12人の海王が大渋滞！　男と男が化学反応を起こしスパーク　乙女の聖典～女子こそ読みたい「刃牙」シリーズ～その15

2019年2月23日 11:56

　先日、私と同時期に「刃牙」にハマった２人のグラップラーと集い、３人で、珍しい肉を食べさせてくれるお店に行った。カウンター席で「刃牙」の話で盛り上がっていたら、店長さんが気さくに話しかけてきた。なんと彼もまた昔からの濃厚な「刃牙」ファンで、しかも極真空手に15年通った人だった。シンクロニシティ。スタンド使いと同じで、「刃牙」ファンは「刃牙」ファンを引きよせる。
　「刃牙」に対する感謝も新たに、今日は『バキ』通常版18～27巻を熱論（かた）る。

　『バキ』通常版18巻で、瀕死のドイルがやっと確保されて、私も安らかな気持ちになり、卒業していく死刑囚５人の成績表を作ったりしてくつろいでいた。しかし、そのほんの数ページ後に、大変な光景が繰り広げられていた。

　刃牙さんがガリガリに痩せている。

（病院だよゥッッ）

　いや、私の視力が「刃牙」専用に補正されてしまったので、ガリガリに見えているのだが、少女マンガならば、まだ部分的に筋肉質すぎるぐらいだ。真面目な話、いつもの刃牙さんの筋肉のつきかたのほうが病院沙汰だったと思う。私の人体認識も、「刃牙」の読みすぎでかなり危険な領域に入ってきた。

　そのまま病院送りにされた刃牙さんだが、ここで愚地克巳が、突然の私服で読者を殺しに来る。私も完全に油断していたので、受け身をとりそこねた。

　ツナギ……かな？　それとも黒っぽい色の上下……？　「その13」で取りあげたゴミ袋服よりはかなりマシだが、なぜこんなにも微妙な感じを出せるのか。空手の達人のくせに、やけに姿勢が悪くないか。どうして進化途上の人類みたいな姿勢になっているのか。新手の三戦（サンチン）なのか。
　この場に主だったメンツが揃っているのも本当にいたたまれない。烈さんも、克巳の関係者だと思われたくないのか、かなり離れた場所にいる。加藤と末堂さん（※注１）がまだ入院中で、克巳の私服を指導する者が神心会にいないということか。もはや刃牙さんの病状よりも、克巳の私服のほうが心配になってくる。

　なんだかんだあって、刃牙さんは懐かしの安藤さんの山小屋に向かい、梢江さんとロハス生活を送っていたが、烈さんに腹パンを入れられ、大陸に連行された。このあたりの刃牙さんの無気力で後手後手の行動には、病気のせいだとわかっていても、私はやや腹パンを入れたくなっていたし、梢江さんはもっとそうだろうと思う。烈さんありがとう。

　相前後して、アライと、アライJr.という新キャラがひっそり登場していた。別にひっそりではないのだろうが、個人的に彼らに何ひとつ興味が湧かなかったので、このあたりの記憶がない。若い範馬勇次郎がなかなかの美形で、勇次郎のくせにあたかも人権派の活動家のような発言をしていたことは覚えている。もっと身近な女性や子どもの人権とかも考えろ。あと「アライ・猪狩状態」は、性的な何かを誘っているようにしか見えない。そりゃ、この姿勢で誘ったのに、何もせず部屋を出て行かれたら勇次郎も怒る。

（扉絵の勇次郎がやけにセクシー）

　そしてはじまる中国大擂台賽（らいたいさい）編。正直なところ、初発の段階で「またトーナメントかよ」「海王、覚えられねぇよ」と思った。
　最大トーナメントよりも人数が少ないとはいえ、第一印象で「知らん人」「個性ゼロ」率が半端ない。現場が盛り上がっているのに自分は冷え冷えになる感じがすごい。私はリアルの格闘技選手を知らないので、最大トーナメントの全選手入場の時も元ネタがわからず、けっこうな冷えを感じていたが、この海王入場でふたたび感じた寒気は、私が生来の冷え性だからという理由以上のものがあると思う。客の多くがなぜか昔の中国風の服を着ているのも、悪い意味で『中華一番！』か、という不安を煽ってくる。

　しかしこうして不平不満を言っているうちに、知らん人と知らん人の戦いが始まってしまう。最大トーナメントの時みたいに、最終巻の刃牙さんわっしょいロードにまで「誰？」という選手が出てきて、独特の疎外感を覚える破目になる。
　そこで私は、入場時点であえて、知らん人の中から推しの海王を決め、応援していくことにした。

★お知らせッッ★
　このシリーズを加筆修正し、『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考え続けた乙女の記録ッッ』として、河出書房新社から2019年11月に書籍が発売されました！　電子書籍もあるよ！　もちろん秋田書店さんの許可をバッチリと取っております！！
書籍に収録されている範囲は、その1〜その16まで（『グラップラー刃牙』『バキ』までの感想全部）です！　ぜひ一家に一冊、いや百冊！！　

　さらにこの奇書を原案として、松本穂香さん主演の実写ドラマ『「グラップラー刃牙」はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』が制作されました！！（WOWOWさんが制作幹事）　2020年8月20日〜10月1日まで、全7回放映！　現在、いろんなサブスクで配信中ッッ！　お一人で、またご家族で、そしてご友人とぜひお楽しみください！！