高度救命救急センターへ運ばれる、とは
ほどなくして救急車が来た、と思う。電話で話しながら救急車が来るのを待ったのか、電話を切ってそわそわして待っていたのか、記憶がない。
サイレンの音が段々と近づてきて、我が家の前でピタッと鳴りやむ。部屋に慌ただしく救急隊員の方が入ってくる。
あらためてわたしは事情聴取されていて、横で救急隊員の方々が主人に何をしているのか見ることができない。聞こえてくる声もなんだか遠い。幼い娘は状況を理解できずに、場違いなほどはしゃいでいた。
「吐いてるぞ」
「タオル、もっとタオルないか?」
「動かせるか?」
病院から帰るときに裸に裸足では困るから着替えや靴を用意するよう言われた。でも、結局、使うことはなかった。
「奥さん、おそらくご主人は脳になんらかの傷害を負っていると思われます。ここから一番近い○○病院は高度な脳の治療ができる病院なんですが、そちらに向かってもいいでしょうか?」
混乱していたけれど、なぜ「○○病院へ行ってもいいか?」なんて聞かれるのか、不思議だった。どうしてそんなこと聞くんだろう、誰が何と言っても高度な治療ができる病院に絶対に行きたいし、それしかないのなら、いいもわるいもない。そう思った。
でも、救急隊員の方はわざわざ尋ねてくださったのだと思うのです。それを知るのはそのあとすぐのことでした。
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最後まで読んでくださってありがとうございます💗
まだまだ書き始めたばかりの初心者ですが、これからの歩みを見守っていただけるとはげみになります。