プレー強度やスピードとかをあまり気にしなければ、無理に関東にこだわることはない。十分レベルの高いサッカーを近所で見ることが出来るんです!という、ささやかに訴えてみる
東海の大学サッカーを見始めたのが約10年ほど前。九州はそれから2、3年くらい経ってからですかね。その頃は東海や九州の大学サッカーを見に行っても、上位同士の対戦であっても互いにミスが目立ったり、リズムが短調でただのボールの蹴り合いが続くようなつまらない試合が多かったと記憶しています。そうなると、やはり大学サッカーでも関東で見るもの、という流れに必然的になっていました。
しかし、ここ数年は東海も九州も関東や関西にはやや劣るものの、サッカーのレベルが高くなってきており、以前のようなつまらない試合はかなり少なくなりました。さらに他の地区の試合を見に行っても、そんなに見ていて苦痛になるようなつまらない試合は少なくなってきたように思います。
ということで、この1ヶ月くらいに見た中国と四国の大学サッカーについてダラダラと書いていこうと思います。
9/25 中国地区大学リーグ2部、島根大学2-1岡山大学@平田スポーツ公園
関西から山陰、特に米子から西って意外と行くのが大変なんです、実は。それは山陽も同じことで、広島より西は結構時間とお金がかかるので、正直あまり行きたくないんです(汗)
でも今回、あるミッション達成のために島根県に行かないと行けなかってのです。そのミッションとは「47全都道府県で大学サッカーを見る」というもの。実にバカげたミッションなんですが実は結構達成していて、この時点で残り10県まできているのです(未達成は青森、山形、福島、富山、福井、島根、山口、徳島、高知、佐賀)。あと数年あれば出来んじゃね?というところで、実はこのコロナ禍。思うように見に行くことが出来なかったのですが、今年はちょっとずつ見に行けそうになってきたので、ここでブースト掛けて稼ごうかなと思い、この出張と次に書く高知と山口の3県で大学サッカーを見に行ってきたのです。
で、先ほども書いたように、島根は陸路ではなかなか時間がかかるのですが…
これが飛行機だとかなり時間が短縮できるのです。
もちろん飛行機代が高いのでお金はその分掛かるのですが、それも早割や特割でディスカウントすれば全然問題ないし、むしろ早めに抑えていればほぼ同額程度で行けてしまうので、圧倒的に山陰へは飛行機ですね。
というわけで、直前に飛行機の切符を押さえてまずは松江に向かいました。伊丹では直前に搭乗口の変更があったりしましたが、朝9時過ぎには松江市内に到着しました。
時間までは松江市内をウロウロと観光。松江藩松平家の菩提寺である月照寺に行き、不昧公で有名な松平治郷の墓所にお参りしたり、松江歴史館で月1回の火縄銃の演舞を見たりと、しっかり松江観光してきました。
一通り松江観光を堪能したので、本日の会場である出雲市平田(以前の平田市)にある平田スポーツ公園に向かいます。
駅から歩くこと約15分くらい。中学校の隣の敷地に、目的の平田スポーツ公園がありました。
島根大学と岡山大学。ともに2部の上位に位置しています。中国リーグは降昇格のシステムがおもしろく、2部1位と1部10位は入れ替え、2部2位と1部9位は入替戦。2部の3位から6位までがプレーオフを行い(3位vs6位、4位vs5位)最終的にプレーオフ順位を決めます。そして、プレーオフ1位は1部8位と、プレーオフ2位は1部7位とそれぞれ入替戦を行います。勝てば1部は当然ですが、引き分けた時は2部2位は1部昇格、プレーオフ2位は2部残留、プレーオフ1位と1部8位は延長戦、決まらなければPK戦を行う、というそれぞれのリーグでの順位によってアドバンテージを設けているという、実に公平な方式を取ってます。なので、リーグ戦で2位か3位以下かで入替戦の有利不利が出てくるので、最後まで順位争いが激しくなるのではないかな?と勝手に思っております。
で、この両チーム。この時点で島根大学が4位、岡山大学が3位。共にプレーオフ圏内にいるので、ライバルを蹴落とすためにも負けられない一戦となりました。
試合は立ち上がりこそ岡山大学が攻め込んでましたが、ボールキープやパス精度の高い島根大学が徐々にペースを握り、先制して前半を終えます。
後半も島根大学が押すなか、岡山大学は交代選手で流れを引き戻し、残り5分となった85分にミドルシュートのこぼれを押し込み追いつきます。
運動量の落ちた島根大学にさらに猛攻を掛ける岡山大学。しかし必死に守る島根大学。そのまま終わると思われた90+3分、またしても中島のCKを頭で決めて勝ち越し。最後までもつれた試合は、ホーム島根大学が貴重な勝点3を獲得しました。
勝った島根大学。原稿を書き上げている時点で、最終節を待たずして既に2部優勝、来年の1部昇格を決めています。この日の内容を見ても、優勝しても何ら不思議ではない出来でしたので納得です。個々の選手にしても、この日2アシストの中島くんは米子北出身。その他も、先制ゴールの中沢くんは同じ県内の益田高校、キャプテンで背番号1番のボランチ髙木くんは大社高校と、地元山陰の強豪校出身の選手たちがピッチで躍動していました。そして、この日幾度となくピンチを救っていたキーパーの矢野くんは広島出身(広島中等教育学校)、サイドから何度も突破を繰り返していた傳川くんは新潟出身(巻高校)と、決して強豪校とは言えないその他の地域出身者も彼らに感化されるように質の高いプレーを見せていました。7月に見た広島大学同様、サッカー強豪校出身が周りを牽引してチームとして成長していることがよく分かります。
近年、島根県のサッカーはデッツォーラ島根の解散やFC神楽しまねの給料未払い問題など暗い話題が多いですが、そんな中でも島根県のサッカーに明るい話題をもたらした島根大学には来年も期待したいです。来年は厳しい戦いになるでしょうが、1部残留を果たし、さらに定着してもらいたいですね。
帰りは陸路。やくもではなく、鳥取県を横断して帰ってきました。4時間くらい掛かったと思います。やはり山陰は空路に限ります…(笑)
10/8 四国大学リーグ@スポーツパークさかわ
山陰同様、四国、特に高知と愛媛は関西からは近くて遠い場所です。かの昔、土佐と伊予は流罪の地となっていたくらい「畿内からは遠い」のです。さらに高知でサッカーとなると、ほぼ間違いなく春野運動公園の開催になるのですがその春野、一昨年だったかあたりに運動公園に行くバスの大幅な減便があり、バスで行くことが極めて困難になってしまいました。そのため、春野はあまり行きたくない会場の一つになってしまいました。
でも今回は春野ではなく佐川開催。高知市内よりもさらに西に位置しますが、会場のスポーツパークさかわは佐川駅からまだ歩ける範囲なので、日程が決まった時点で速攻で予定に組み込みました(笑)
日帰りでもなんとか間に合うのですが、夜行バスを絡めたバス往復にした方が圧倒的に楽で安いので、金曜夜から移動することに。朝早く高知に着くので、今まで何度も行ってるのにまだ一度も行ったことない桂浜に行ってみることにしました(笑)
朝の曇り空から徐々に晴れて、日中は暑いくらいの日和。観光も早めに切り上げ、9時半には高知駅から佐川駅に向かいます。佐川では地元の酒蔵に立ち寄ってお土産の酒を物色していたら、試合開始ギリギリになってしまいました(汗)。特急料金ケチらなきゃ、もう少し余裕があったのにね、と反省…(笑)
この日の試合は2試合。11:30からは四国大学リーグ2部の高知工科大学vs鳴門教育大学、14:00からは1部の高知大学vs松山大学。高知工科大学と鳴門教育大学の試合は、消化試合数の差はあるものの首位攻防戦でした。高知工科大が勝点9、鳴門教育大は1試合少ないが勝点6で共にここまで無敗。この試合に勝てば優勝に一つ近づきます。例年であればこの2チームは4チーム(少なっ!とか言わない)のリーグでも下位にいることがほとんどだったのですが、今年は上位にいるはずの香川大学と徳島大学の不調もあり、ちょっとした異変が起こってます。
四国大学リーグ2部、高知工科大学1-2鳴門教育大学
試合は、開始すぐに先制した鳴門教育大学がボールを支配、対する高知工科大学はカウンターで応戦という展開。そんなカウンターから高知工科大学が同点に追いつく。
追いついた高知工科大学は後半、4本ほど連続してCKのチャンスを得るも活かせず。逆に鳴門教育大学に勝ち越し点を与えてしまいます。勝ち越した鳴門教育大学でしたが、負傷交代や暑さから徐々に劣勢に追いやられる。しかし、最後まで粘り強く守り切り鳴門教育大学が接戦をモノにしました。
高知工科大学はスタメンに1年生が5人、2年生を含めると8人を占める若いチーム。良い選手が集まりつつあるようです。成長著しいチームのようなので、今後の活躍に期待したいところです。
勝った鳴門教育大学。前述の島根大学同様、この原稿を書き上げている時点では既に2部の優勝を決めています。1部昇格を掛けて1部最下位の松山大学との入替戦に臨みます。徳島県って全国でも有数の「大学サッカー不毛の地」でして、四国大学リーグの1部にチームがいたことがないんじゃないか?と思うくらいの地域です。昨年も同じ徳島の徳島大学が入替戦に挑みましたが、あえなく破れ去りました。今年の鳴門教育大学はその壁を乗り越えることができるか?それを乗り越えた時、徳島の大学サッカーの新たな一歩が始まる。そんな気がします。是非とも1部昇格してもらいたいものです。
四国大学リーグ1部、高知大学3-2松山大学
次の試合はかつての強豪、高知大学と古豪松山大学。高知大学は近年、四国学院大学や高松大学の後塵を拝すことが多く、全国大会にまでなかなか進めない年が増えています。松山大学も同じく、強化はしているはずですがなかなか結果に結びつかない。現状打破に苦心しているものの、もがいている最中といった両チームの試合です。
立ち上がりから高知大学の動きがキレッキレで、飲水までに2得点。さらに追加点を決めて3-0と前半から松山大学を圧倒。そのまま後半も大量得点が続くのかと思われました。というのも、高知大学はまだ他力ながらも優勝の可能性があり、そのためには次節の高松大学との試合までに出来るだけ得失点差を詰めておく必要があったのです。
しかし後半、松山大学6番河本のミドルが決まると、途端に急に高知大学の動きが完全に噛み合わなくなってしまいます。暑さのせいか、運動量も一気に落ち、試合は松山大学のペースに。76分に1点差に詰めて、さらに攻撃を仕掛けるも最後の詰めが甘くそのまま終了。大量得点差で勝ちたかった高知大学は自らリズムを崩し、試合のペースを失ったらもののなんとか勝った。そんな試合でした。
高知大学の今やってるサッカーの方向性は全然間違っていないのです。プレースピードを早め、早いパス回しとランで相手を掻き回しながらゴールチャンスを窺うという、今までの四国にはなかったスタイル。ただ、その一つ一つの精度をさらに高めていかないと全国でも通用しないし、この日のように一旦リズムを失うことで全く出来なくなってしまうようでは、やはり厳しいでしょう。
プレーの精度について気になるのは、おそらくですが高知大学のグラウンドってまだ土のままなんじゃないのかな?ということ。近年では国公立の学校でも人工芝のグラウンドになっているケースが増えています。以前お話しした広島大学も、グラウンドが人工芝になってから一気に強くなったことからも、プレーの質を高めるにはやはり練習環境は大事なのかな?と思います。
高知大学が強かった頃はJリーガーを輩出していましたが、今はサッカー部の推薦入学枠が無くなったという話も耳にしています(現地情報筋からの話なのでおそらく間違いないかと)。今入って来れる選手たちのレベルを高めるためには、やはり練習環境の整備は大事なんだろうな、などとこの日の高知大学を見てそんなことを改めて思いました。
10/9 中国地区大学リーグ1部、周南公立大学4-5広島経済大学@周南公立大学
山口県は徳山市、いや今は新南陽市と合併して周南市に変わってますが、この街は昔から訪れたい街の一つでした。旧徳山市は全国でも有数の工場夜景で有名なところです。新幹線で博多や小倉から帰る時は、出来るだけ進行方向右寄りの窓側席を押さえて、徳山駅通過前後に見える工場夜景を見るのが一つの楽しみであります。とはいえ、現地泊しないとなかなか見られないので近くでマジマジと見ることが出来てないですね。ま、今回も結局出来なかったのですが…(汗)
この日の会場である周南公立大学。聞きなれない名前のようですが、この写真を見れば「あ〜」と思う人も多いかと思います。
そうです、実は去年までは「徳山大学」という名称でした。今年から公立大学になったので、名前も新たに「周南公立大学」と変更になりました。
元々、創設時から公設民間大学という形態をとっていたようですので「本来あるべき姿」に戻ったとでも言えるのではないでしょうか?全校生徒1000人に満たない小さなキャンパスですが、地元の期待を一手に背負った大学といっても過言ではないと思います。
周南公立大学は徳山大学時代から中国地方では強豪で、近年は環太平洋大学や福山大学に推されてますが、それでも実力のあるチームです。ただ今年は、なかなか勝ち点を積み上げることができず、中位に甘んじています。広島経済大学はランク的にはその下に位置してはいますが、例年実力はあるチームです。まだこの時点ではどちらもまだインカレも可能性があったので勝ち続ければ…、といった状態で迎えた試合。開始から壮絶な展開となりました。
立ち上がりからラッシュをかける広島経済大学が立て続けに2点を取る。2点を追う周南公立大学もすぐに反撃、1点返すと40分には同点に追いつく。
後半も先に点を取ったのは広島経済大学。やはり後半の立ち上がりの時間帯に勝ち越し点を挙げるも、その後はやや停滞。逆にエンジンのかかってきた周南公立大学の反撃を受ける。70分に山本のゴールで追いつくと、その7分後にはついに周南公立大学がこの日はじめてリードを奪います。
しかし、これで終わるような試合ではありませんでした。同点に追いつこうとする広島経済大学は、85分に相手のハンドで得たPKを今田が冷静に決めて同点に追いつく。流石にこれで終わるだろうと思ったATの3分、広島経済大学の原が中央から決めて再度勝ち越し。激しい点の取り合いとなった試合は、劇的な形で勝敗が決しました。
勝った広島経済大学も負けた周南公立大学も、ともにサッカーの質は高く、見ていて実に楽しい試合でした。特に周南公立大学はみんな身体がしっかりと安定していて、それに加えてポジション関係なく縦横無尽に動き回るので、DFが捕まえきれずに混乱するシーンが多々ありました。このサッカー、どこかで見た記憶が…、と思ったらかつてJFLで優勝もしたことのある佐川滋賀のサッカーに近いです。
このサッカーって、いい時はホントに止められないくらいの爆発力があるのですが、逆に噛み合わないとどうしようもないくらいダメなサッカーになってしまう。さらに、常に動きながら頭もフル回転させないといけないとで、選手の疲労度は半端ないんですよね。でも、このサッカーを身につけると将来どのカテゴリーに行ってもある程度やっていける、そんなサッカーでもあるんです。やってる選手も、いい時はめちゃくちゃ楽しいんですが、ダメな時はホントにめちゃくちゃしんどいらしいです(笑)まさに諸刃の剣ですね…
何年か前に徳山大学の試合を見た時はこのようなサッカーではなかったように記憶してますので、ここ最近になってこのスタイルのサッカーを始めたのではないかなと思っています。このスタイルを継続していけば、このチームから今後はどんどんJFLやJでも活躍する選手を輩出していけるような環境になるでしょうし、そうなればいい選手が集まることも予想されます。ここ数年は環太平洋大学の一人勝ち状態に、それに追随する福山大学との一騎討ちといった様相の中国地区。今年は広島大学の躍進という、その流れに変化が現れようとしています。ここに、この周南公立大学や勝った広島経済大学が加わると、中国の大学リーグのレベルアップにも繋がることでしょう。
環太平洋大学がここ1、2年、全国でそこそこ通用するレベルにまで達してきたものの、まだまだ全体のレベルがそう高いとは言えないので、これらのチームの今後の活躍がレベルの向上に欠かせないものとなることは間違いないでしょう。来年以降も定期的に観察したいチームがまた増えてしまったようで、「来年もまた忙しくなるんだろうな〜」と思わず遠い目になってしまいました(笑)
最後に周南公立大学ですが、経済学部ビジネス戦略学科でスポーツマネジメントコースがあったり、福祉情報学部には生涯スポーツ専攻というのがあってりと、実は地味にスポーツ関連の勉強が出来る学校だったりするんです。調べてみないと分からないものですね…。