誰でもできる「危ない会社の見分け方」 事例(5) ―FRich Quest投資詐欺事件―

1.事件の概要


 2023/2/8警視庁は投資コンサルタント会社「FRich Quest(フリッチクエスト)」(東京都新宿区)社長・森野広太容疑者(38)と早川直通容疑者(32)ら男女8人を詐欺容疑で逮捕した。
 逮捕容疑は、「月利4%の配当」「少なくとも出資金の7割が返金される」「絶対損はしない」などと説明して、実態のない海外の資産運用会社(インド洋の島国セーシェルにある合同会社)による架空の分散投資事業への出資を勧誘、出資金をだましとった疑い。
 2016~2022年に関東圏を中心として約3,300人から計約200億円の出資金を集めたとみられている。平均出資額は約700万円。
 コンサル料を除いた出資金の3割は為替運用し、残る7割は国債といった安全な金融商品に投資などすると説明していたが、委託先の会社登記は存在せず、実体はなかった。
 出資金の一部は、暗号資産や海外カジノ、外国為替証拠金取引(FX)への投資をしていたが、総出資額の1%程度の約2億円で、殆ど利益は出ていなかった。
 配当金は当初毎月26日に開かれる「おもてなし会」と呼ばれるイベントで手渡されていたが、自転車操業状態で2021/10ごろから支給が滞り、/12には完全にストップした。配当に回していたのは計約90億円とみられている。
出資金の多くは森野容疑者の遊興費、無人島やクルーズ船購入、出資者を信用させるために開催される「おもてなし会」に費やされた。

出資者を信用させた(だました)手口は次の通り。


・「おもてなし会」では、芸能人やオーケストラを招いて会社の順調ぶりを強調、森野容疑者の顔の広さや人脈をPRするなどして出資者を信用させていた。出演した芸能人はミラクルひかる、はなわ、十文字幻斎、島田秀平、堀江貴、など。
・森野容疑者はラジオ番組の出演や雑誌の掲載、NETの紹介記事などでPR活動を積極的に行い、出資者を信用させていた。
・英語の契約書でサインさせ、犯行発覚の時間稼ぎ、回避を行っていた。
・配当金は手渡しに限定し、犯行の隠蔽(証拠を残さない)を図っていた可能性がある。
・被害者は20代・30代が約6割を占めており、投資の知識が浅い年齢層を狙った。
・資金が足りない場合は銀行や消費者金融からの借金を斡旋し、「投資目的とは言わず生活資金や冠婚葬祭と言うように」などと指示していた。
・出資者との連絡に匿名性の高い通信アプリ「シグナル」を利用していた。

2.リスクの検証

(1)商業登記

 本サイトでは、商業登記によって、その企業の異常性(不可解な部分)を指摘することで、信用度、リスクを検証しているが、当社の商業登記には特に指摘するような異常性は認められなかった。

(2)手口

 当社の詐欺は正しく「ポンジスキーム」である。ポンジスキームはアメリカの天才詐欺師チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)の名に由来する古典的投資詐欺であり、「出資資金を運用し、その利益を出資者に配当、還元する」と語り出資者を募るものの、実際には資金運用を行わず、後から参加する出資者の出資金を、以前からの出資者に配当金として渡すことで、あたかも資金運用によって利益が生まれ、その利益を出資者に配当しているかのように装う手口である。
 投資詐欺は過去数多く発生しており、その手口はすでに広く知られているが、その手口と当社の手口に共通性を見出すことができれば、簡単に当社のリスクを判断できるはずである。

・代表者、実行者は高級車やブランド物などで身を固めている
>>さも成功者、金持ちであることをPRしているが、真実はわからない。
・スター性のある(目立つ)代表者、実行者がいる。
>>見栄えが良く、口がうまいと、それだけで信用してしまうバイアスを利用している。
・代表者、実行者は有名人、芸能人などの知り合い・友人が多く、交際範囲が広い。
>>交際範囲が広いといっても信頼・信用があるとは言えない。
・マスコミやネットでのPRをうまく利用している。
>>マスコミ登場やネットの掲載と信用度に関係はない。
・豪華パーティーや旅行で出席者を「感謝の持ち」「ただでは帰れない」の気持ちにさせる。
>>原野商法やマルチ商法、催眠商法などで使い古された古典的手口。
・知人の紹介や異性による勧誘。
>>アポイントメントセールやデート商法、キャッチセールでお馴染みのテクニック。
・元本保証、高利回りをうたう。
 >>投資に元本保証はありえず、「絶対損しない」だけで詐欺と判断できる。
 >>月4%配当は年48%となり、昨今の金融情勢ではありえない利率である。
・投資経験、知識の浅い人を狙う。
>>過去は高齢者が狙われたが、本件は若年者を狙う。ターゲットは違うが判断力に乏しいことが共通している。
・犯行発覚の時間稼ぎ、犯行の証拠を残さないようにする。
>>殆ど馴染みのない外国を使用、英語の契約書、配当金は現金の手渡し、匿名性の高い通信アプリの使用など。

 以上の通り、当社は投資詐欺の手口を正しく踏襲しており、危ない会社であることが明確にわかる筈である。

                               以上
注:本稿は2023/2作成したものです。

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