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図書室の貸し出しカード
映画「Love Letter」と「耳をすませば」の共通点といえば図書室の貸し出しカード。
図書室や図書館で本を借りるたびに同じ人の名前を見つける経験したことある人ってどれくらいいるんだろう。
小学校の頃、休み時間の度に図書室に走り少年少女版推理小説シリーズを読みあさっていた。どの本を借りる時も”〇〇美鈴’さんという名前が貸し出しカードに常にあった。当時は美内すずえ先生のガラスの仮面の大全盛期で、美鈴さんという名前に美内先生の’美’という字と’すず’という音を結びつけて、それをたいそう美しい名前に感じていた。外見のイメージは姫川亜弓。意味不明の想像力とこじつけはさすが自称文学少女だなと10歳の自分を想像すると面白い。2学年上の人らしいとは聞いたけどその方の顔は知ることもなく、異性でもなかったのでそれがトキメキやアオハルに繋がるともなく。ただ彼女の名前と貸し出しカードの残像は記憶の中の良き思い出として今でも私の中にある。多分本好きの大人しい方だったのかもしれない。
図書室の貸し出しカードを小道具にしたLove Letterと耳をすませばを観た時にその経験を思い出して嬉しかった。考えてみれば本好き元図書館通いで同じ体験をしていた人は日本を飛び越えて世界中にいるに違いない。同じ経験してる人(まだ出会ったことないけど、普通に過ごしててこんな話は話題に出ない。)に出会ったら、あなたも?ってすごく親和性を感じられると思う。
今まで考えたこともなかったけど、なんの変哲もない私の名前も美鈴センパイの下に表記されて年下の読書好きの後輩の目に止まってたのだろう。特に突飛な想像のタネになれたとは思えないけどその子たちも絶対に親近感はわいてくれてたと思う。美鈴さんも存在するかわからない後輩も人生で同じ本を20冊以上読んでる人って(しかも物理的に同じ本を)もう無条件で通じ合えるに違いない。時代の波には逆らえないけど、図書室の貸し出しカードという小道具でこの経験をできる人がいなくなっていくのは寂しいな。
そんな人々の心に届いたからこそ、どちらの映画も世界的に大ヒットしたんだと思う。
先日、悲しいニュースが飛び込んできた。姫川亜弓級の美しさといったら私の年代では間違いなくその人は筆頭だったと思う。’推し’とかを超えたそこにいたスター。人となりは何も知らないけどやすらかに眠ってほしい。作品は図書カードの裏の似顔絵のように巡りつづけてこれからも誰かに届きつづけると思う。