差額ベッド代に泣く
今日までに、どのくらいの差額ベッド代を支払っただろうか?
最初の請求書は、救急車で運ばれたあの日からたった数日後に届いた。
病院ロゴの入った白い封筒が、薬置き場として使われていた2段の引き出しの付いた書類入れの中にしまわれていたので、わたしは全然気づかずにいて、支払いの督促を受けた。
えーーーーーっ!!!!!?????
そんなものがそんな引き出しの中に入っているって、わたしは知らないしーー。
大切な書類が行方不明にならないように…っていう配慮だと理解はできるけど、誰か教えてよーーーって、こころの底から思う。
中を開けると目が飛び出そうになる金額。
えーっと、こんなにするんですか? 手術って。
そして、なにより、差額ベッド代の高さに、わたしの目の玉は床にこぼれ落ちた。
そこらへんのビジホなんか比較にならなくて…この入院生活が1ヶ月、もっと?長ーく続いたら、それだけで、素敵な新車が買えるよね???
これから主人がちゃんと社会復帰して、これまでと同じお給料をもらえる確証があったなら、「仕方ないねー。こんなにひどい怪我をしたのに、命は助かったんだもん! これまで忙しかったんだから、身体を休めるために神様が与えてくれた休日なんだ…」だなんて、キレイゴトを並べて、「勉強させていただきました。このくらいですんでよかったよかった!」って、わたしも納得できる数字かもしれなかった。
いや、でも…。
わたしの中の誰かが、「それはあまりにも安易で自分勝手な妄想ではないですか?」と言ってのけた。
あまり気にしないようにしてきたけど、お金の工面のことが、わたしのこころのなかにおおきくのしかかった。
支払いが遅れて、窓口でもすったもんだしたので、その後、その白い封筒はキャビネットの扉に、まるでテレビドラマで見た「マチキン」で借金を払わない借金者の家の、玄関のドアに貼られた「金返せーーー!!」の張り紙のように、タオルや着替えを入れているキャビネットにセロハンテープで貼られることとなった。
いつの間にか誰かがそこに貼るようになった。
恥ずかしい。
情けない。
そこまでしなくてもいいんじゃない?
それをそこに貼らなくても。
それを見ては、主人はオロオロ泣いた。
いつものように号泣した。
わたしも、それを見て泣いたし、主人がこれからどうなるのか(あるいは、どうにもならないのか)が、これまで以上に気がかりになった。