予想どおりに不合理/ダン・アリエリー
「ところが、本書でこれから見ていくように、わたしたちはふつうの経済理論が想定するより、はるかに合理性を欠いている。そのうえ、わたしたちの不合理な行動はでたらめでも無分別でもない。規則性があって、何度も繰り返してしまうため、予想もできる。だとすれば、普通の経済学を修正し、未検証の心理学という状態(推論や、考察や、何より重要な実証的な研究による検証に堪えないことが多い)から抜けだすのが賢明ではないだろうか。これこそまさに、行動経済学という新しい分野であり、その小さな一端を担う本書の目指すところだ。」(p.23)
「人は持てば持つほどいっそう欲しくなる。唯一の解決策は、相対性の連鎖を断つことだ。」(p.53)
「ソクラテスは、吟味されない人生は生きる価値がないと言った。わたしたちもそろそろ、自分の人生における刷り込みやアンカーをよくよく検討していいころだ。その刷り込みやアンカーがかつては非常に妥当なものだったとしても、いまもそうとはかぎらない。ひとたび昔の決断を考えなおせば、新しい決断に、そして新しい一日の新しいチャンスに気持ちを向けられるようになる。」(p.86)
「ステレオタイプに関する研究によると、あるグループの人たちについてステレオタイプを抱くと、こちらの反応が変わるだけでなく、ステレオタイプ化された人たちのほうも、押しつけられたレッテルに気づけば反応が変わる(心理学のことばで言うと、レッテルに「プライミング」される)。」(p.301.302)
「だが考えてみれば、時間はあらゆる傷をいやしてくれる。時間のありがたい働きのひとつは、過去を忘れさせてくれるか、自分自身を美化できるような形にゆがめて記憶させてくれることだ。」(p.311)