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大きく肥大する心の「好き」を伝えられる世界に
こんにちは、アートディレクター&フォトグラファーの鈴木ヘレンです。みなさん「好きなものは何ですか?」と問われた時、自信を持って「〇〇が好きです!」と答えることはできますか?
私はデザインや写真が好きです。小さな時から絵を描くことが好きで、小学校〜中学校の時に漫画を描いていました。当時は漫画を書いていることがなぜか恥ずかしく感じていて、家族が寝静まった頃を見計らい、真っ暗な自室の机のデスク照明だけつけて、コソコソ描いていました。大人になるにつれ絵だけでなく、広告をはじめとする"デザイン"に興味を持つようになり、グラフィックデザイナーという職業を知りました。写真も同様に、小さな時からフィルムカメラを相棒に「記憶を残す」作業として、撮影をしていました。当時はたまごっちがボディにあしらわれた35mmのコンパクトカメラや写ルンですを使用していて、撮りきった後のフィルムが巻き上がる音が楽しみで、巻き上げの時はワクワクしながらカメラに耳を傾けていました。
そして大人になった今、運よくデザインと写真を仕事にすることができました。が、正直。デザインを網羅した知識をベラベラ話するわけでもなく、カメラの機種の違いなんてものを語るわけでもない。「好きなもの」を仕事にしているのに、なんとなく大人になるにつれ、「好きなもの」を言うことに怖気ついてるところがあります。
自分の好きは錯覚なのかもしれない
思い出してみると、過去に何となく好きだと言ったものを他者に伝えたら「あれは知ってる?」「これは知っているよね?」と聞かれ、浅い知識しかなかった私は話ができず、ニコニコとだけして曖昧に相槌をうっていたことが発端だと思います。
好きだと言ったのに、話せない。
好きだと思っていたけれど、私より「好き」の熱量のある人がいるのだから私の「好き」は錯覚なのかもしれない。
と思い、「語ることができない好きなもの」は好きだと言う資格がないのだと心に蓋をしてしまいました。
また、大人になるにつれ、「〇〇が好き」と言うと「あなたは〇〇についてすごい情報量を持っているんだろう」「〇〇について聞いたら間違いないんだろう」と他者から情報提供の期待をされてしまうことにプレッシャーを感じ始めました。よく考えたら、使用方法も使用用途も三者三様なのだから、プレッシャーに感じることもなかったのですけれど、、、なぜか質問には全て正確に答えないと!と思う気持ちが強すぎて、答えられない自信のない「好き」はどんどん私の心の中でぐいぐいと奥底に押しこまれていきました。
好きの定義をみつめてみる
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私はデザインが好きだけど、その「好き」は、
・必要な情報やクリエイターが考え抜いたアイデア・知識が、媒体に合わせた範囲に心地よく収納されていることが好き。
・クライアントの要望に応えつつ、クリエイターの個性が出ているものが好き。
・紙の特徴を理解した上で行う印刷物が好き。
写真が好きだけど、
・そもそも撮影するだけでなく、写真を眺めるのも好き。
・瀬戸内の穏やかな景色を撮影するのが好き。
・女性がより魅力的になる撮影が好き。
・写真を使ってアルバムやZINEを作るのが好き。
だったりするように、好きの定義は「デザイン/写真全般」ではなく、よりもっと細分化された定義があるのです。
デザインや写真の他にもお花や文房具、ヴィンテージ家具、いい匂いのもの、bossa、コーヒー、紅茶、お酒、リネンや裾が長い服、旅、雑貨屋、喫茶店など。他にも「好き」ってたくさんあるけれど、本屋さんやネットの世界で、仕事と関わりがなくても自然と手が伸びたり、調べてしまうものって自分にとって苦ではないもの。苦ではないということは、十分自分にとって「好き」なこと。誰にも邪魔されず、あなたの好きにひたれる世界は、いつだってヒーローで、いつだってあなただけの心の拠り所。徐々に心の中で熱を持ち、大きく肥大していく心の中の「好き」を、みんなが堂々と「好き」と言える世界になればいいなぁと、思います。
「好き」は誰のものでもなく、あなたのものなのだから誰にどう思われようと、好きなままでいきましょう、ね。
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