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朝の病院

朝が来た。こんな日でも朝はやって来る。
娘を保育園に預けて病院に向かう。
病院の待合はほの暗く静かで、私の足音で誰かを起こしてはいけないような気がした。朝の病院はこんなにも静かなんだ。

いくつかの手続きを経てICUに入ると、煌々と明るい部屋の中で、昨日と同じように主人は横たわっていた。色々な”管”を使って、かろうじて命がつなぎ留められているように見えた。
主人だと言われなければ誰だ分からないくらい顔が腫れあがっていて驚く。痛々しくて見ていられない。

大丈夫じゃないよね、この腫れ方は。

だらんと垂れた腕をさすったり、手を握ったりしながら「お父さん、起きてよ」と話しかけてみたけれど、応えはない。腕が動くことも、手を握り返すこともない。
でも、何度も何度も「お父さん」って話しかけずにはいられなかった。

看護師さんたちはみんな忙しそうで、話かけることができない。
ここはICUだものね、と言い聞かせて、どくんどくんと耳の中で大きく鳴る音をなんとか抑えようとしたけれど、もうどうにもならない。
でも、”実際のところどうなのか”を聞くのも怖かった。

駅まで迎えに行く時間が迫ってた。実家の父と母に会わせるのがつくづく嫌になった。


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最後まで読んでくださってありがとうございます💗 まだまだ書き始めたばかりの初心者ですが、これからの歩みを見守っていただけるとはげみになります。