公民館をリユース
「おせっかいワーカーになろう⑰」
福岡市の公民館で子ども食堂を始めて、驚いたことがいくつかあります。1つ目はどれも古いですが、道具が揃っていることです。1升炊き以上のガス釜が3つあって、電子レンジ、冷蔵庫、ミキサーからすり鉢、秤まで調理用具は何でもあります。100人以上が使える皿、お椀、スプーン等の食器類も豊富です。広い調理台に、まな板も包丁もボールもたくさんあって、子どもも一緒に調理できるのです。これだけの調理設備が整っていますが、スケジュール表を見ると、あまり使われていないようです。
2つ目は食材の寄贈です。メニューは基本的に保存しやすい材料が多いカレーです。始めるとすぐに食材がかなりの量で集まってきました。特にお米は、購入したのは最初だけで、後は地域の方や農家が届けてくださってずっと賄えています。公民館で実施することで、地域の方々から信頼され応援されやすいのだと感じました。
小さな教室くらいのスペースがあるので、一緒にレクや食事ができて、和室や図書室、講堂もあって、改めて子どもと活動するのに最良な空間だと思いました。地域によって成り立ちや利用方法は様々だと思いますが、戦後社会教育法で位置づけられた公民館は、どちらかというと文化や教育の普及を図る施設として使われてきました。しかし「生活文化の振興や社会福祉の増進に寄与すること」も目的に掲げられているのです。現在どこの公民館も高齢者を中心にした趣味のサークルやヨガや音楽、絵画などの教室が殆どで、辛うじて子ども向けの珠算や書道があるくらいです。これは本当に宝の持ち腐れだと思います。子どもや家庭を応援する福祉的な、あるいは市民的な活動でもっと活用するべきだと感じました。
何でも新しく作るのは大変です。資金も場所も人もアイディアも時間もたくさん必要です。しかし公民館は、すでにあるのです。以前は盆踊りだ運動会だ餅つきだ新年会だと、地域の人が集って飲食を共にする機会も多く、たくさん利用されていたのが徐々に減って、調理用具も設備も眠っているのです。
これは目から鱗です。ものの捉え方を変えるリフレーミングが必要だと思いました。公民館を今まで以上に使い倒すリユースの視点が必要なのです。そう考えると、もっと他にも眠っている公共施設、公共財があるように思えてきました。
【労協新聞2017年「おせっかいワーカーになろう⑰」】