともに明確な指針を紹介しています。
書籍に出てくる下記の表現がとても印象に残っています。
「でも……。それは自分の仕事じゃない!」というセリフを成功しているプロダクトマネージャーが口にすることはほとんどありません
感想・考察
メンタル面ですごく参考になった書籍です。
ストレスな環境から来る、無意識の認知バイアスなどはなかなか自分では気づけないので、落とし穴が目に見えるようになった感じでした。
1日目から使える実践ガイド、というのは本当だなと思いました。
『SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法』
書籍概要
製品や課題発見のために、5日間という短期間で「課題の定義→アイデア出し→プロトタイプ→検証」まで走り切るデザインスプリントの手法をまとめた本。
スプリントの期間中は、通常のミーティングをすべてキャンセルし、このテーマに対して全員で集中的に取り組むアプローチが特徴的です。
感想・考察
短期集中で課題を絞り込み、試作品を形にするのは非常に効率がいいと感じた。
かなりピーキーな手法ですが、今やっている価値検証の工数はまだまだ削れるのではないか?と思い起こされます。
また、まとまった時間の威力をすごく感じるので、MTGをみなおすきっかけにもなりました。
日本での実例としては、クックパッドの事例がとても参考になります。
タイトルに最速仕事術と意識高い感じなので、外で読むのが少しためらわれました😅
『新規事業の実践論』
書籍概要
いくつもの新規事業立ち上げを経験してきた著者が、新規事業開発のプロセスを段階的にまとめた本。MVPからPMFに至るまでに必要なステップを、かなりリアルな事例を交えて紹介しています。
社内調整やリサーチばかりではなく、まず顧客に会いに行くことで実際の反応を得ることが、新規事業においては最重要であるという視点が貫かれています。
感想・考察
グロースまでの新規事業のステップを6つに区切って、その各フェーズで何を考えるべきかが紹介されておりとても参考になりました。
新しいプロジェクトだと、何も決まっておらず、どれも緊急で重要度も高いと感じてしまっていたのですが、これを読むことでまずはこれから取り組む、と指針を立てることが出来ました。
『エフェクチュエーション』
書籍概要
予測不能な不確実性に直面したとき、どう動けばいいのかを説く本です。
本書は、熟練した起業家が取る行動パターンの研究をベースに、「手中の鳥(手持ちのリソースを活かす)」「許容可能な損失」「クレイジーキルト(コミットの可能性があるステークホルダーを次々巻き込む)」「レモネードの原則(予期せぬ要素を活用する)」「飛行機のパイロット(コントロール可能な部分に注力)」といった概念を提示しています。
従来のプロジェクトマネジメント(コゼーション)は"計画"や“予測”を重視しますが、本書で紹介するエフェクチュエーションは不確実性が非常に高いときに“まず動いてみる”ことを優先する考え方です。
感想・考察
人間、動かなかった時のリスクというのはなかなか認知できない上に、
殆どの書籍では、計画の立て方などが紹介されているので、このような許容可能な損失を計算してまず動くという方針は新鮮でしたし、より意識しようと感じました。
都度計画しつつ、良い方向に転ぶように愚直に実行していけば、なんとかなるのかなと思えたのでメンタル的にも良かったです。
『戦略の要諦』
書籍概要
本書では「戦略を立てるスキルは三つの要素で形成される」と述べられています。
1. ほんとうに重要なのはどれかを見きわめ、それ以外を後回しにできる能力
2. それが手持ちリソースで本当に解決可能かどうかを判断する能力
3. リソースを集中投下する決断力(小出しにしない)
また、フォーカスとは注意力を向けるだけでなく、選んだターゲットに対して持てる力を集中投入すること。と紹介しています。
感想・考察
良い戦略は自動で出ることはない。How toなどわかりやすいことに手を出してしまいがちだが、やるべきことを絞って、脳に汗を書くことで初めて出てくると言い切っていました。
Zero to Oneと同様、世の中のスタンダードな考え方に対して、圧倒的な成果を元にバッサリ切っているのが読んでいて気持ちが良かったです。
その他のおすすめの書籍
詳細な感想をまとめることは割愛させていただきましたが、紹介しておきたいおすすめの書籍を貼っておきます。
アジャイルサムライ−達人開発者への道
アジャイルのエッセンスが楽しく学べる書籍。howだけでなく、whyから書かれているので、軽量にはじめるにはここに書かれていることを取り入れるとよさそう。
アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット
なんとなくやってるKPTに飽きがきたり、もっと身のある会にしたい!と感じたときに参考になる書籍。振り返りの手法が十数個紹介されていた。
マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識
新任マネージャーが意気込んであれこれして空回りしてしまうバッドケースが重点的に紹介されている。プロダクトマネージャーのしごとの前半に近い。
ドメイン駆動設計をはじめよう ―ソフトウェアの実装と事業戦略を結びつける実践技法
実践的なDDDが学べる。ビジネスを成長させる為にどのように開発をフォーカスするのかという観点でも参考になりました。
まとめ
PdMにジョブチェンジした時に参考になった書籍を紹介させていただきました🙏
何冊か紹介をしようとすると、この本読んだのに、中身全然覚えてないな…ということが浮き彫りになりました。汗
人に説明出来るくらいに読み込むと自分の身にもなるので、また良い本がよめたら紹介出来たらなと思います。
書籍に書いてあることを自分のコンテキストに直接当てはめることは難しいですが、読んだエッセンスを実行しながらチューニングしていくことで、より自分の知識として定着すると思います。そのため、できるところから参考にしていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました!