刃牙さんの幼年期がジルベールの数倍ひどかった 乙女の聖典~女子こそ読みたい刃牙シリーズ~その4
金の力、物流の力、そして皆の応援のおかげで、私もついに「刃牙」全巻を手に入れた。ありがとう刃牙さん。あと外伝『バキSAGA』も買ったが、わざわざプレゼントしてくれた人がいたため、家に2冊ある。ありがとう刃牙さん。これからも『バキSAGA』の献本は広く募集中だ。
(なぜか2冊あるSAGAと、ピクルと、おくすり)
『グラップラー刃牙』→『バキ』→『範馬刃牙』→『刃牙道』(そして10月4日売り『週刊少年チャンピオン』から始まる『バキ道』)という順番だぞ! 一緒に覚えような!
しかし全巻そろえたからと言って暴飲暴食はいけない。一日の用法容量を守りながら読まないと、おじや(※注1)の過剰摂取で死んでしまう……そんなことを考えながら、気づいたら、排尿する間も惜しんでけっこう読んでいた。私にちんちんが付いていたら、危うくペットボトラーデビューしていたところだ。
そういうわけで今回は、『グラップラー刃牙』20巻(幼年編終了)まで読んだという前提で皆に話をする。これまで筋トレも山ごもりもせず、喰いたいものも喰わず抱きたい女も抱かず、ボサーッと生きてきた「刃牙」初心者の私としては、20巻までの間にも様々な驚きがあった。
まず私の第一のサプライズポイントは、序盤の範馬勇次郎(はんま・ゆうじろう)が予想よりも普通の人だったということだ。
私の中で範馬勇次郎といえば、ネットに出回っている画像のせいで「顔の皺(筋肉)が半端ない」「人間ではない」「ラスボス感がすごい」というイメージがあった。これら自体は多分、間違った情報ではないと思う。この刷り込みが強すぎて、素顔が明らかになるのは『グラップラー刃牙』の最終局面あたりではないかと勝手に予想していた。
しかしこの範馬勇次郎、意外にも『グラップラー刃牙』5巻で、わりとカジュアルに顔を見せる(※注2)。『ドラゴンクエストⅢ』で例えれば、まだ船も手に入れてない頃に、ゾーマが向こうから来ちゃった感があり、初手から「なんか落ち着きがない人だな」という印象になった。
(登場直後、刃牙のパンチを、リーチの差で全く寄せ付けない範馬勇次郎)
しかもこの男、わりとイケメンなのだ。こんな感じの野性味のあるイケメンだったら、「HiGH&LOW」シリーズ(※注3)に普通に登場しそうだし、「闘いこそが至上のコミュニケーション……SEX以上のね……」(歌詞)(※注4)とか歌いながら、車に轢かれたり轢かれなかったりしそうだ。そんなんでいいのか勇次郎。もっとヤバい男ではなかったのか勇次郎。
範馬勇次郎らしい行動としては、ボクシングジムに乗り込み、腕に覚えのある者たちを手当たり次第に半殺しにするなどのアクションがあったが、地下闘技場はもともとこの手のやばい人のほうが多勢なので、これも「予想より普通だな」と思った。なんか闇堕ちしたころの琥珀さん(※注5)も、こんな感じのことをやってた(記憶の改ざん)。
その後、愚地独歩(おろち・どっぽ)との戦いで、劣勢になったのを刃牙さんに見られ、焦って本気を出した感じも、「なんか人間味あるな」「運動会で張り切るお父さんみたいだな」と、ほのぼのさせてもらった。この場面で独歩さんがしめやかに死んでいた気がするが、私もそれなりに長い人生で、死んだ人が生き返る格闘マンガを見慣れているので、どうということはなかった。
そんな、意外とカローラとかに乗ってそうな勇次郎と比べて、13歳の刃牙さんの状態がひどすぎる。これが第二の、そして最大のサプライズポイントだ。
さきほど範馬勇次郎を「予想より普通」と書いたが、子育てという局面に限ると、いつ親権を取り上げられてもおかしくないレベル。それは母親の朱沢江珠(あけざわ・えみ)も同様なのだが、勇次郎は地上最強生物だし、江珠は大金持ちの財界人なので、おそらく児相も警察も裁判所も手出しできず、子どもにとって最悪の事態になっている。
とにかくこの両親が刃牙さんの人権を一顧だにせず、「自分の快楽に役立てよう」という視点でしか見ていない。勇次郎は「刃牙を強い格闘家に育てて、戦って楽しみたい」というアレなやつだし、江珠は勇次郎に惚れすぎて理性を失っているので「勇次郎を喜ばせるために、刃牙を鍛えて強くしたい」と考えている。世間体とか気にしなくていい立場なのもあり、これらの動機を刃牙さんに隠そうともしていない。何よりも不幸なことに、刃牙さんはこんな両親を憎むことができず、江珠の愛情を強く欲しているのだ。
児相ーーーー早く来てくれーーーー!!
それでなんか知らんけど、刃牙さんは(強くなるために?)朱沢家を出て、無名街(※注6)にありそうな一軒家(刃牙死ねハウス)(※注7)に一人で住み、おそらく最低限の生活費だけをもらって自活しつつ、たまに中学校にも通ってる。そんな刃牙さんを鍛えるため、江珠は部下に命令してプロボクサーとかヤクザとか屈強なやつを探し、折に触れてルール無用の残虐ファイトをさせている。
忍者かよ。もちろんNARUTOじゃなく白戸三平的なやつだ。
時代ものや異世界ものならまだしも、90年代の日本が舞台のマンガで、13歳でこんな状況に置かれてる人、他にいる?
この連載の「その2」で、ちょっとWikipediaで調べた情報をもとに、刃牙さんの生い立ちがジルベール(『風と木の詩』)と完全に一致することに言及したが、実際はそれどころではなかった。刃牙さんはジルベールよりもはるかに体力と生活力があるが、その分、死の危険も大きい。ジルベールだったらワンパンで全身が粉砕骨折するような相手と、日常的に戦わなければいけない。
そうこうしているうちに、ユリー・チャコフスキーとか、山男の安藤さんとか、夜叉猿とか、「刃牙読者ならたいていは花山の夢女あるいは夢男になる」という噂の、待望の花山薫(15歳)が出てきて活躍していた。いずれも良いキャラなのだが、個人的には刃牙さんの環境がすさみすぎていてそれどころではなかった。
花山さん、悪いが、私の心と体の受け入れ態勢ができるまで待っていてくれ。刃牙さんが病院を訪ねるところや、「刃牙死ねハウス」で二人でワイルドターキーを飲んで一夜を明かしたところはむちゃくちゃ良かったし(ただ冷静に考えると13歳と15歳)、刃牙さんの初めての男は、花山さんで確定だと思いました。
こうして刃牙さんの強さを求める飽くなき試練が、拳を通じた絆にもつながっていく感じ、あっ、これやっぱり「HiGH&LOW」なんじゃない? BのLじゃない? と思いはじめた私ですが、ここでちょっと時間軸を戻しますが、自衛隊精鋭部隊編。これがけっこうアカンやつだった。
★お知らせッッ★
このシリーズを加筆修正し、『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考え続けた乙女の記録ッッ』として、河出書房新社から2019年11月に書籍が発売されました! 電子書籍もあるよ! もちろん秋田書店さんの許可をバッチリと取っております!!
書籍に収録されている範囲は、その1〜その16まで(『グラップラー刃牙』『バキ』までの感想全部)です! ぜひ一家に一冊、いや百冊!!
さらにこの奇書を原案として、松本穂香さん主演の実写ドラマ『「グラップラー刃牙」はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』が制作されました!!(WOWOWさんが制作幹事) 2020年8月20日〜10月1日まで、全7回放映! 現在、いろんなサブスクで配信中ッッ! お一人で、またご家族で、そしてご友人とぜひお楽しみください!!
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