信用管理と与信管理の違いは?
「信用管理」と「与信管理」、実際の使用状況をみると、使用者によって明らかな違いがある場合と違いのない場合がある。またその違いを認識して使用している人と認識していない人がいる。ここで改まって両者の違いを考えてみたい。
先ず、「信用」と「与信」の違いを確認する。
「信用」とは、「一般的には信頼または信任を意味するが、経済上、信用を与える(与信、授信)とか信用を受ける(受信)、また信用を貸し付けるとか信用を創造するとかいわれる場合の信用とは、債権・債務関係のことを意味している」(注1)。
「与信」とは、「クレジットカードを発行する、資金を貸し付けるなどの信用を供与すること」(注2)。「信用を供与すること。授信」(注3)。「金融業界においては、金融機関や消費者金融会社の融資や融資枠、支払承諾(保証)等の供与や、クレジットカード会社の利用可能枠(ショッピング枠、キャッシング枠)の供与などをいいます」(注4)。「相手を信用して金銭やモノを貸与すること。例えば商品を先に渡して代金を後で回収することも与信のひとつといえ、販売先に対して代金を回収するまで信用を与えています」(注5)。
以上の通り、「信用」の概念が広く、「信用」を構成する一つに「与信」があることが明確である。経済的取引にあっては、「信用」には「信用を与える与信、授信」(債権者の立場)と、信用を受ける「受信」(債務者の立場)の意味がある。債権者と債務者の立場は全く異なるため、両用語の使用に於いては、その意味を明確にし、使い分ける必要がある。
しかし、その後に続く言葉、つまり「リスク」や「管理」などが付く事によって、「信用」と「与信」の使い方は更に混乱することになる。
「信用リスク」とは、「貸付先・投資先の財務状況の悪化などで、元利の回収遅滞、資産価値の減少などが生じて損失を被るリスク。貸し倒れリスク。クレジットリスク。デフォルトリスク」(注6)。という。これは与信先のリスクのみ、つまり「与信リスク」しか説明していない。「与信リスク」をググると、意外にも明確に定義しているサイトは見当たらず、「信用リスク」の説明を展開するなど、「信用リスク」と「与信リスク」を同義語の如く扱っている。「信用管理」も同様であり、「与信管理」の説明しかなされていない。
本来的に考えるなら、「信用リスク」には「与信リスク」と「受信リスク」があるべきである。「受信リスク」とは「信用を受けることのリスク」、つまり、「自社の信用が正しく評価されないことによって、不利益を被るリスク」と考えることができる。一般的に知られている「受信リスク」とは、メール等の受信におけるリスクであり、「受信リスク」は殆ど認識されていないのが実態である。
よって、「信用管理」には「与信管理」と「受信管理」があるべきである。「受信管理」とは「自社の信用度を管理、コントロールすること」である。例えば社債の発行や融資条件や取引上の決済条件、社員の採用など、自社の信用度は企業経営に於いて大きな影響を及ぼすため、「受信管理」の重要性が認識される。しかし、研究者の殆どは「与信管理」のみに注目し、「信用管理」と同義語の如く使用しているのが現実なのである。
注
1.日本大百科全書(ニッポニカ) 鈴木芳徳
2.デジタル大辞泉
3.大辞林 第三版
4.金融情報サイト「iFinance」
5.エム・アール・エフ
6.デジタル大辞泉