JFLってどれくらいお金が掛かるの?という漠然とした疑問を、大学のサッカー部という特殊な媒体を用いて適当に解いてみる実験
Jリーグの日程も発表され、JFLの開幕戦も正式に公表。なんとなく新たなシーズンが始まるのかな?というこの時期、前々から漠然と抱いていた疑問。よく「全国リーグはお金が掛かる」と言われてますが、どれくらい掛かるのかって意外と知らないですよね。Jリーグなら毎年、各チームの収支報告が公表されるのですぐに分かるのですが、JFLとなるとそういう数字はほぼ見かけません。唯一手掛かりとなるのが、現在J3に参戦しているYSCCがJFLに昇格した年に掛かった年間運営費が2800万円という報道が地元の新聞に載ったくらいです。10年ほど前の数字ですし、これがどれくらいのものなのかが全く想像がつかないのもまた事実です。
だったら、ざっくりでも計算してみよう!というのが今回の目的です。まずは掛かる費用として考えられるものを考えてみましょう。選手の人件費、試合運営費、アウェイの旅費、その他練習場所の確保や広報などではないでしょうか。でも人件費って変な話、お金掛けようと思えばいくらでも掛けられるし、逆にケチろうと思えばいくらでも削れる、そんな不確定要素の多い項目なので、話を簡単にするためにも排除したい。ということで、選手やスタッフの人件費を加味しなくていいあろう大学のサッカー部が仮にJFLに参戦したときに掛かるであろう費用を計算することで、JFLに掛かる最低限の費用を割り出してみることにします。
まずは今回の試算の前提となるチームの設定をします。大学は首都圏、もしくは関西圏か中京圏の比較的全国へ移動しやすいエリアにある、私立校で、全国大会の常連と言われるチームとします。部員は200人程度、トップの他に社会人チームがいつくかあって、そのうち1つがJFLに参戦するという設定にしておきます。
では、実際にさまざまな費用を計算していきましょう。
まずは実際に必要な経費の項目を、Jリーグのサイトに載っているJクラブの営業費用詳細という資料から今回の計算に必要なものをトリミングしてみます。
営業費用詳細にある経費項目は7項目あります。チーム人件費、試合関連経費、トップチーム運営経費、アカデミー運営経費、女子チーム運営経費、物販関連費、販売費及び一般管理費。このうち、チーム人件費は監督、スタッフ報酬はそもそもJFLチームがあろうとなかろうと必要なものなので、今回の試算では割愛します。そもそも、これを割愛するために「大学チーム」を設定したので、これを含めたら本末転倒ですね(笑)
次に、アカデミー運営経費と女子チーム運営経費も必要ありませんので割愛します。物販関連費と販売費及び一般管理費については規定が難しいので、とりあえずまずは絶対に必要な「試合関連経費」と「トップチーム運営経費」を計算してみることにします。
試合関連経費とは①スタジアム使用料②ホームゲーム警備・運営委託費③その他ホームゲーム運営費の3つです。そのうち②については、会場の設営や警備、運営ボランティアはベンチ外の選手や控え部員などで賄えるので、考えなくても問題ないかと思われますので、①と③について細かく考えてみることにします。
まず、①のスタジアム使用料ですが、年間30試合のホームアンドアウェーなので、ホームゲームは15試合。15試合あるのでメインで使う会場は出来るだけ安く抑えたい。使用料が比較的安く、スタンド付きでそれなりの設備のある陸上競技場を1日(9:00〜17:00)借りようとすると、おそらく15万円くらいあれば大丈夫でしょう。とはいえ全試合そこを借りられるとは限りません。もっと高い会場を借りないといけない場合も想定されます。ということで、1日15万円の会場を10試合、それより高い1日30万円程度の会場を残りの5試合で使うと仮定して、15万×10試合+30万×5試合=300万円となります。
これに放送室や放送機材、場内放送をしてもらう人、電光掲示板を使うとなれば、それに掛かる費用に加えてそれらを操作する人への人件費。さらには売店などを出してもらうのであれば、それに必要な機材の手配なども必要になります。それらの追加の費用をザッと1試合10万円程度用意しておきましょう。これが年間で10万円×15試合=150万円かかります。
さらにもう一つ忘れていけないのは、チケットや試合告知ポスターなどの印刷代。これは年間で100万円程度見ておけばおそらく足りるでしょう。これで250万円となります。
以上で考えられる数字が出揃いました。試合関連経費は①スタジアム使用料の300万円、③その他ホームゲーム運営費として250万円を合わせて550万円。かなりギリギリの数字ではないかと思うので、いちおう予備の費用を追加しておこうと思います。今後の計算がしやすいようにキリのいい、600万円を試合関連経費としておきます。
次にトップチーム運営経費。これに含まれるものは①移動旅費②合宿・キャンプ費③練習場・クラブハウス等賃貸料及び関連経費④その他トップチーム運営経費(仲介人手数料、消耗品、登録料、保険、反則金等)です。このうち②と③についてはサッカー部として掛かる費用に含まれるので、計算しないことにします。
ということで、まずは一番費用が掛かると思われる①の移動旅費を考えてみましょう。
多くのJFLチームの移動手段として用いられているのがバスです。もちろん、大学チームとなればかなりの距離の遠征をバスでこなす事が当たり前になってます。とはいえ、全国リーグとなると移動距離がハンパないこともあるので、全アウェイゲームをバスでとはいかないでしょう。また、強豪チームとなると自前で遠征バスを所有していることが多いので、バスでの遠征は自前のバスを使うことにします。これだけでもかなり経費が削れるのではないかと思います。まあ、運転手だけはバス会社の運転手にお願いするのがいいかと思うのです。相場がどんなもんかが分からないながら、1人1日10万くらい見ておけば大丈夫なのかな?と思います。これが長距離移動で2人体制になったり、2日跨ったりすることも見越して1回の遠征でドライバーへの人件費をざっくり15万円としておきます。それに加えて、ガソリン代と高速代などの経費を10万円程度上乗せして、1回の遠征で25万円掛かるとします。バスで移動出来る範囲での試合が全体の2/3あるとして、10試合で合計で250万円となります。
次に考えられる交通手段は新幹線移動です。バス移動の限界と思われる距離を東京〜岡山くらいと想定すると、東京〜福山がだいたい1万7千円くらい。新幹線以外にも乗り換えることを想定して、ザッと平均1人片道2万円程度掛かるとしましょう。JRなら団体割引が使えるので、実際はその8掛けくらいになるかと思われます。つまり2万円×80%=1万6千円の往復で3万2千円くらい。で、ベンチメンバー18人+バックアップメンバー+監督以下スタッフ合わせて、25人を一回の遠征メンバーとすると3万2千円×25人=80万円。
これに加えて、最寄りの駅から試合会場までの移動に使う経費が必要となります。会場までの移動手段はバスをチャーターするか、タクシーに分乗するかの2択になるでしょう。バスチャーターだとおそらく20万〜30万円くらいになるのではないでしょうか。そうなると、距離によってはタクシーの方が安くつくことも考えられますが、とりあえずここでは「ザッと」なのでバスをチャーターしましょう。ということで、1回の新幹線移動に掛かる費用は80万円に20万円のバスチャーター代をあわせて100万円としましょう。これが年間に3試合とすると合計で300万円となります。
バスでも新幹線でも行きづらい場所もあるかと思います。そんな所には飛行機で行くしかありません。ということで、残り2試合は飛行機での移動にしましょう。
飛行機移動だと、1人片道4万円〜5万円は掛かるでしょう。往復すれば10万円くらいかかります。25人分となると250万円かかります。さすがにキツイですよね。そこで、飛行機遠征に関しては旅行会社に合宿プランとかパックツアーを組んでもらいましょう。一般的な飛行機+ホテル代のパックツアーだと、航空会社の特割くらいの価格でホテル付きという格安なものになります。団体であればそれくらい、いやそれ以下の価格で対応してくれるかもしれません。ということでこれらを基に計算してすると、1人あたり4万円くらいでホテル付きの飛行機パックツアーを組んでもらうとして、25人で100万円。現地での移動はバスのチャーターで20万円程度。合わせて120万円。これが2回で合計240万円となります。ちなみに今回は、前泊後泊等のホテル宿泊は考えないことにします。夏場の試合も出来るだけ昼間に開催される、もしくはナイターでもそのままバスで帰るということにします、便宜上…。
これら3つの移動手段に掛かるであろう費用が出揃いました。バス移動の250万円+新幹線移動の300万円+飛行機移動の240万円=790万円。まあ誤差を含めてキリのいい800万円としましょう。
と、これで掛かる費用は全部かな?と思うかもしれませんが、実はまだ大切なものを忘れてます。それは、④の「その他トップチーム運営経費」に当てはまるユニフォームなどの用具にかかる費用です。
ユニフォームって、JFLに行くからって別に新調しなくてもいいんじゃね?と思う人もいるかと思いますが、JFLに参戦するチームの場合、袖にJFLのロゴマークを付ける必要があるのに加えて、新たにチームスポンサーを付けたりするとなると、どうしても新しいユニフォームを作る必要が出てくるのです。また、こういう機会でもないと新しいユニフォームを作るタイミングがないので、新調するチームが多いですね。
ということで、その流れに則ってユニフォームを新調するのに必要な費用も計算してみましょう。
ユニフォームの原価を探るには、Jチームが販売しているオーセンティックユニフォームが目安になるかと思います。どこのチームも価格は1万8千円〜2万円程度。どこのチームも法外な価格で販売しているとは思えないので、まあ原価的には背番号やスポンサーロゴのプリント代含めても1万5千円くらいと見ていいでしょう。それに加えてパンツやストッキングも一緒に新調する費用を加えて、ザッと1人1着2万円で作れるのではないでしょうか。
で、ユニフォームもファーストユニとセカンドユニ、チームによってはサードユニまで用意したりしてますが、サードユニはさすがにいらないでしょうから1人2種類、そしてそれぞれに着替え用と予備を合わせて1人に5枚づつ、計10枚用意することにします。1着2万円×5枚×2種類=20万円が1人当たりのユニフォーム代となります。
JFLの選手登録はだいたい30人程度だと思います。ただ、新入部員を2月の選手登録の時点でメンバーに入れることは難しいでしょうし、また学生リーグや他のカテゴリーのチームの選手との入れ替えを行う事で、サッカー部全体の活性化を図る必要があります。ということを考えて、30人分に加えて予備として20人程度のユニフォームも用意しておきましょう。
ということで、ユニフォームの新調に掛かる費用は1人20万円×50人分=1000万円となります。実は一番経費が掛かるのが、このユニフォーム代だったりするのかな?と思っております。これに、プラクティスシャツやその他のチームの備品代を加えます。プラクティスシャツが1着5千円程度として、1人5枚〜10枚程度として250万円とその他の備品代も加えてザッと300万円としましょう。これらを全部合わせると、ユニフォームやその他用具費は全部で1300万円となります。
最後にもう一つ。JFLに限らず、リーグ戦やトーナメントの運営に欠かせないもの、それはパンフレット。事実、JFLでも各チームにガイドブックと呼ばれるリーグのパンフレットと昨年度の公式記録集というものが割り当てられます。割り当てられると言ってますが、具体的に言うと「買わされます」(笑)。リーグ運営の必要経費なので各チームで出し合うのは当然なことだと思いますので、これを販売費及び一般管理費として計算してみましょう。
まずはどれくらい各チームに割り当てられるものなのかを考えてみます。学生や社会人のリーグやトーナメントの要項の中に、たまにパンフレット代についての記載を目にします。学生リーグでよく見る額は20万円、もしくは30万円です。1冊500円〜1000円がおおよその相場なので、割り当てとすれば500円とすれば400冊〜600冊、1000円なら200冊〜300冊程度。地域レベルでこの冊数なので、全国規模ならその5倍くらいは割り当てられてもおかしくないかと思われらます。ということで、パンフレット2500冊を割り当てれられるとして、JFLガイドブックの価格1000円×2500冊=250万円。公式記録集はそんなに割り当てられないと思うので、仮に50冊として1冊2500円×50冊=12万5千円となり、合わせると262万5千円。
その他、雑費としていくらか計上しておいた方がいいのと端数を整理するという意味で、販売費及び一般管理費を300万円とします。
以上で、JFL参戦する際に必要な経費が算出できたのではないでしょうか。ということで、全部を足していきます。試合関連経費が600万円、トップチーム運営経費のうち、移動旅費が800万円、その他運営経費というかユニフォームや用具代が1300万円。それに販売費及び一般管理費が300万円。あわせて3000万円となります。JFLへの加盟金である1000万円は、あくまでも別会計として(学校側が払ったなど)、今回の試算には含めないことにします。現実的には必要なお金ですので、参考にしていただければよろしいかと思います。
どうでしょうか、冒頭に書いたYSCCのJFL昇格初年度に掛かった年間経費の2800万円というのと比較しても、今回割り出した試算はかなりいい線なのではないでしょうか。もちろん今回の試算から削れるものを削っていけばもう少し額は抑えられるかとは思いますが、人件費がほぼ掛からず(サッカー以外を生業とする場合)や練習場を自前で所有している場合だと、JFLに参戦するには加盟金含めて最低でもおおよそ4000万円くらいは必要であるということになると思います。実際には人件費、練習場や事務所などの借り賃などが加わるので、これの倍近くは必要になるかと思います。こう考えるとサッカーに限らず全国リーグに参戦するということは、これくらいのお金が掛かるということです。
これはあくまで、ザッと大まかに試算してみた数字ですので、細かい部分で間違った数字やさらに必要な経費などもあるかと思います。ザッと考えられる範囲内での計算なので、むしろ「この金額はこれくらいしますね〜」とか「この経費忘れてますよ〜」とかの指摘をしていただけるとありがたいです。こういう叩き台の上で、もっとスポーツとお金の関係についての理解を拡め、さらに深めていければいいのかな?などと思っております。
試算をしてみて改めて思ったことは、ユニフォーム代って意外とバカにならないということ。Jチームが毎年のように新しいユニフォームを新調するということが当たり前のようですが、アマチュアとなるとユニフォームを新調するのはかなりハードルが高いのです。ということで、もしアマチュアクラブや学生チームのユニフォームをお持ちの方は、どうか大切に扱ってあげてくださいね(笑)
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