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「心の音」に耳をすませたから
こんにちは、鈴木ヘレンです。
みなさん、自分の「心の音」は聞こえていますか?「心の音」って何?そんな風に思った方もいらっしゃるかと思います。「心の音」は自身の奥の奥にある、自分でも気がつかないくらいの小さな小さな「不安」や「願望」のこと。
心の音はすぐに荒れます。笑
荒れる前に心の音を聞いて、自分が癒されるなって思うものを持ったり、赴くままに旅に出たりするだけで、心は風もない凪いだ海のようになります。ただ、仕事や家庭のことで時間が矢のように過ぎていく日々では、いつの間にか心の音は聞こえなくなり、自分が何を考えていて、何に不安を持っているのかが分からなくなります。
先日我が家で起こった“歯が痛い騒動”をきっかけに、母親として、一人の悩み多き主婦としての「心の音」に耳をすませることができました。
歯が痛い騒動は年末が近づくある夜
仕事で主人がいない、ある夜。クリスマスが終わり、年が変わるまでのあのワクワク感が漂う世間。隣でうとうとと寝始めた息子が突如「歯が痛い」とシクシク泣き始めた。鈴木家では病気・怪我に関してはもっぱら看護師である主人の担当なので、主人がいない今の私には息子の「痛い」という言葉に右往左往するばかり…。
結局、その日は鎮痛剤を飲ませ、薬が効くまで布団の中で背中を撫で続け、夜を明かしました。次の日、仕事から帰ってきた主人に「おかえり」の次に「歯医者さん!!歯医者さんに連れて行かなきゃ!!」と慌てて伝え、二人で急いで歯医者さんを探しました。県内には数多く歯医者はあるはずなのに、年末で開いている歯医者さんがなかなか見つからない…電話をかけても、繋がらい…。そんなことが繰り返し起こり、諦めかけた時、1件の歯医者さんが見つかりました。
やっとの思いで探し当てた歯医者さんに息子を連れて行く。だが、息子は今まで歯医者という場所に踏み入れたことがない。ちゃんと口を開けていられるのだろうか。あの少し鼻の奥がツーンとする消毒液の匂いや器具、先生や歯科衛生士さんにここぞとばかり人見知りを発動させないか。歯医者に近づくにつれ、不安が大きくなっていく…。
くりかえしの練習
慣れない場所の、見たこともない歯医者のイスに一人で座れない息子は、私の側から離れられず、結局私が息子を膝に座らせたまま、イスを後ろに倒し、私のお腹の上で診察してもらう形での診察になった。診察の結果、息子の歯にはたくさんの虫歯があることがわかり、今後の永久歯への影響や虫歯の原因などを聞くと、息子をみているようで全然みれていなかったことをまざまざと感じ、自分に幻滅した。
ずぅーんと沈む気持ちとは逆に「今日初めての歯医者さんなのに、お母さんとイスにちゃんと座れてたし、口も大きく開けて欲しい時にちゃんと開けられたね!えらい!えらい!」と息子を褒め、子供の気持ちを優先し「子供が嫌がることはしない」「初めての歯医者で無理に治療したら、これから歯医者が嫌いになるから」と息子に合わせた治療方法で少しづつ「歯医者」に慣れる練習をしましょう、と方向性を導き出してくれた歯科医の先生の姿がありました。
歯科医によっては、一人でイスに座ることを強要させられることもあるだろう。先生の指示通り出来ない時は「親がちゃんとしてください!」と叱られることもあるだろう。本当は、私が子どもを叱りつけてでも一人でイスに座らせられない「親としての能力の低さ」を指摘されないかということが怖かったのです。
先生たちから「子どもがちゃんとできなくてもあなたのせいじゃないよ」と言われたような気がして、親の私の方が救われた気持ちになりました。
あれから、息子の「歯医者さんに慣れる会!」が毎週開催されています。週に1度、歯医者に行き、一人でイスに座れるようになる、器具を口に入れてみる、最後にイチゴ・ミカン・バナナの味がするフッ素を塗ってもらう。先生の言う「歯医者に慣れる練習」です。1回目より、2回目。2回目より、3回目の方が確実に息子の「慣れ」は加速しています。大人の私でも何事も練習なしの「いきなり本番」より、何度も練習を重ねて「慣れた」方が絶対に成功率が上がる。そういうことを最近ようやく理解したところです。
息子が息子でいられる場所
ふと思い出すと、息子を連れて誰かに会うとき、「一人っ子だから…」と枕ことばのように言っている私がいました。息子がお友達とケンカして謝れない時、お菓子をお友達とわけれない時、言えないといけない言葉が息子から出ない。そんな時、誰かに指摘されるのが怖くて先回りして、私は自ら言い訳のように言っていました。子育てにおいて、息子が一人っ子だからとか、子供だからという言い訳がナンセンスだと潜在的に理解しているつもりでも、それでもやっぱり無意識に出てしまうのが正直なところ。だけど、できる・できないも含めて子どもの成長スピードはその子の個性で、その個性も愛くるしいのも事実。
9の段の掛け算、ローラーブレイド、補助輪を外した自転車に乗ること。子どもの頃にできなかったことは今でもはっきりと覚えている。できない自分が悔しくて、できる友達が羨ましくて、よく隠れて練習した。ローラーブレイドで転んで膝をすりむいた時の痛みは、ローラーブレイドを履きこなす男の子たちをテレビで見るとすぐに思い出す。
“できないこと”って、親が叱りつけて子どもに強制させてしまうと、子どもが窮屈になり、どこにもやれない感情から劣等感を持ち始めるのだと思う。だからこちらは、過度な強制はせず見守り、息子が息子でいられる場所をずっと大切に育てていたい。それが今、私自身に耳をすましたから聞こえた「心の音」。
転けずにローラーブレイドで家の周りをぐるぐる滑れたあの日、仕事から帰ってきた母が笑顔でギュッと抱きしめてくれた。
親子の関係って、きっとそれだけで充分なんだろうね
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