自治体とサッカークラブがタッグを組めば、いろんな問題が解決されるかも?というお話
今もどこかでJリーグを目指すチームが生まれる昨今。そのようなチーム全てがJリーグに入れる訳ではないのです。ご存知の通り、Jリーグは昨年の奈良クラブとFC大阪の昇格を以て、Jリーグ3カテゴリーの最終型といえる60チーム体制が確立しました。つまり、今年からJリーグ昇格を果たすチームが存在する反面、昇格したチームの数だけJリーグから外れるチームが発生することになるのです。当然ながら降格したチームはその時点で「Jクラブ」ではなくなります。残酷な話ではありますがこれが現実です。
それでもJに届きそうなところにいるチームはまだ「Jリーグ」を目標としてもなんとかチーム運営はやっていけると思うのです。でもJFL以下、地域リーグやさらにその下の都道府県リーグにいるチームが唐突に「Jリーグ」と言っていても現実味がない、と世間的には一蹴されてしまうでしょう。では、「Jリーグ」と言わずして何をもってチームの存在意義を世間にアピールすべきなのか?という問題が湧き上がってきます。
よく言われるものとしては「サッカーを通じての地域貢献」というものですが、これって実に抽象的であり、また実態の掴みづらいものでもあります。以前にもお話ししましたが、アスリートのセカンドキャリアの構築を目的としたり、またアスリートのデュアルキャリアを目指すチームも確かに増えてきました。おそらく今後は、そちらにシフトしていくのではないか?と個人的にはそう思っています。そちらについては、以前にお話ししましたのでここでは割愛いたします。
しかし、実はこれも実際にうまくいっているのかという評価が難しいのも事実です。むしろ地域貢献よりもより抽象的なテーマのため、世間へのアピール度はより低く、継続した活動が難しいのではないか?とも思うのです。いくらチームの公式で「この選手はこの会社で働いてますよ!」と言われても実感が湧かないですよね。でも、そういう小さいことの積み重ねが実は大事なんですが、それを根気強く続けるのは並大抵のことではありません。そんなことをつくづく思うのです。
6/4@きしろスタジアム FC BASARA HYOGO 3-3 レイジェンド滋賀
明石駅前にある明石公園の中にある陸上競技場、ネーミングライツで「きしろスタジアム」という名称になっている明石陸上競技場。昨年までFC EASY02明石と名乗っていたチームが、今年から元日本代表で地元滝川二で全国制覇した時のメンバーでもある岡崎慎司がオーナーとなって、大幅に体制の変わったFC BASARA HYOGOがここをホームスタジアムとしています。とはいえ、もう40年以上改修してないんじゃないか?と思うくらいの年季の入ったスタジアム。メインスタンドの上層の記者席らしきエリアは、耐震工事の関係なのか?一昨年くらいからた立入禁止となってます。いつ工事が始まるのやら…(笑)
そんなBASARA HYOGOのホームスタジアム、きしろスタジアムにやってきたのはレイジェンド滋賀。BASARAとは対照的に関西リーグに長年在籍している「古参」のチーム。以前にお話ししましたが、滋賀県にサッカーにまつわるさまざまな出来事ほぼ全てに影響を受けているレイジェンド滋賀。そんな苦労話はここでは割愛いたします。
そんな山あり谷あり、また山ありさらに谷ありといった苦悩の年月を経て関西リーグに在籍し続けているレイジェンド滋賀。そんなレイジェンド滋賀は今年の開幕から好調、開幕からこの試合まで負けなし。さらに前日、共に負けなしで首位のアルテリーヴォ和歌山がおこしやす京都にドローとなったので、前節まで勝ち点で並ぶレイジェンド滋賀は今日勝てばチーム創設以来初の首位となる、非常に大事な試合。とはいえ、開幕から曲者っぷりを発揮しているBASARA相手に、そう簡単に勝てるとは思えず、厳しい試合になるのではないかと予想されました。
その予想が的中。というより、レイジェンド滋賀の選手の方が、今日勝てば首位というプレッシャーでまあ動きが固い、というか固すぎる(汗)くらいガチガチな立ち上がり。いつもなら綺麗に上がるクロスも全然違う方向に飛んでいくわ、簡単にクリアすればいいところを変に繋ぎに行って掻っ攫われたりと、試合は完全にBASARAペース。27分、中央からドリブルで突破したBASARAの松山のシュートが綺麗に決まってBASARAが先制します。これで目が覚めれば良かったのですが、さらに動きがチグハグになり、CKからキーパーの弾いたボールを合わせた北原の2点目のゴールで2-0となります。
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これが見事にゴールネットを揺らし、BASARAが先制。
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レイジェンドのキーパー天野が一度は弾くも…
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動きの固いレイジェンドから一気に2点リードを奪った。
ここまでやられっぱなしのレイジェンドだが、徐々に反撃に転じます。AT直前の45分、CKからのボールをDFの竹本が頭で決めて1点差に詰めると、後半は息を吹き返したようにBASARAゴールに攻め込みます。59分に井藤からのクロスを後半開始から入った白井が合わせて同点に追いつくと、怒涛のような攻撃が始まります。
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45分の竹本のゴールで流れを一気に引き寄せます。
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苦しい流れが交代選手の活躍で一気に変わりました。
しかしBASARAも苦しみながらもなんとか守り切ります。しかし83分、左からのクロスにこちらも交代で入ったばかりの瀧本が、伸ばした足に合わせてゴールに流し込み逆転。今シーズンの勢いを感じさせる逆転劇でした。
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エース小國と交代で入った瀧本。
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これでチーム初の首位、となるはずでした…
しかしBASARAも最後まで諦めません。こちらも交代で入った土井がAT間際に後方からのロングボールを頭で合わせて同点に。そのまま試合は3-3のドローで終わりました。レイジェンド滋賀にとってはあと数分守りきれなかった、ゲームの終わらせ方に、BASARAにとっては90分の中のいい時間帯と悪い時間帯のプレーの振り幅を小さくしたいという、共に今後の課題が残った試合でした。
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今年もBASARAのエースはここぞという時に決めてくれます。
今年は開幕から好調のレイジェンド滋賀。他のリーグのライバルチームが軒並み主力が退団する中、レイジェンドはこの2、3年主力メンバーが大量に抜けることなく、リーグの中でも戦力が安定しています。そのことが、今年の好調の一番の要因ではないでしょうか。でも、他のクラブと同様、企業のサッカー部のように安定した仕事と給料が保証されているかと言えば、必ずしもそうとは思えない。しかも、チームの練習時間は午前中と、ごく一般的な仕事に就いていては練習に参加できない。そんなクラブにも関わらず、これだけ選手が定着するのは何故だろうか?という疑問が湧いてくるのです。その疑問を紐解くために、まずは選手たちがどのような仕事に就いているのか?を知ることから始めようと思います。
チームの強さは、能力>経済的基盤?
以前、ネットメディアか何かでレイジェンド滋賀の代表が取材を受けていたらしく、その内容を読んで「なるほど」というヒントがありました。滋賀県は、昔から東西の交通の要衝として栄えました。そのため、今でも主要の交通が滋賀県内を通っています。そんな交通の大動脈が集まる滋賀県には、大きな企業はそんなにありませんが、大企業の工場や大規模な物流センターがあちこちに存在するのです。工場もそうですが、特に近年は物流センターも24時間稼働が当たり前のようになってきました。24時間の交替勤務はだいたい、8時間毎の3交代制が基本となります。朝8時か9時からの朝組、夕方の3時から5時くらいからの夜組、そして夜中11時くらいから朝までの深夜組、といったところでしょうか。また、24時間稼働ではないものの、夜の遅い時間まで稼働しないといけない工場や物流センターも、その多くは2交代制などのシフト勤務制を取ることで、近年特に叫ばれている従業員への過度な負担の軽減と時間外勤務時間の短縮を図っています。そしてレイジェンド滋賀の選手たちの勤務先には、そんな24時間稼働や2交代制を取る工場や物流センターが多いそうです。
確かに朝に全体練習をするとなると、朝から始まる仕事はまず出来ないです。世の中のいわゆるホワイトカラーと呼ばれる事務仕事のほとんどは、朝9時から始まりますが、工場や物流センターのような現場仕事は必ずしも朝から始まるとは限りません。一昔前だとそういう現場仕事であっても、朝9時に始まり夕方の5時には終わるというタイムテーブルでしたが、現在のような朝も昼も夜も関係ない社会では夕方以降も当然ながら働かないといけない現場仕事も多いですし、そういうシフト勤務を嫌がる人たちも世の中には多くいます。
そんな働き手の隙間を狙って、レイジェンド滋賀のフロントはそのような現場仕事のある会社やスポンサーを探しては選手を送り込んでいるのです。ものすごく賢くて、さらに選手の働く場としては堅実な職場の提供の仕方だなと思います。そういう、他の人がどちらかというと嫌煙しがちなシフトの現場仕事の会社の多くは、働き手の確保に苦労しています。時給を上げたり、勤務時間を短縮したりしても、それでもなかなか思うように集まりません。そんな中、レイジェンド滋賀の選手たちはサッカーをやるためとはいえ、シフトの現場仕事であっても自分に与えられた仕事としてきちんとこなしているのです。会社としてもそういう厳しい環境なのは承知の上ですし、職場の同僚も働いてくれるだけでありがたいと思う現場ですから、当然働く選手たちを温かく受け入れてくれるでしょうし、また選手たちもその期待に応えようと努力するでしょう。会社にとっても、従業員にとっても、またレイジェンドの選手やフロントにとってもいいことです。これこそまさに、近江商人が昔からよく言う「三方よし」ですよ!
いつも言ってますが、学卒の選手がサッカーを続けていける環境というのは、一定の収入と週末の休日、それと職場の人たちの理解です。収入については不明ですが、少なくとも週末の休日と職場の人たちの理解は貰っているであろうレイジェンド滋賀の選手たち。通常ならあるはずのそれらの不安要素のない彼らだからこそ、サッカーに打ち込むことができ、そうした環境がようやく整ってきたからこそここ1、2年の好調に繋がっているのではないでしょうか。
さらにチームもそうですが、選手個人個人にとっても好影響を与えているのではないでしょうか。その典型例が阪南大クラブから入って4年目の小國です。入った年の彼は良い流れでプレーできる時の爆発力は半端ないのですが、そうじゃない時のモチベーションの下がり方も半端なく、なかなか思うように実力を発揮できなかったのです。それが1年2年と経つたびに、少しくらいのミスや悪い流れも気にせず、自信を持ってプレーできるようになりました。今や、チームになくてはならない大黒柱のような存在にまで成長しました。それも彼が仕事をサボらすキチンとこなし、同僚や会社からの熱い信頼を獲得することで自然と身に付いた自分に対する自信が、彼のサッカーに対する考え方やメンタル、モチベーションにプラスに働いたのではないかと思うのです。
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メンタルも充実した彼のさらなる活躍が期待されます。
学卒すぐやJやJFLにいたもののすぐにこのカテゴリーに移籍してきた若い選手の多くは、サッカーの技術は高いがメンタル的に不安定だったり、周りの選手たちとのコミュニケーションが苦手だったり、また遅刻や寝坊、その他私生活の面で難があったりと、サッカー以外の面で何かしらの欠点が見られます。それらの一つでも克服できればもっと上のカテゴリーでもやれるはずなんですが、それがなかなか難しいのが現状です。もったいないと思う逸材がこのカテゴリーには多く見られますし、彼らの特にメンタル面を改善してより上のカテゴリーへと送り出せることが出来れば、それはサッカー界全体への多大なる貢献に繋がるのではないでしょうか。
レイジェンド滋賀に所属する選手たちみんながそれらの欠点を克服でき、より高いカテゴリーに進めているかと言うとそうではないでしょう。しかし、必ずしもサッカーで成功するだけが重要ではありません。むしろ、学卒後のサッカー選手としての年数は人生の中のほんの一瞬でしかありません。選手としてのキャリアを終えた後も、1人の人間として必要とされる、頼りとされる、成功することこそが重要ではないでしょうか。そのためには「サッカー選手ではない時間」である、勤務先での成功体験の積み重ねが必要となります。サッカー以外のことであっても、選手たちは成功体験の数だけ「成長できている」という自覚を得られているのではないでしょうか。そのような自信が生まれることで、いずれ来るであろうサッカー選手としての引退後の生活にも自信を持って進むことができるはずです。そしてそのことが、レイジェンド滋賀の主力選手たちがすぐにチームを離れることなく定着している要因の一つかもしれませんし、さらに新たないい人材が集まる要因に繋がっているのかもしれません。レイジェンド滋賀とチームを支援するスポンサーとが協力することによって、それらの成功体験をより多く創出できていることが結果的にチームを強くし、さらに成長し続けている。そんな好循環を産んでいるのでしょう。
また、選手たちの職場からの信頼度が上がれば、サッカーを辞めると同時に正社員雇用というケースも十分にあり得るでしょうし、もしかしたらチームにいる間にも契約の変更という話があるかもしれません。正規雇用されて生活基盤が安定すれば、他の地域からサッカーのために滋賀に来た選手たちも、引退後も滋賀に残り続けることが出来ますし、元選手たちが滋賀県で生業を持つということは滋賀県の経済の活性化に寄与していると言えるでしょう。それだけでチームが地元に貢献していることにもなります。この流れこそが、本当の意味での地域貢献と言えるのではないでしょうか。
前代未聞!選手が社長の会社が…
地域貢献といえばもう一つ。かつてレイジェンド滋賀に在籍して、一時期チームを離れたもののまた今年、レイジェンド滋賀に復帰した背番号10番の宇野和人の話。実は宇野選手、自ら会社の社長を務めているのです。と書くと勘のいい方は「どうせ実家の家業を継いだ2代目社長なんじゃないの?」と思われるでしょう。でも宇野選手のちょっと違うところは、自らで会社を立ち上げたのです(詳細は分かりませんが、少なくとも会社設立が2019年なので家業を継いだという形跡はありません)。
宇野選手は高校卒業後、ルネス学園に入学。卒業後はのちにレイジェンド滋賀と合併されるTOJITSU滋賀FCの前進である東レTOPに所属。当時の滋賀FCとの合併後はTOLITSU滋賀、レイジェンド滋賀に2016年まで在籍、その後は当時滋賀県リーグだった守山侍2000に移籍。チームを関西リーグにまで昇格させたのち、2023年の今年、再びレイジェンド滋賀に復帰しました。そして今年の7/1の試合を持って、レイジェンド滋賀の選手として関西リーグ100試合出場を達成したという、伝説と言っても過言ではないくらいのすごい選手です(関西リーグ通算ではなんと驚異の163試合出場です)。
そんなレジェンドみたいな選手が4年前に自ら会社を立ち上げ、今は「社長選手」として活躍しています。社長としてしっかりと会社を切り盛りしながら、さらにはサッカーでもチームにとってなくてはならない無二の存在といえる、そんな宇野選手をしっかりサポートしているレイジェンド滋賀の懐の広さは、これまで様々な苦難を乗り越えてきた長い歴史を経たチームの歴史があるからこそ生まれたものではないかと思います。
さらにもっと凄いのは、宇野選手の会社である株式会社UNO。実はレイジェンド滋賀のユニフォームスポンサーでもあるのです!
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小さいのに何気に存在感があるように思えるのはなぜ?(笑)
実際にいくらスポンサー料を出しているかは不明ですし、詮索する必要もないかと思います。ただ、自らプレーするチームに対して、自分が社長を務める会社がユニフォームスポンサーになるというのは前代未聞だと思います。それくらい彼にとっては、レイジェンド滋賀というチームがなくてはならない存在であることは間違い無いでしょう。選手がプレーするチームが地域の経済活動に貢献し、さらに選手が起こした会社が地域に貢献すると同時にチームにも貢献するという流れが、サッカーを通じての地域貢献と言えるのではないでしょうか。
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長年の選手生活で満身創痍のはずなのに常に全力プレーです。
いずれは滋賀県以外の地域からレイジェンド滋賀にやって来て、その選手たちがアスリートとしてレイジェンド滋賀で引退したあとは、そのままそれぞれの勤務先に残って(滋賀県内に残って)仕事を続けることができる。そういう流れが確立すれば、これこそがサッカーを通じての地域貢献になるのではないかと思うのです。
クラブと自治体が本気でタッグを組めば、こんなこともできるのでは?
で、この流れってよく考えたら、地方都市が大学を誘致するのとよく似ていると思うのです。地方都市が大学を誘致する理由としては、まずは大学に通うために若い学生がやってくることで街が活性化し、卒業後地元で就職してもらい、そこで生活をしてもらう。そしてゆくゆくは家庭を持って定住してもらうことで地元の経済に貢献し、結果的にどの地方都市でも問題となる過疎化に歯止めをかけたいというのがほとんどでしょう。全国津々浦々から若い人たちがその街に集って生活をし、最終的にはその地域で就職して定住する。これって、つい先ほどお話しした流れそのものと言っても問題ないでしょう。
つまり、サッカークラブによる究極の地域貢献は、一時期流行った地方都市による大学誘致がもたらす効果とほぼ同じということになります。大学を誘致するに必要なことはまずは敷地の確保。そして学校側が建設する校舎などの費用の補助もがないと、引く手数多な大学誘致合戦に勝てないのでそれ相当の金額が必要となり、かなりの初期投資となります。さらに、地方自治体自らが大学を設立するとなると自前で校舎の建設費を賄わないといけないし、さらに自前での教員の確保、さらには彼らの人件費、その他様々な経費が経年にわたって必要となります。人口減少に伴い税収の減少が予想されるほとんどの地方自治体にとっては相当な負担となります。しかし、地元のサッカークラブで同じことをやろうとすると、自治体が負担する初期投資はゼロ。それでもって互いにうまく協力しあえれば、将来的に地元に様々な恩恵をもたらしてくれる「可能性」を秘めている、そんな存在といっても大袈裟ではないかもしれません。
そしてこの流れをより効果的に回していく秘策として考えられるのは、各自治体が積極的に行なっているIターンや移住への補助金制度の活用などとリンクさせることです。そうすることで、チームは自治体によるIターンを活用という新たな形のスカウティング戦略を取ることができ、また自治体からすれば今まではターゲットになりえなかった層の人材に対してIターンなどのPRが可能となるので、上手く連動すればwin-winの関係になるのではないでしょうか。
今のレイジェンド滋賀を見ていると、仮にそのような将来的なビジョンを描いたとしても、実現も決して難しいことではないように感じます。そして、そのような形でクラブと地元自治体とが協力しあうモデルケースとして確立することが出来れば、今後Jリーグにこだわらなくともチームは回るという仕組みが広がり、様々な価値観を持つクラブが増えていくのではないでしょうか。そして、それこそがサッカーを通じての地域貢献でもあり、また持続可能なサッカークラブの在り方ではないでしょうか。まさにSDGsなサッカークラブと言えるでしょう。
と、半ば理想論に近い話にはなりましたが、そのようなクラブの存在意義は今後高くなるのではないかと感じています。これからどんどん新しい世代の競技人口は減少していきます。当然、就業者人口も減少していきます。サッカーチームというフィルターを通してみると、チームもスポンサーも「人材不足」という問題に直面します。それを同時に解消するには、このようなクラブ運営が最適なのかもしれません。現状ではまだそこまで上手くは機能していないかもしれませんが、今のレイジェンド滋賀の流れを見て、アマチュアクラブの将来に気持ち程度の希望が見えてきたように感じたのでした。これからはサッカークラブもSDGsを目指しましょう!(笑)
追記
サッカーチームを「派遣会社化」して、チームがエイジェントとしての役割を果たすのはありではないか?という声もあるかと思います。その意見には個人的には反対です。なぜなら、雇い止めの問題があるからです。仮に、選手を派遣する全スポンサーと「希望があれば3年後には必ず正社員雇用に切り替える」という契約書を結ぶのであれば別ですが…。もっとも、どれくらいの選手が3年同じチームに所属しているのかにもよりますが…。収入の安定がチームに残る一つの要因になりうるのであれば、この方が派遣会社化よりもより効果的だと考えられます。