監督の役割についてあれこれ考えながら、今年ダメだと言わ続けてきた関西勢の「ラストチャンス」に賭けてみたいと思った、というお話(11/10完全版)
(注意)急遽書き込みをしており、校正なしでアップしております。落ち着いたら校正し直して再掲示するかもしれません。完全版を読みたい方は、改めてアクセスしていただけると幸いです(初稿は11/9)
今シーズンも武蔵野は苦しいシーズンになっています。残留ラインギリギリの順位を行ったり来たりと、サポーターとしては昨年や2021年のようなちょっとしんどい状態が続いています。
「そういや、最近勝ち試合っていつ見たかな?」と思って調べてみたら、実は3月のホーム開幕戦以降見てないことに気づいたんです、まじか〜(笑)まあ23試合中6試合しか行けてないうえ、今年まだ4勝しかしていないことを考えるとしかたないとは思うんですけどね…。ということで今年7試合目となる、首位高知ユナイテッド戦をみるために、久しぶりにムサリクに行ってきました。
10/12 JFL@武蔵野市立陸上競技場 横河武蔵野FC 1-0 高知ユナイテッドSC
武蔵野ですが、世間的にはあまりそう感じないかもしれませんが(笑)実は調子は上向きです!シーズン途中での監督交代という、この時期にフロントがなかなかレアな判断を下した結果かどうかは別にして、5月6月ほどの悲観的な状況ではなくなりつつあると思っています。逆に開幕から首位を走っていた高知ユナイテッドは、調子が下降気味です。とうとう2位の栃木シティFCと勝ち点1差にまできてしまいました。この日の試合結果如何では首位が入れ替わるかもしれない、という大事な一戦。
そんな大事な試合ですが、前半はものすごく見せ場の少ない内容でした。高知はサイドからの攻撃がほとんどで、それをしっかり抑えに行った武蔵野の前に攻撃が滞っていました。しかし、武蔵野も相手の攻撃を凌ぐだけになっていて効果的な攻撃が出来ませんでした。しかも、20分過ぎに足に違和感を覚えた中川の交代準備の間に、今度は同じDFの鳥居が負傷。24分に同時に2人の負傷交代というカードを切るという緊急事態が発生(しかもDFのサブが足りないため、急遽ボランチの金田を最終ラインに起用するという、まさに緊急事態でした)。もはや先制点どころか、まずは失点しないことが重要な試合展開に。前半は互いに山場のない内容で終わりそうと思っていた、そんな矢先の42分。相手エリア内の深い、ゴールラインギリギリの位置から澤野が背中越しに折り返したボールが、そのままゴールに吸い込まれるように入って、武蔵野があっけなく先制します。今年怪我がちだった澤野は、これが今シーズンの初ゴール。得点感覚を持ってる選手はやっぱ違うね〜、などと思わされた前半でした。
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こういうのが決まらないのは、調子が悪いせいですかね?
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怪我した鳥居に変わって準備をする金田。
武蔵野は前半24分にDFを2枚変える緊急事態に…
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澤野の折り返したボールが…
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思わぬ形で武蔵野が先制しました。
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後半、1点ビハインドの高知は何としてでも追いつかないといけない中、それでもやはり攻撃がうまく噛み合いません。60分には前線をなんと4枚総替えして局面を打開しようとします。しかし武蔵野に、逆にカウンターから川戸に決定機を作られますが、ここはキーパー大杉のセーブでなんとか凌ぎます。攻撃陣をガラッと変えたものの、その後も効果的な攻めが出来ずにそのまま試合終了。首位高知ユナイテッドにとっては、下位チーム相手に痛い黒星。さらに2位の栃木シティがミネベアミツミに勝利したことで、開幕当初から維持してきた首位の座を明け渡してしまいました。勝った武蔵野は3試合負けなし、入替戦圏内の16位ミネベアミツミと勝点6差となり、残留争いで1歩抜け出した形になりました。
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必死に反撃を試みますが…
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それでもなんとか抜けようとしますが…
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とにかく高知は決め手に欠いた印象でした。
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要所で見せたカウンターが冴えていました。
この日感じたのは、高知の選手の動きの硬さと戦術的な行き詰まりでした。
シーズン開幕から怒涛の7連勝に始まり、とにかく前半戦はほとんど負けていません。そんな、開幕からほぼ独走状態だった高知ユナイテッドに待っていたのは、高知県全体からの多大な期待でした。高知ユナイテッドの観客動員数はリーグでも中位くらいと決して多くはありません。ホームの春野総合運動公園もアクセスは悪く、今年の前半戦も思うように観客動員数が伸びませんでした。そんな高知に待っていたのは、去年から再び盛り込まれたJ3参入要件に1試合平均入場者数2000人以上の規定に加え、以前にはなかった年間入場収入1000万円以上という規定も追加されるという「成績以外の昇格要件」でした。つまり、いくら入場者数が多かったとしても、例えば招待券をばら撒いたり、小中学生全試合無料とかにしたりとか、あるいはサッカーに限らずプロスポーツチームのユニフォーム着用で無料招待したりしても、今年からはJ3には行けないのです(笑)。ということで、高知ユナイテッドにとって「観客を増やすことこそがJリーグへの近道」と言わんばかりにクラブやスポンサー、さらには高知県まで乗り出して、高知ユナイテッドを全面支援するようになりました。
しかし、それがかえってチームの調子を落とす要因の一つになったのではないかと思います。そもそも前期にあれだけ走られてしまうと、他のチームは当然ながら分析して対策を取ってきますが、それに対して高知はあまりにも無策だったように思えます。特に夏場の1ヶ月の中断明け後は武蔵野戦を含めて1勝4敗2分、しかも勝ったのは最下位のミネベアミツミ戦のみ。昇格争いのライバルであるレイラック滋賀にドロー、栃木シティとヴェルスパ大分には負けとどんどん差を詰められる結果となりました。さらに、戦術的な行き詰まりに加えてさまざまな人たちからの期待という「重荷」を背負ってプレーすることはキャリアの浅い、あるいは今までノープレッシャーだったチームには想像以上にプレッシャーとなって現れたように思えます。
それがよく分かるのは、今年の高知ユナイテッドは武蔵野戦までの24試合中、先制した試合15試合全て負けてません(13勝2分)が、逆に先制された8試合の勝率は25%(2勝6敗)と大きく負け越しています。しかも勝った試合も7節のHonda FC戦(5分に失点、前半のうちに逆転)と11節のミネベアミツミ戦(38分に失点、前半に追いつき、後半勝ち越されるも88分に追いつき90+1分に逆転)と、調子の良かった前半戦の2試合のみ。逆に中断明けの7試合では先制した試合(3試合)より、先制された試合(4試合)の方が多いうえに、先制した試合も2試合は追いつかれてドローに持ち込むのがやっとの状態です。調子の良かった前半戦のように、追いつかれても勝ち越すだけのパワーが残ってないことがよく分かります。おそらく先制しても追いつかれた時点で、または先制された時点でチーム全体が受けに回ってしまい、選手が総じて若いチームなだけに「追いつかない」と必死になればなるほどどんどん空回りしていく、その結果が今のチームの状況ではないでしょうか。
長期戦のリーグ戦において、戦術的なオプションがないのは非常に致命的な戦術的欠陥と思うのです。同じことを何試合もやっていると、徐々に相手やライバルから研究されるのは当然なのですが、どうもその意識が欠落しつつあるように感じるのです。そんな中、オプションというかプランBを最後の最後の局面で出してきた、そんなチームを久しぶりに見たので、次はそんなお話です。
9/28 関西リーグDivision1@桃源郷運動公園陸上競技場 アルテリーヴォ和歌山 1-1 飛鳥FC
実はこの試合、当初は9/1に開催される予定でした。しかしその日、史上稀なる大迷走となった台風10号の影響で関西リーグ全試合が中止、延期となりました。そのため、当初のリーグ最終節終了後の9/28の週と10/12の週に延期試合が開催されました。
実は今年の関西リーグDivision1の優勝争い、非常に混戦となりました。3連覇を狙うアルテリーヴォ和歌山が中盤以降に失速、その代わりに後半じわじわと巻き返してきたのが、しばらくの間2位にいたCento Cuore HARIMA、ではなくさらにその下にいた飛鳥FCでした。じわじわと順位を上げてきた飛鳥FCは、延期となった第11節直前の第10節までに勝点1差の2位にまで詰め寄ります。そしてFC飛鳥が第12節に勝利。その節、守山侍2000に1-2で負けたアルテリーヴォ和歌山に代わってとうとう首位に立ちます。その時点では実は3位のCento Cuore HARIMAにも逆転優勝の目はありました(勝点3差)。そんな大混戦の最終盤となった第13節、優勝争いの直接対決となるアルテリーヴォ和歌山vsCento Cuore HARIMAはドロー。しかし飛鳥FCもお付き合いするようにドローで差は変わらず。そして迎えた第14節、2位のアルテリーヴォ和歌山は降格圏内だった7位のレイジェンド滋賀と痛恨のドロー。その節1位だった飛鳥FCが勝利したことで勝点差が4となり、この時点でアルテリーヴォ和歌山の優勝がなくなりました。優勝の可能性があるのは飛鳥FCと、この日も勝ったCento Cuore HARIMAの2チーム。そのうち自力優勝の可能性があるのは飛鳥FCだけ、ということになりました。
そうして迎えたこの試合。飛鳥FCはホームで負けたアルテリーヴォ和歌山とのアウェイ戦。最後の最後に正念場を迎えることになりました。対するアルテリーヴォ和歌山も、優勝はなくなったものの全社での復活に期するためにもこの試合は負けられない、そんな思いで臨む一戦でした。その思いの通り、開始10分に和歌山は山瀬のゴールで幸先よく先制します。
序盤から、勝つか引き分けで優勝というプレッシャーからか、飛鳥の選手の動きの硬さが目立ちます。普段なら難なく上げているであろう単純なクロスでさえ、ミスキックになりゴールラインを割ったりするくらい、明らかに動きがおかしかったです。そこをもっと上手く突くことが出来れば、和歌山も前半の間にもう1点2点と取れたでしょうが、それが出来ないところが今年の和歌山が勝ちきれなかった最大の要因かもしれません。前半は和歌山がリードで終わりましたが、全体的には低調な内容でした。
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真ん中から放ったシュート気味のヘッドに…
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しかしこの日の和歌山、来季を見越してなのか、いつもとメンバーを大きく入れ替えたスタメンで臨み、さらに後半開始からは先制ゴールの山瀬とエース北野をベンチに下げてしまいます。これが結果的には勝負を分けることになります。前線の起点を失った和歌山は前半以上に攻め手に行き詰まります。それを見た飛鳥ベンチは、後半の早い時間から普段はあまりやらないであろう、後方からのロングボールを放り込みを多用していきます。サイドからの崩しと後方からのロングボールという、全く異なった攻撃に和歌山DFは徐々に対応が難しくなっていきます。そして67分、飛鳥は今年和歌山から移籍してきた堀野が待望の同点ゴールを決めて、飛鳥が同点に追いつきます。
このままでは目の前で優勝を決められてします和歌山ですが、攻撃の起点のない状態ではすでに勝ち越すだけのパワーは残っていませんでした。もはや同点に持ち込むのが精一杯。また、追いついた飛鳥も勝ち越したいと必死に攻め込みしたが、和歌山DFの意地の前にゴールを割ることはできず、そのまま1-1で終了。勝点1を積み上げた飛鳥FCが混戦の関西リーグDivision1を制して初優勝。11月からの地域CL出場を決めました。
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粘り強いサッカーを貫いた飛鳥FCが初優勝!
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この試合の壮絶さを物語っているようでした。
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シーズン通じて安定した戦いを見せた結果でしょう。
この試合で特に目を引いたのは、やはり後半の飛鳥FCの戦い方です。前半の失点でビハインドとなった後半、思い切って自分たちのサッカーではなく「1点を取るため」の戦術に切り替えました。とにかく前線へどんどんボールを放り込むことで、相手の守備を混乱させよう。ラインが下がってきたら、今度は遠目からでもミドルシュートを打っていこう。中盤にスペースができれば、サイドの選手も中に切り込むこともできるし、そうすれば今度は外のスペースも空いてくる。とにかく、相手の動きを混乱させることでチャンスを見出そうとしていました。
そうすることで得たCKから取った同点ゴール。しかも決めたのは、和歌山時代に海津監督のサッカーにあまりフィットしなかった、がむしゃらに頑張るプレースタイルの堀野でした。そうです、実は飛鳥FCには他の関西リーグのチームから移籍してきた選手が多く活躍しています。
アルテリーヴォ和歌山からは堀野の他に、大倉と篠原。レイジェンド滋賀からは攻撃の核だった樽井と永尾、キーパーの中野と「プチ関西リーグ選抜」といったメンツが並びます。さらに攻撃の中心を担う7番の清川は、おこしやす京都から来た今シーズン2年目の選手です。彼はややプレーが荒かったり、ファールを貰いに行こうとするプレーなどが見られ、監督としては扱いづらい選手のような印象ですがが、そうした「型を破る」ことをやってくるので、相手からすると非常に嫌なタイプの選手です。
関西リーグ移籍組以外にも、サイドバックの小笹やその前に位置する井口も、単に縦に走るだけのサイドではなく、中にも入って勝負にしにくい自由自在なドリブラーです。清川同様、こういう変わり種な選手は監督によってはあまり使いたくないと思われる選手です。そういう選手を1年通じて使い続けた美濃部監督の懐の広さというか、監督としての能力の高さというか、そういうものを感じました。
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彼の経験が地域CLに生かされることでしょう。
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地域CLでも、曲者としての活躍が期待されます。
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そもそも「監督」とは何なのか?
と、ここまで書いていて素朴で大きな疑問が湧いてきたのです。それは「監督とはどういうものなのか?」「どういう監督が名監督なのか?」というものです。それを考える前に、まずは「監督」という言葉について検証していきましょう。
まず、監督という言葉の意味を辞書で調べてみました。すると、
①指図をしたり見張ったりして取り締まりをすること。また、その人のこと。
②特に映画や舞台、運動競技などの指導や工事現場などの取り締まりをする役の人。
③法律で、ある人または機関が、他の人または機関の行為を、不法、不利に陥らせないように監視、検査をすること。
とありました。スポーツの監督という点ではおそらく②が適切でしょう。取り締まりというのはちょっと違う気がしますが、監督=指導ということになるのでしょうか。
次に、英語ではどういう意味になるかを見てみましょう。
director:「指導者・指揮者」「管理者・取締役」特に映画や舞台の分野で「監督」「演出家」として用いられる。
supervisor:職場やプロジェクトなどの指導監督を司る。「監督者」「上司」とも訳される。
coach:球技やスポーツの指揮・指導する立場の人。「指導者」「指導員」。
manager:組織やプロジェクトの管理・運営を担う立場の人。「業務の監督」や「メンバーの監督」も含まれる。日本語では「監督」という訳語を用いないことが多い。ただ、プロスポーツチームの監督の意味で用いられることが多い。その場合、指導よりも指揮・支配・采配・興行も含めた総合的な意味を持つ。
この他にも「overseer(現場監督)」などいろいろありますが、スポーツの監督という意味ではこの4つくらいが妥当ではないでしょうか。バスケットボールでは監督のことを「head coach」と表現しますが、プロスポーツの監督の意訳として「指導」がメインの訳語を用いるのには、個人的にはやや違和感を覚えます。プロである以上、監督の役割は「指導」という側面よりもどちらかというと「采配」や「選手やチームの管理」が主体となるかと思うのです。そうすると「coach」よりもむしろ「manager」の方がよりしっくりくるのではないでしょうか。
日本のサッカー界で長年課題とされていた、国内の指導者不足は近年では解消されつつあります。若くて能力の高い指導者がどんどん出てきて、カテゴリーや年代に関わらずどんどん活躍するようになってきました。しかし「coach」、つまり指導者と言われる人たちはどんどん増えている一方で、指導からチームや選手の管理や、試合の采配まで全部司れる「manager」、つまり監督と呼ばれる人たちはあまり増えていないように思うのです。
また、一般的に監督の采配は経験値がものをいうという考え方もあります。選手の起用方であったり、交代のカードやタイミング、試合の流れを読んで戦術を変更したりする、そんな重要な判断まで下さないといけない監督という立場は、確かに経験値がものを言うシーンが多くなると思われます。
最近の監督は、全体的に「指導」メインの監督が多いように思います。試合中も戦術に重きを置くが故に、試合のマネジメントが上手くない監督が増えてきたように感じるのです。また、監督から言われた戦術を遂行することが得意な選手も多いように思えます。Jリーグ発足以来、日本のサッカー界ではコーチングライセンス制度が整備され、サッカーの指導レベルが著しく向上しました。それに伴い、日本のサッカーレベルも一気に向上しました。かつては国内で活躍してから海外移籍というのが主流だったのが、今では20代前半や育成年代から海外に渡って、さらに活躍する選手も出てきました。プレイヤーのレベルはここ30年で飛躍的に向上し、世界に追いつきつつあります。
しかし監督に目を移すと、海外のレベルなに追いつく、あるいはそれに近づいているかと言われると、まだまだではないでしょうか。特に戦術変更などの試合のマネジメントやコントロールといった、試合の中で監督に求められる能力においては、海外の監督の方が優れているケースが多いです。JFAも海外、特にアジア中心に指導者を派遣して経験値を高めようとはしていますが、それでもなかなか難しいようです。そう考えると日本代表の森保監督は、戦術ばかりの頭でっかちではなく試合のマネジメントにも長けた、日本人監督としては稀に見る優秀な監督ではないかと個人的にそう思っています。まあ、代表監督はひとつの戦術の理解度を高めるだけの時間が取れないので、どうしてもマネジメント重視にならざるを得ないですよね…
では、「coach」と「manager」。どちらがいいの?
と、一通り「監督」の一般理論化を行った上で、今回取り上げた2試合4チームの監督を分類していきます。まず、飛鳥FCの美濃部監督は明らかにマネジメント型の「manager」タイプでしょう。対するアルテリーヴォ和歌山の海津監督は元学校の先生ということで、指導中心の「coach」タイプでしょう。高知ユナイテッドの吉本監督ですが、見た感じだと戦術の手数の少なさの原因が、単に選手の駒不足なのか否かが分からないので一概には決められませんが、少なくともゲームマネジメントが得意とは思えませんでしたのでおそらく「coach」タイプでしょう。そして横河武蔵野の池上監督ですが、3年前の2021年のシーズン途中での監督就任に続いて、今年もシーズン途中からの監督就任。3年前は危機的状況にあった東京武蔵野ユナイテッドを、戦力補強もほぼないにも関わらずチームの状態を上向きにさせてJFL残留させたその手腕は、まさにチームマネジメントの力だったと思います。そして今年もその手腕を買われての再登板となったのですが、就任後は彼のチームマネジメントのおかげでようやく勝てるようになってきました。ということから、おそらく典型的な「manager」タイプの指揮官ではないかと思います。
しかし、マネジメントの力で勝てるようになったはずの横河武蔵野ですが、この試合以降勝てなくなってしまいました(11/6時点)。たしかにレイラック滋賀、ヴェルスパ大分、ヴィアティン三重と上位でなおかつ、J3を目指すチームとの対戦だったとはいえ、少なくともヴェルスパ大分戦の後半の出来を見ると、上手くやれば勝てたかもしれないという試合でした(現地で見た感想)。
選手のモチベーションを保ったり高めたりすることや、各個人のコンディションの見極め、さらに試合中の戦術のコントロールなど、ゲームマネジメントは多岐にわたります。それらが全て上手く運ばなければいい試合は出来ないですし、どれか一つでも欠けると途端にゲームが台無しになってしまいます。マネジメント型の指揮官はそれらをしっかりと見極めた上で、適切な判断が求められます。外から見ている以上に微妙なバランスの上に成り立っていると言えるでしょう。
勝負の世界である以上は勝つことが最重要ですし、また相手がいる以上は自分たちの思う通りにことが進まない事もしっかり認識しておかないといけません。勝つためには戦術を高める、深める事も重要ですが、その戦術が立ち行かなくなった時にどうやって打破するかのプランがないと、相手の思うままにやられてしまいます。長いリーグ戦であればそういう試合の一つや二つあってもさほど問題ないでしょうが、リーグの最終盤やトーナメント、あるいはもうすぐ始まる地域CLのような短期決戦では、相手の思うままにやられては勝てません。相手との実力差が小さければ小さいほど、ほんの些細なことで勝敗が一気に入れ替わる恐ろしい世界。決め事だけに囚われていては、得られるものも得られないという最悪の事態を招きます。ゲームマネジメントは育成年代ではない、プロの監督に求められる能力として特に欠かせないものと言えるでしょう。
かと言って、戦術指導を怠っても構わないということではありません。それも大切な能力です。しかしどちらかだけに優れていたとしても、必ずしも評価されるものでもありません。やっぱり、結果が全ての世界なのです。
地域リーグやJFLで複数の優秀な指導者を呼べるかと言えば…
采配を振るう監督と、戦術指導を行うコーチ。Jのような資金力のあるクラブであれば、戦術指導に長けたコーチとゲームマネジメントに長けた監督がセットで組む事も出来ますが、それより下のカテゴリーになると資金的にもそこまで人員を割く事は難しいです。一番いいのは戦術指導にも長け、采配も抜かりない監督ですが、そんなスーパーマンのような人材は現状の日本国内でも数えるほどしかいないでしょう(数えるほどもいるのか?という疑問も…)。どちらかに特化しないと難しいのが現実です。そうなると、まずは今いる選手のレベルを高めてチーム力を上げることが先決となり、指導者タイプの監督が好まれるのかな?と感じますし、その中でマネジメントもそこそこ上手そうな監督となると過去に実績のある人に白羽の矢が当たるのでしょう。アルテリーヴォ和歌山の海津監督などはまさにそうです。海津監督はヴィアティン三重を東海リーグからJFLに昇格させた実績があります。その実績を買われてアルテリーヴォ和歌山の監督に就任したのでしょう。
海津監督は元々、三重県の強豪校暁学園の監督を長年務めれおられました。前述にもありますが、元々学校の先生なので、典型的な指導者タイプです。Jリーグから声の掛かる選手ならともかく、そうでない選手の場合はサッカーの基本がしっかり身についていないことも多く、それらの選手のレベルを上げようと思うと細かい指導をしないといけません。また、そういうチームにマネジメントに長けた監督が来たとしても、おそらく選手が監督の指示に対応できないことも大いに予想されます。いくら監督があれこれ策を打っても、それを体現できないのでは勝ち負けは愚か、サッカーにすらならないことも充分考えられます。まだまだ、そんな高度なレベルのチームではないということです。
でも選手のレベルが上がり、カテゴリーも上に行くにつれて選手のレベルだけで勝負できなくなります。そうなると今度はチーム戦術での勝負となります。指導タイプの監督の中でも、戦術を叩き込むのに長けている人も多くいますし、そういう監督であればカテゴリーのレベルが上がってもまだ太刀打ち出来るでしょう。でも、それにもやはり限界があって、一つの戦術にだけ特化していては相手から研究されて封じ込められてしまいます。そんな行き詰まった状態で、それを打破できるか。それが次のステップに上がれるかどうかのカギとなります。そういた時に必要なのが、まさにマネジメントタイプの監督だと思うのです。特に今年のアルテリーヴォ和歌山の試合は、海津監督の手詰まり感が試合に現れていたように思えました。前線に絶対的エースの北野を置いて、彼にボールを集めることに全集中した、そんなサッカーだったように私には見えました。そして、それが上手くいかないと途端に攻撃が立ち行かなくなり、攻撃が停滞します。いくら北野が絶対的エースだったとしても、メッシのように相手DFを実力で圧倒するくらいのレベルであればなんとかなるでしょうが、似たようなレベルだと対策を講じられたら簡単に相手に封じ込められてしまします。そこで打つ「次の一手」が残念ながら今年の和歌山、いや、それ以前の和歌山にもなかったのです。それがアルテリーヴォ和歌山がたとえ関西で勝ったとしても、全国では全く勝てなかった。いや、少なくとも地域CLでは勝てなかった要因の一つだと思うのです。
今年初めて地域CLにチャレンジする飛鳥FCについて…
そして今年、そのアルテリーヴォ和歌山に代わり関西リーグを制した飛鳥FC。監督は前述の美濃部監督です。Jリーグの徳島や長野などで采配を振るい、各チームを強くしてきた実績があります。しかも単にチームを強くしただけでなく、ゲームマネジメントを含むチーム全体のマネジメントにも長ける監督ではないかと思います。さらに、コーチには美濃部直彦監督の息子である美濃部寛貴コーチが同じタイミングでコーチに就任しています。地域リーグのクラブで親子で指揮を取るというのは、かなりレアケースではないでしょうか。でも、それだからこそ役割分担がきっちりとしていて、息子である寛貴コーチが戦術などを選手たちにしっかりとレクチャーをし、選手交代やその日の戦術や戦術変更など、試合の全ては父親である直彦監督が責任を持ってコントロールする。実の親子なので、互いに何を考えてるのかも他人同士よりもより理解し合えているので、見事に役割分担が出来ていると言えるのではないでしょうか。これは地域CLを戦うにあたって、大きなアドバンテージになると思います。
そして、私が飛鳥FCの地域CL参戦に際して一番のアドバンテージと感じているのは、飛鳥FCのスタッフがかつてJFLの佐川印刷でチーム運営をされていたスタッフの方々が何人か携わっていることです。2002年の関西リーグで優勝、その年の地域決勝大会でも2位となり、さらにJFL15位の静岡産業大学との死闘のような入替戦を経てJFLに昇格。昇格後の2003年から2015年までの13年間、JFLで常に中位から上位をキープし続けてきた、あの佐川印刷サッカー部(最後の1年はSP京都SC)を支えてきたスタッフ陣が、飛鳥FCを裏で支えているのです。これは実に心強いと個人的にそう思っています。
他の関西リーグのサポーターや日頃から見ている人たちからは「今年の関西はアカンわ…」とネガティブなことをよく耳にしました。確かに今年の全社は開催地枠を含めた6チーム全部初戦敗退しました。明らかにレベルが低いようにも思えます。しかし私は、飛鳥FCなら「ワンチャンある」と信じています。チーム状態も上向きで、何よりケガ人がほぼいないというのも強みではないでしょうか。あとは選手が前向きになって最後まで頑張ること。ベンチは、試合のマネジメントをきっちり取り仕切ること。そして裏方のスタッフは、選手とコーチ陣が試合に臨みやすい環境を提供していくこと。それぞれがそれぞれの役割をしっかりこなしてくれれば、決して悪い結果にはならないと思います。もし今年、残念ながら1次ラウンド敗退、あるいは決勝ラウンドや入替戦で敗退したとしても、決して悲観することはありません。きっと必ず、今年の努力が実を結ぶ日が来るとそう信じています。
今、飛鳥FCは遠い茨城はひたちなかで地域CLの1次ラウンドを戦っている最中です。関東で盤石な戦いをしたVONDS市原、東北でぶっちぎりの優勝を決めたブランデュー弘前、全社から勝ち上がってきた勢いのあるFC刈谷という、強豪揃いのブロックに入ったと思います。ここを抜けるのは非常に困難でしょう。でも私は、飛鳥FCにも「ワンチャン」あると信じています。この3日間でその結果が出ます。それを見守ることしかできませんが、関西を代表して臨む飛鳥FCには、最後まで諦めずに戦ってもらいたいです。
追記:11/8のひたちなかでの1次ラウンド初戦を現地観戦してきました。
11/8 全国地域サッカーチャンピオンリーグ@ひたちなか市総合運動公園陸上競技場 飛鳥FC 3-2 ブランデュー弘前
11/8の金曜日。ひたちなか市総合運動公園陸上競技場で行われた東北1位のブランデュー弘前と飛鳥FCとの試合を見てきましたので、追記しておきます。
試合は序盤にCKからDF大倉のゴールで幸先よく飛鳥FCが先制しましたが、15分に一瞬の隙を突かれて弘前に同点ゴールを与えてしまいます。その後は一進一退の攻防が続きました。そのまま前半を終えるかな?という空気が漂った40分、再びCKから相手のクリアミスをこれまたDFの大原のヘッドがバウンドしてゴールを入るというラッキーなゴールで勝ち越し。そのまま前半を終えます。
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後半、攻勢に出る弘前に対して受けに回る時間帯が増えてきます。さらに、中盤を締めていた北田が足を攣り交代。弘前の攻撃がさらに強さを増してくる中、85分に弘前がとうとう同点に追いつきます。倒れ込む飛鳥のDFを見ながら「あ〜、さすがにこれで力尽きたかな…。とにかくドローに持っていってくれ!」とそう願った90+4分。直前の決定機でシュートを打てなく悔しがった清川が、最後のチャンスとばかりに放ったミドルシュートが、綺麗な直線を描いて決まり、飛鳥FCが劇的な勝利。短期決戦で一番重要と言われる初戦に勝点3を取ることができました。飛鳥FC、やっぱり何か「持って」ます!あと2戦、いやあと5戦。このまま突っ走ってもらいましょう!!
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CKをファーで成田が頭で合わせます。
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瀧上からのカウンター、中に走る清川へパス。
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ドリブルで進みながらタイミングを測って…
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今年の飛鳥FC、やはり何かしら「持ってます」!