苦しい時、サポーターという「部外者」が出来ることって一体なんなんだろう?という永遠の課題について改めて見つめ直してみた、というお話
久しぶりに武蔵野の話です。
10/22時点で東京武蔵野ユナイテッドは勝点26で14位。地域リーグとの入替戦回りとなる最下位にいる沖縄SVとは勝点差が7ありました。
翌週の10/29の試合。東京武蔵野ユナイテッドは4位のレイラック滋賀に0-3と敗れ、対する沖縄SVは鈴鹿ポイントゲッターズに2-1と勝利。勝点差は4となり、沖縄SVとしては残り4節(沖縄SVは残り4試合、東京武蔵野ユナイテッドは残り3試合)で十分に逆転可能な成績にまで追いついてきました。
一昨年の苦しかった残留争いに再び巻き込まれることとなった東京武蔵野ユナイテッドについてのお話です。
10/29 JFL@東近江市布引総合運動公園陸上競技場 レイラック滋賀 3-0 東京武蔵野ユナイテッド
この試合、レイラック滋賀にかかわらず、またサッカーのみならずさまざまなプロスポーツのユニフォームを持参、着用すると無料となる(招待という形です)とあって、いろんなチームのユニフォームを着た人がスタジアムにいました。Jリーグ参入目標に少しでも入場者数を増やしたいレイラック滋賀。公式発表は1751人とまずまずの数だったのではないでしょうか。
さて、この日の東京武蔵野ユナイテッドですが、ほぼ何も出来ずに負けたという印象でした。
序盤からDFに枚数を割いて少ない人数でカウンター攻撃を仕掛けるレイラック滋賀。前線にスペースがないので武蔵野はボールを持ったとしても、なかなか前に進めません。中盤から後ろでボールを回す時間が長い中、レイラック滋賀はそこからボールを奪ってショートカウンターを仕掛け、何度もチャンスを作ります。13分、CKからのこぼれ球をシーズン途中にTIAMO枚方から移籍した大垣のゴールでレイラック滋賀が先制します。その後も、武蔵野のパス回しを狙ってカウンターを仕掛けるレイラック滋賀は、32分に26番角田のゴールで追加点。そのまま前半を終えます。
後半もその流れは変わらず。さらに、前半から度重なる接近戦とフィジカルコンタクトの連続で体力を消耗した武蔵野の選手たちの運動量も60分を過ぎると一気に低下し、さらに70分を過ぎればカウンターで前に走ることもままならない状態にまでパフォーマンスが落ちます。それでも1点でも返そうとしますが叶わず、逆にAT、試合前にJFL100試合出場の表彰を受けた菊島のゴールが決まり、レイラック滋賀が3-0で勝利。順位を3位とし、2位のソニー仙台との勝点差も1に詰めました。負けた東京武蔵野ユナイテッドは冒頭にも書きましたが、最下位の沖縄SVとの勝点差が4となり、残り4節の段階で入替戦回りの可能性も出てきました。
勝てないチーム、パフォーマンスの上がらない選手に対し「部外者」のサポーターは何ができるのか?
見出しではあえて、サポーターのことを「部外者」と表記しました。それには訳があって、チームの成績とサポーターとの間には、例えばそれが元で給料が減るとか、査定に響くとか、ましてや仕事を失うとかといった直接的な「責任」が存在しないので、チームとは敢えて「部外者」という表現をさせていただくことを、先にお断りしておきます。
勝負の世界である以上、そこには勝ち負けが存在します。また、相手がいる以上はいくらパフォーマンスで相手を上回ったとしても、相手の出方次第で勝負に負けるのも事実です。
この日の武蔵野とレイラックとでは、明らかにパフォーマンスに差がありました。順位も4位、好調のレイラックは当然、個々のパフォーマンスに優れていました。一方の武蔵野はというと、チームの雰囲気は悪くないものの、どこかコンディションの良くない、そんな雰囲気が見て取れました。当然ながらパフォーマンスで相手に劣るわけで、その差がこの日の試合内容と結果に現れたのは間違いないでしょう。
JFLの中でも夜に練習を行なっている数少ないクラブの一つの東京武蔵野ユナイテッド。特に夏場の試合では夕方以降のキックオフとはいえ、体力的にキツいのは間違いないです。逆に今くらいの秋口以降の試合だと、他のチームともそんなに体力負けはしないはずですが、現実的にはそうにはならなかったのです。接近戦と激しいフィジカルコンタクトの繰り返しで体力を消耗させられたのは事実ですが、それでもコンディションが上がらないのか、パフォーマンスの悪さは顕著でした。
コンディションの低下やパフォーマンスの悪さの要因は特定できませんが、基本的に仕事とサッカーとの掛け持ち、しかもみんな同じ職場なら忙しい部署、そうでない部署、繁忙期や閑散期がみんななんとなくわかるので、チームとしても選手間でもそ!なりに対策は取れるでしょうが、武蔵野は選手がそれぞれバラバラの職場にいるため、同時に何人もが仕事が忙しくて残業が続いたり、また研修やその他諸々の事情により練習に参加できなかったり、あるいはその他の理由でコンディションを崩したりして、それが主力で何人も重なるといったことも起こりうるでしょう。それらを細かくチェックしながら、現場スタッフは直近の試合のメンバーや練習メニューを事細かく変更していると思います。現に、前節と今節とで比較してみても、DFは前節の一宮から山田へ、MFも金田から小野寺へとスタメンが変わっており、サブも前節の時里から谷本に変わっています。このような細かいメンバー変更が毎回のように行われています。その苦労はおそらくJFLでも頭抜けているのではないでしょうか。
そうした苦労の中、チョイスした「今一番コンディションがいいと思われる」ベストメンバーで臨んだとしても、この日のようにパフォーマンスが上がってこない試合もあります。見ているサポーターからすれば、いろいろと不満の一つや二つも言いたくなるのも無理はないです。正直なところ、私も言いたくなるところをグッと堪えて、出来るだけポジティブなことを言うように努めましたが、現実的には辛いです。
そんな状況を目の当たりにして、ピッチの外から、あるいは上から見ている「部外者」である我々サポーターは、一体彼らに何ができるのであろうか?長年の課題であり、永遠の課題でもあるでしょうこの問題。私が個人的に出した解答は…
ただそばにいて見守るだけ。励ますだけ。支えるだけ。共感して、痛みや辛さ、喜びや悲しさ、その他あらゆる感情を共に分かち合うだけ。そして信じるだけ…
です。本当にただそれしか出来ないのです。
つい感情を露わにして「勝ちたいのか?」とか「やる気あるのか?」「そんなんだったら辞めちまえ!」とか言いたくなることもあるでしょう。でも、それを言って効果のある、それを糧に奮起してくれる選手だけとは限りません。特に最近の選手たちは、そうした厳しい叱咤激励を逆にマイナスに捉えてしまう子たちが増えてきたように思います。そうした叱咤激励がかえって選手たちを萎縮させてしまい、どんどん悪い方に転がっていく、そんな逆効果となることも十分考えられます。また、あまりにもそんな野次めいた言葉を聞かさせ続けると、たとえ最初は効果があったとしてもだんだん慣れてきて、最後には聞く耳を持たなくなってしまう可能性もあります。その先にあるのは、選手とサポーターとの深い溝と軋轢、憎しみ合いしか生まれません。実に悲しい話です。
サポーターはもちろんでしょうが、一番勝ちたいと思っているのは実際にピッチに立っている、ベンチに座って出番を待っている選手自身なのです。誰一人として「勝ちたくない」とか「負けていいや」と思って最初から戦っている選手はいないでしょう。最初からやる気のない選手なんていないと思います。それなのにサポーターから「勝つ気があるのか!」「やる気がないなら辞めてしまえ!」みたいなことを言われると、選手もイライラするだろうし、やる気も萎えてしまうでしょう。サポーターのその軽はずみな発言が、チームや選手のモチベーションをさらに低下させてしまっているのです。
選手のパフォーマンスが落ちているということは、選手自身が自信を無くしてしまっていたり、または何をやればいいか分からなくなっている状態のことが多いです。疲労が蓄積して、頭と身体とが一致せずにもがき苦しんでいる状態だったりもします。そんな時でもサポーターは、可能な限り簡潔な言葉で選手を褒めたり励ましたりすることくらいしか出来ないのです。悲しいですがこれが現実です。
選手やチームを見守り、励まし、支え、あらゆる事実をともに分かち合い、そして何があっても信じること。苦しい時ほど、サポーターみんながこれを貫けるかどうか。それが選手やチームに大きな力を与えることでしょう。
もう一度言います。今の武蔵野サポーターに必要なのは「選手を、チームを見守り、励まし、支え、あらゆることを分かち合い、そして信じること」…。残念ながら私は残り3試合のうち、最終戦しか行くことができません。残りの2試合に行かれる方たちのことを私は信じています。仲間たちがきっとチームをいい方向に向かわせてくれると確信しています。まずは今週末の鈴鹿戦、朗報を期待しています。一昨年の再現を再び繰り返しましょう!
今のレイラックに思うこと。彼らだって辛いんだと思う、たぶん…
レイラック滋賀についてもお話ししておきたいと思います。
今年のレイラック滋賀のサッカーは、途中で監督が変わったもののシーズン通じて一貫しています。勝つことを、結果を出すことを宿命づけられた、そんな「勝つための最適解を導き出すためのサッカー」です。DFに枚数を割き、サイドバックの上がりは一切なく、前線にスピードのある選手を並べることで、相手の守備陣形が整う前にゴールを奪ってしまうという、相手チームのサポーターやサッカーを戦術から見る人たちからすると、実に面白くない、つまらないサッカーと言えるでしょう。
確かに第三者からすればそうかもしれませんが、彼らには「そうせざるを得ない」事情もあるのです。チームも選手もスタッフもみんな、今シーズンが勝負と考えているからです。MIO時代を通じても、シーズン終盤までこんな上位に居続けたことはなかったと思います。今年からチームの体制が大きく変わり、さらに県内に待望のJリーグのスタジアム要件を満たすスタジアム(実際は照明塔の照度が不足していますが)が完成しました。このタイミングを逃すと次はいつになるか分からない。この日の試合前のイベント中に「このチャンスを逃すと、もうJリーグに行くことは出来ないでしょう!」などとややネガティブなことを言っていましたが、それくらいの覚悟を持ってチームも選手もみんな動いていることでしょう。
おそらく選手もコーチ陣も、本音ではこんなサッカーはやりたくないのかもしれません。結果ありきのサッカーほど、やっていて楽しくないものはありません。その証拠に、選手たちは結果にコミットすべく、ちょっとした判定や際どいプレーに対してナーバスになり、大声やオーバーアクションをしてアピールしたり、判定に対して文句を言ったりしていました。選手も相当フラストレーションが溜まっているのでしょう。あまりにも目に余るので、武蔵野サポーターから「審判に文句言うな!」とか「子供も見てるんだから、恥ずかしくないプレーをしたら」みたいな声が上がっていました。そんな声が聞こえたのか、それ以後は文句を言う選手はいなくなりました。選手も本当は言いたくないのでしょうが、今の現実、勝たないといけないという悲壮感の漂う、そんな雰囲気がそうさせたのかもしれません。
さらに言及すると、レイラック滋賀は夏の移籍ウィンドーの時期にJチームから大量に選手を補強しました。彼らのほとんどは、レイラックをJ3に参入させることが最大の使命とされ、もしかするとレンタル元からはすでに戦力外通告されていて、ここで結果を残して来年のレイラックに拾ってもらうか、もしくは他のチームに移籍先を探すしかないといった、そんな過酷な条件でやって来ているケースもあるかもしれません。そんな追い詰められた、厳しい環境の中で戦っているのではないかとも思われる彼ら。その崖っぷちともいえる局面で、もがきや苦しみ、激しい葛藤とも戦いながら、一戦一戦必死に勝つことだけを意識してプレーしているのかもしれません。「部外者」である第三者からすれば「つまらない」「面白くない」と思うかもしれません。でも彼らには、どうしてもそれをやらないといけない理由があると知っておくことも大切なのかもしれません。
選手だけではありません。MIO時代から見ているファンやサポーター、スタッフやボランティアの人たちの中にも、1年で一気に変わったチームに戸惑い、葛藤している人はいるでしょう。嬉しい反面、寂しさや諸々の感情を抱いていることでしょう。そういえば僕たちも2年前はそうでした。レイラック同様、突然チーム体制が変わり、訳もわからないままシーズンが始まり、そして勝てないという地獄のような日々が続きました。私のように「ま、しかたないか…」とすんなり受け止めるサポーターはほぼいませんでした。ほとんどのみんなは新体制に反発していました。今でもそうです。新体制になって悪い方向ばかりに触れてしまったからかもしれませんし、一時は現場も完全に対立していましたから、無理もないですね。
レイラック滋賀は幸いなことに新体制になって、それなりにいい方向に向いているのでそうでもないかもしれませんが、それでもみんな、いろんな葛藤と戦いながらサポーターやその他の活動をされているのではないかと思います。
それでもみんなに出来ることはやはり見守り、励まし、支え、共感し、いろんな感情を分かち合い、そして信じるしか出来ないのです。
そんな葛藤とも戦う彼らが唯一救われる道は、30節終了の11/27時点で最低でもJFL2位以上にいること。もし2位ならば、その後行われるJ3との入替戦(現時点で最有力なのはギラヴァンツ北九州との対戦)に勝利すること。そしてフロントは、現時点で継続審議となっているJリーグ入会申請の不適合条件をクリアすべく最善を尽くすこと。その全てがクリアした時、彼らの満願が成就するのです。
そしてそれを達成すれば関西からは2年連続でのJリーグ新クラブ参入となり、関西2府3県にJクラブが出来ることになります。残るは和歌山県です。その和歌山県からは今年もアルテリーヴォ和歌山がJFL昇格に挑みます。まずは来週、同じ滋賀県からJFL昇格を賭けた厳しい戦いが始まります。レイラック滋賀が作ったいい流れをそのまま継続して、和歌山にもいい結果をもたらしてくれることを願っています。
試合後、イベントでファンやサポーター、子供達と笑顔で接しているレイラック滋賀の選手たちを見て、ちょっとだけ救われた面持ちになったことを最後に付け足しておきます…
追記
クラブチームサッカー大会と全国専門学校サッカー大会との間の10/1、AGFフィールドで東京武蔵野ユナイテッドvsFC TIAMO枚方との試合を見て来ました。試合後、関西リーグ昇格当初からTIAMOのサポーターをやっている知人と軽く話をする機会がありました。この日も試合前に挨拶に行くと「応援よろしくね〜。あっ、そっか、武蔵野さんだよね」と明るく返してくれました。そんな彼が試合後に開口一番「みんな、サッカーを楽しくやってないんですよね。練習もぜんぜん楽しそうじゃなくて…」「チームもこのリーグじゃ不釣り合いだ」「このままこのリーグにいて恥を晒すのだったら、関西リーグに戻ってやり直した方がいいと思う」と愚痴を漏らしていました。苦しい時でもポジティブなことを発していた彼から、そういう言葉を聞いたのは意外でしたし、そうとう苦しんでることは十分伝わりました。
そうです、僕たちも2年前はそんなネガティブな状態でしたね。2年前の6月、まだコロナ禍真っ只中だったにも関わらず、西が丘の試合後に何人かで赤羽で飲んだ時のこと。みんなから発された言葉は「俺たち、関東落ちんのかな?」「関東落ちたら、一番遠いアウェイって栃木だよな」「あ〜、もっと遠くに行きたいよな〜」と冗談ではなく真顔で話し合ってました。幸い、夏以降に挽回して残留できましたが、おそらく今の彼はこの時の僕たちに似た心境なんだと思います。
一度地域リーグに落ちてやり直したらいい。口で言うのは実に簡単ですが、実際はとても厳しいです。JFLから降格したFC刈谷が再びJFLに戻って来たのは降格から12年経った2020年の地域CL。今年祭昇格したブリオベッカ浦安でも6年掛かりました。ホンダロックのようにたった1年で戻って来たのは、本当に奇跡の上のさらに奇跡的なことなのです。逆に地域リーグから昇格を目指すチームでも、アミティエ時代から毎年のように地域CLに出場していたおこしやす京都ACは今年、関西リーグDivision1で最下位となり、とうとうDivision2への降格が確定してしまいました。そういうチームを見ていると、そう軽々しく地域に落ちて立て直すなんていう気にはなれないです。だからなんとしてでもこの位置、JFLにしがみつき続ける必要があるのです。
お互いこれからもJFLに留まり続け、いつかTIAMO枚方がJリーグに参入するタイミングが来た、その時は笑顔でTIAMO枚方を送り出したい。そのためには、まずは武蔵野は今年是が非でも残留しなければいけない。そう強く思ったのでした。
サポーターの前では絶対弱音を吐かない彼が、私にだけそっと今の辛い心境を語ってくれて本当にありがとう。来年はなんとかしてうちの試合以外でも顔出すようにするので、その時はよろしくです!