東海地区で総理大臣杯をするならば、どこで出来そうかをかなり真剣に考察してみた

4月に入り、各地で大学サッカーが開幕する季節になりました。今年は昨年よりも観客を入れての開催が増えるのではないかと思っています、というかそう望んでいます…。
大学サッカーにおける大きなイベントと言えば3月のデンソーチャレンジ、8月末から9月にかけての総理大臣杯、そして12月のインカレです。コロナ禍1年目の一昨年は全部開催されず、代わりにatarimaeni CUPと称した代替大会が、2年目の昨年は全て開催されましたが、デンチャレは無観客開催。総理大臣杯は一部有観客、そしてインカレは全試合有観客開催でしたが、全て関東での開催となりました。例年関西で開催されていた総理大臣杯が関東開催となったのは、まあ状況からして仕方ないにしても、やや寂しい一年となってしまいました。
今年の総理大臣杯については詳細な情報はおろか、開催地や日程などの大まかな内容でさえもまだ発表されてません。「今年は関西開催に戻るんじゃないか?」「いや、関西は今年も有料開催をしないから、今年も関東開催になるんじゃないかな?」などと、いろんな憶測が飛び交っています。
そんな中、ここ数年の東海学連による試合やリーグ運営の質の高さを見て「そろそろ東海でも全国大会を運営できるんじゃないの?」と思ったりしてます。さすがにインカレは無理でしょうが、デンチャレか総理大臣杯ならなんとか開催可能なのではないか?と…。
そこで、実際に東海地区で総理大臣杯を開催することは可能なのか?ということを、現実的に開催可能と思われる会場をピックアップして検証してみようと思います。

まずは、総理大臣杯の基本的なデータから。近年の総理大臣杯の出場チームは全国から予選を勝ち上がった24チームによるトーナメント。1回戦、2回戦は各8試合づつ、以下準々決勝、準決勝、決勝。1、2回戦は4会場2試合づつ、準々決勝は2会場2試合づつ、準決勝、決勝は単独会場でかつ有料開催というのが大まかな流れとなります。3位決定戦は行いません。試合は90分で勝敗がつかない場合は、10分ハーフの延長戦。それでも勝敗がつかない場合はPK戦で次回進出チームを決定します。
例年の関西開催では、準決勝と決勝はヤンマースタジアム長居、もしくはキンチョウスタジアム、今のヨドコウスタジアム。それ以外はヤンマースタジアムとヤンマーフィールド長居、それに西京極とユニバー記念という、結構立派な会場を使っていました。一番最近の大会では無料開催の試合会場としてJグリーンや三木防災の球技場といったスタンドのない会場も使ってましたが、基本的にはスタンドのある会場で開催されることがほとんどです。
そして、開催会場としてスタンドよりももっと重要なのは「ナイトゲームが開催できる」ということです。開催時期が8月末から9月にかけての真夏。ありとあらゆる年代の公式戦でも、出来るだけ日中の試合は避けるようにというのが昨今の流れです。実際、過去の総理大臣杯でも2試合の場合、第一試合のキックオフは15:30、第二試合は18:00に設定されています。いくら日没が一番遅い時期とはいえ、さすがに第二試合は照明の下での試合となります。
つまり、もし東海地区で総理大臣杯を開催するのであれば「ナイトゲームが開催可能でかつ、スタンドのある会場」が最低4つは必要ということになります。では、今から実際の開催可能な会場を探してみようと思います。

「東海4県なら、そんなに会場にも困らないんじゃないの?」と思われるかと思いますが、実はそうでもないんです。4県といっても静岡と他の3県とは、ます移動という面で分けて考えないといけません。静岡市と名古屋市とでは約200km離れていて、短期間の大会としての移動距離にしてはやはり厳しいと思います。各チーム間で移動の負担がコンディションに大きく影響するということは避けたいので、いわゆる東海3県(愛知、岐阜、三重)+静岡県西部で会場を検討することにします。
まずは愛知県から。グランパスのホームスタジアムである豊田スタジアムと今は大規模改修中のパロマ瑞穂、いわゆる瑞穂陸上があります。さらに照明設備がある「スタジアム」(単なるピッチのみではない、ちゃんとスタンドがある会場)を探していくと、ウェーブスタジアム刈谷と名古屋市港サッカー場、それと瑞穂のラグビー場もまあ使えそうです。
隣の岐阜県はどうでしょうか。こちらもJ3FC岐阜のホームスタジアムの長良川競技場ともう一つ、長良川球技メドウの2つになります。
三重県だと、現状では照明設備のあるスタジアムは鈴鹿スポーツガーデンのみです。来シーズンからは東員町の朝日ガスエナジースタジアムにも照明設備が設けられます。いちおう、カウントしておきましょう。
最後は静岡県西部。磐田のホーム、ヤマハスタジアムとエコパの2つですね。
以上、現在使用可能なものが9ヶ所、最大で11ヶ所となります。意外と多い印象ですが、いざ総理大臣杯を行うとなった時、ネックとなるのはやはり使用料と実際にスケジュールを押さえられそうかどうかです。特に豊田スタジアムやエコパのような大きなスタジアムは必然的に使用料が高いですし、JチームのホームスタジアムはもちろんJリーグの日程が最優先となります。また、陸上競技場となると陸上の大会との兼ね合いも出てきます。それらとの日程調整も必要となります。そういったことも加味しながら、実際に「利用可能な」会場を探してみましょう。

まず、瑞穂ラグビー場と港サッカー場。実はどちらも同じ公益財団法人名古屋市教育スポーツ協会が運営しています。具体的に使用料を見ていきます。
第一試合のキックオフが15:30なので、設営は余裕を持って午前中から行いましょう。まあ、実際は普段から11:30キックオフでも、朝9時から設営をやっていることを考えると、午後から(13時〜)でも良さそうですけどね…。ま、朝から設営するとなると、利用時間は朝から夜間までの全日となります。瑞穂と港については9時から20時30分までの設定となっています。20時30分以降は時間外利用になるかと思います。それに照明設備の使用料を合わせた金額を計算していきます。
名古屋市教育スポーツ協会の会場使用料は同一で、全日使用の場合13万円。さらに有料開催の場合はその金額の1.5倍となります。
次に照明設備の使用料です。どこの会場も照明の使用に関しては照度を3段階くらいに設定しています。全灯、1/3、2/3といった感じです。まだ明るい夕方と日が落ちた夜とでは必要な照度も違いますから、目安として17:30〜18:00までは一番暗い設定、18:00〜19:00まではその次に暗い設定として、19:00から試合終了の目安として20:30までを全灯とします。それ以降の21時までは撤収作業なので一番暗い設定にしておきます。
その条件に、実際の使用料を当てはめましょう。照度は1/3灯が10分6000円、1/2灯が10分12000円、そして全灯が10分18000円なので、6000×30分+12000×60分+18000×90分+6000×30分=270000円となります。結構かかりますね…。実はこれは港サッカー場の場合で、瑞穂ラグビー場はちょっとだけ安めの設定ですが、その分照度が小さいのがネックです。実際に計算してみると、それでも157800円となります。
ということで、港サッカー場を使用する場合は無料開催の時は1日400000円、有料開催となると465000円。瑞穂ラグビー場でも無料だと287800円、有料だと352800円となります。瑞穂陸上については、同じ名古屋教育スポーツ協会の管轄なので、港サッカー場と同じくらいがもしくはそれ以上と考えていいかと思います。

では、他の会場も同じ要領で見ていきましょう。同じ愛知県内のウェーブスタジアム刈谷、FC刈谷のホームスタジアムです。刈谷の料金体制は利用者が刈谷市周辺在住かそれ以外か、また平日と土休日とで料金が変わります。ということで、他地区在住で平日と土休日との2種類計算してみます。ちなみにここは有料、無料問わず同一料金となっています。
まず平日開催の場合、全日(9〜21時)だと39600円。これにゴールなどの施設使用料が11000円を加えて、50600円。これに照明使用料が1/2灯30分3990円、3/4灯30分5280円、全灯30分6390円をそれぞれ計算すると、37710円が1日の照明設備使用料となるので、合計は50600+37710=88310円となります。さっきの港サッカー場とは比べ物にならないくらいリーズナブルですね(笑)。
土休日開催でも、会場使用料が39600円から49500円になるだけなので、98210円とやはり名古屋市内の2ヶ所と比べると明らかに安いですね。

刈谷市総合運動公園の公式HPより、施設利用料の一覧。この「碧海5市」ってどこ?となりますが、旧碧海郡の刈谷・安城・知立・高浜・碧海のことのようです。なんと、江戸時代からの行政区分のようです。歴史があるんですね…

続いて岐阜県内の長良川競技場と球技メドウ。どちらも同じ岐阜メモリアルセンターの施設となります。
FC岐阜のホームスタジアム、長良川競技場の全日使用料は無料開催の場合は48400円、有料開催の場合は145200円です。球技メドウの方は、無料開催が27550円、有料開催は82550円です。照明設備の使用料が、競技場の方は1/4灯が1時間3970円、1/2灯が9910円、全灯が17110円です。球技メドウはもう少し安く、1/3灯が1230円、2/3灯が2460円、全灯が3660円です。これらを全部足すと、長良川競技場は無料開催の場合、48400+48120=96520円、有料開催の場合は145200+48120=193320円。球技メドウは無料が27550+11510=39030円、有料でも82550+11510=94060円となります。メドウはもちろん、競技場でもこの金額ならまだ使えそうかな?と思いますね。
三重県の鈴鹿スポーツガーデンは使用料が1時間単位の計算になっているので、9時〜21時の12時間で計算します。1時間あたり無料の場合3660円、有料なら9900円なので無料開催の場合は43920円、有料開催の場合は119400円です。照明の使用料は1/3灯1時間3140円、1/2灯が4310円、全灯が9420円。照明設備使用料は合計で26690円。計算すると、無料開催の場合は70610円、有料開催の場合は146090円です。ただ、個人的には鈴鹿はアクセスの問題があるので、開催するにはやや難があるかな?とは思います。
まだ照明設備がないですが、いちおう東員町の朝日ガスエナジースタジアムも見ておきます。設定は9時〜17時までの全日しかなく、もちろん照明設備の使用料もまだないのですが、全日のフィールドスポーツとしての使用料は無料開催が50000円、有料開催はプロアマ問わず250000円という結構強気な設定となってます。まあ、スタンドの改修に加え照明灯の設置工事もしてるので、それくらいの金額を取らないの減価償却できないということでしょうね…。

東員町の公式HPにある朝日ガスエナジースタジアムこと、スポーツ公園陸上競技場の施設利用料。有料開催だとプロアマ問わず同一料金という、なかなかハードルの高い設定のように思えます。

最後に静岡県西部のスタジアム。まずはエコパから。エコパは使用するスタンドの規模によって料金が変わります。一番安い1階メインのみなら全日が105050円、メインとバックの1階のみだと146900円。照明は1/3灯1時間20900円、2/3灯が41850円、全灯だと62800円、ちなみに一番暗くのは2/15灯という200ルクスというのがありますが、サッカーに適した照度の目安が500ルクスなので、使えても撤収作業くらいでしょう。ということで、全部を計算していくと230600円となります。有料開催の場合は、入場収入の5%を使用料に加算なので、仮に1000円の入場料で1000人入ったらプラス50000円となります。

次にヤマハスタジアムですが、はっきりとした使用料が分からなかったのです。ですが、毎年Jリーグから出されている各チームの決算報告書からある程度は推測出来るのではないか?と思い、2019年度の資料を確認しました。すると、磐田はスタジアムの規模の割に実は掛かった試合関連経費が大きいことが判明。年間4億3500万円ほどでリーグ平均よりも高く、リーグでも6番目となってます。もちろんアマチュアとプロとでは使用料に大きな差があるのですが、それを差し引いてもかなりの額ではないかと推測されるので、この段階で除外しておきます。
ちなみに隣の名古屋と清水と比較しても清水の倍、名古屋の1.5倍近くかかっています。日本平はともかく、豊田スタジアムを使っている名古屋よりも高いというのはやはり、ヤマハスタジアムの使用料が高いと言っても間違いないでしょうね。

豊田スタジアムの名前が出てきたので、いちおう豊田スタジアムもどれくらい掛かるのか調べてみました。豊田スタジアムもエコパ同様、使用するスタンドの規模で料金が変わります。さらにそれに伴うコンコースの使用料も別途かかります。コンコースの使用料も取るとはちょっとビックリですね。では、計算していきましょう。使用するスタンドはメイン下とバック下の一番安い設定で81600円、コンコースは同じく一番安い1階コンコースのみで45900円。合計すると127500円となります。照明使用料については記載が無かったので確認が取れませんでしたが、必要であればエコパくらいの価格設定ではないのかな?と思います。ちなみに有料開催の場合はこの料金の2倍となります。さらに広告掲載料金も必要になるようです。午前午後までの使用ならもう少し安くなるので、そう考えるとエコパと豊田スタジアムも思ったよりはリーズナブルな価格設定のように感じますが…、どうでしょうか?

豊田市HPにある、豊田市都市公園使用料及び都市公園利用条例。実に細かく設定されています。

以上で全部出揃いました。
ということで、料金の安い順番に並べてみます。
メドウ 無料39090   有料94060
鈴鹿  無料70610   有料146090
刈谷  無料88310   有料88310
(土休日) 無料98210   有料98210
長良川 無料96520   有料193300
豊スタ 無料127500 有料255000(照明使用料不明)
エコパ 無料230600 有料 無料+入場収入×5%
瑞穂ラ 無料287800 有料352800
名市港 無料400000 有料465000
(参考)
朝日ス 無料50000   有料25000
こう見ると刈谷、メドウ、鈴鹿のリーズナブルさが際立ってる反面、意外にも港サッカー場の値段の高さが際立ちます。また、無料開催なら長良川もそんな人高くなく、エコパで高校サッカーの準決、決勝なら十分元が取れそうなこともなんとなく分かりますね。

では、全てのデータが揃ったのでようやく本題に。総理大臣杯を実際に開催するとなった時に、少しでも安く会場を押さえようとするならば、使用料の安い順番、つまりメドウ、鈴鹿、刈谷、長良川の4会場が最有力候補となりそうです。ただ長良川はJとの兼ね合いもあるので、まだ夜間と照明使用料の設定自体がない東員町の朝日ガスエナジースタジアムを使うということも想定しておきましょう。当然、設定がないので厳密な金額は出せませんが、夜間使用料だけならおおよその見当はつきそうです。というのも、ここの使用料は時間帯問わず1時間10000円に設定されているからです。なので、それで計算すると東員町は50000円+17時〜21時までの4時間×10000円=90000円+照明使用料ということになりそうです。さらに照明使用料も、長良川競技場があの規模で5万円程度なので同じくらいと想定すると、合計でおそらく140000円程度になるのではないでしょうか。うん、やっぱりちょっと高めですね…。ただ、長良川競技場が押さえられなかった時の代用ならば十分可能ではないでしょうか。
このメドウ、長良川、刈谷、鈴鹿の4会場か、もしくは長良川を朝日ガスエナジースタジアムに変えた4会場を無料開催の1、2回戦で使用し、準々決勝をメドウと刈谷、有料開催となる準決勝と決勝を長良川競技場で開催するのが、費用的に一番現実的ではないか思います。まあ決勝だけならエコパか豊スタを、ということも出来なくはないでしょうが…。と同時に、名古屋市内の港サッカー場と瑞穂の2施設が、普段からJFLなどであまり使用されない理由がなんとなく分かったような気がしますね。

今回、実際にスタジアムの使用料から全国大会を開催する大変さを見ていきましたが、これに加えて全国から来る選手の宿泊先の確保や短期とはいえ練習場の問題もあります。それを踏まえて個人的な感想としては、確かに高いハードルではあるもののクリアできないことはないかな?とは思いました。今年とは言わずとも、近い将来東海地区で総理大臣杯が開催されることになるといいですね。
大学サッカーに限らず、JFLや地域リーグ、あるいはJリーグの開催される会場がもし公共施設であれば、そのほぼ全ては使用料が広く公開されているはずです。興味のある方は一度調べてみるのもおもしろいかもしれませんね。試合をするのに実際どれくらい掛かるかが、なんとな〜く分かってくるかと思いますよ…



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